ゲームの販売と出荷
同じような意味の言葉に思えても、実は全然違う数字のことをさしてたりするんです。
今回は販売と出荷という言葉の定義をはじめとして、ゲームソフトの売り上げニュースを見るときに知っておきたい点をいくつか挙げて説明して行きたいと思います。これを読めば売り上げニュースがぐっと分かりやすくなるはずです。
ゲームの「販売」と「出荷」の違いとは?
販売というのはゲームソフトがお店で売れた数です。つまり実際にゲームユーザーが手にした数ですね。ただし中古の数は入りません。新品をユーザーが買った数がカウントされます。これに対して出荷というのは、ソフトメーカーから、問屋さんに卸した数です。つまり、ソフトメーカーが問屋さんに売った数。実際にユーザーが買うかどうかは関係ありません。従って例えば、ソフトメーカーが100万本の出荷を宣言していても、実際に売れた本数は50万本しかない、なんてこともあるわけです。ここで「消化率」という言葉が出てきます。この消化率というのは、出荷したソフトの本数に対して、実際にユーザーが買った数の割合を言います。前述の例だと、消化率50%となるわけです。
この「販売」「出荷」「消化率」の関係が分かると、同じソフトの売り上げを見ても色々なことがわかります。
出荷は多いけど実は売れてないこともある?
<出荷、販売、消化率の関係図>出荷は左のグラフの方が多いが、販売は右グラフの方が多い、こうなることもあるわけです |
もしもあなたがこの2つのソフトについて、出荷数のニュースを目にしたとき、どう感じるでしょうか。人気シリーズはやはり数字も大きいな、新規作も頑張っているが人気シリーズには及ばないな、そう思うかもしれませんね。しかしこの場合、ユーザーに販売している数は、出荷の少ない新規作の方が多いのです。実際こういう逆転もあながちありえない話ではなかったりします。
出荷、販売、消化率から分かること
出荷、販売、消化率、この言葉が分かるだけでも、今までと同じニュースから、色々なことを読み解くことが出来ます。例えば、消化率はソフトの店頭価格に大きな影響を与えます。先ほどの例でいくなら、20万本を出荷した人気シリーズは実際には5万本しかユーザーの手に渡っていなく、市場に大量に余っているので大抵の場合は値崩れが起きます。何しろ入荷してしまったお店は多少値段を下げてでも売りさばかなければまるまる損してしまいますから。逆に10万本しか出荷していない新規作は、実際には8万本と人気シリーズを越える売り上げを残していて、値崩れもあまり起きないでしょうし、今後の再出荷も考えられるというわけです。
また、次回作の動向についても予想することができます。
メーカーからすると、販売が5万本でも出荷が20万本であれば、その時点で売り上げが立ちます。しかしゲームを販売するお店からすると、消化率25%ということは例えば4本仕入れたとするとその内1本だけが売れ、残り3本は不良在庫になってしまうということです。これでは小売店は困ってしまいますね? そうすると今度は今後このシリーズの入荷を減らすお店が出てきたりするわけです。逆に出荷のほとんどを消化できた新規作は、次回作が出るなら少し入荷を増やされる可能性が高くなってきますね。こんなことも予想できるわけです。
出荷と販売では全然意味合いが違ってくるのがお分かりいただけたでしょうか? それぞれの意味を把握した上でニュースを見ると、より、そのニュースが持つ意味合いが深く分かりますので、是非覚えておいてくださいね。
出荷と販売というのは意味が違うので数字が違うのは当然、というのはおわかりいただけたと思います。
生産出荷と出荷は意味が違う
それぞれの言葉がどの時点の数をカウントするか確認してみましょう |
出荷と生産出荷ではカウントしているタイミングが違います。出荷というのは先ほど説明した通りメーカーが問屋さんに卸した数を言いますが、生産出荷というのはその一歩手前で、生産拠点から出荷した数を数えます。もう少し分かりやすく言うと工場から倉庫などに移動した時点の数を数えるということですね。つまり工場で出来上がって出てきた数ということです。
同じハードメーカーでも任天堂は出荷数で発表することが多く、SCEは生産出荷で発表することが多いので注意が必要です。また、それらと販売数とも違うということもお忘れなく。
同じ販売数でも数字が違う?
最後に、余談ですが、同じソフトの「販売数」として発表されたものでも違う数字が出てくることがある、というお話です。一般的に出荷数というのはメーカーが発表し、確実な数字がでます。なにしろ自分たちが売った数なのですから、間違いの無い数字を出すことができます。しかし、販売ということになると、ちょっと難しくなってきます。1店1店のお店がお客さんに販売した数を集計しなければなりません。そこには大手家電量販店もあれば、個人でやっているような小売店もあります。現実的にその全てのお店の販売本数を数えるというのはちょっと無理があります。ですから、実は正確に数字を把握するのは難しい話なのです。
では、販売数というのはどのように出されているのでしょうか? 販売数を出しているマーケティングリサーチの会社であったり、ゲーム雑誌の出版社というのは、「うちのお店からどのソフトがいくつ売れました」という報告をしてくれる協力店を持っていて、まずはそこから集計します。その次に、協力店が日本全体における市場においてどのくらいの割合を占めているかを想定し、全体の実売数を逆算していきます。
よって、集計機関によって、集計するお店と計算方法が違うため、いつも若干の数字のばらつきが出ることになるんですね。ほとんどの場合は、無視していい程度の違いしかありません。しかし、毎週出てくる各集計機関の数字を分析していくと、ここは「任天堂のソフトがいつも多めに出る」、だとか「コアゲーマー向けのソフトはここの集計機関だと少ない」なんていうのもなんとなく見えてきたりします。
似たような数字に思えても、実は全然違うことがあるって、分かっていただけましたでしょうかか?同じソフトの売り上げニュースでも各企業や集計機関によって異なるので、注意してみてください。言葉の意味を理解して、正しくニュースを読み解くと、意外なことが分かったりするかもしれませんよ。ぜひ、覚えておいてくださいね。
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