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人材派遣業者が消費税を逃れたくなったワケ

このたび国税庁がまとめた前年度の脱税事件について報道がなされました。それによると、人材派遣業者による消費税の告発件数が多かったとのこと。なぜ人材派遣業者はそんなにも消費税から逃れたくなるのでしょうか?

執筆者:森 康博

消費税の告発件数倍増!その多くは人材派遣業

査察が来た!
通常の税務調査と違い、査察はもっと大掛かりで大変なもの。
前年度の査察でなぜ「人材派遣業」が伸びてしまったのか。その理由を探っていきましょう。

このたび国税庁が「平成18年度における査察の概要」を発表しました。その内訳を見ると、消費税の告発件数が10件から23件と2倍以上増加しています。
また、告発の多かった業種の件数を見ると常連だった業種を抜いていきなりトップに出てきた業種が「人材派遣業」。
「人材派遣業」は消費税の脱税の中心であったこともその概要に書いてあります。

なぜ数ある業種の中で「人材派遣業」が消費税脱税の中心となってしまったのでしょうか?
もちろん、告発された企業それぞれ個々に原因はあると思いますが、共通の原因として考えられるものもあります。
それは「人材派遣業という業種の持つ特殊性」です。一体、どのような特殊性があるのでしょうか?

今回は「消費税の仕組み」についてご紹介して行きつつ、「なぜ人材派遣業者は消費税が苦手なのか」という疑問を解決して行くことにしましょう。
また、これによって「人材派遣業はなぜ、企業から多くの需要が出たのか」その一因にもたどり着くことが出来るかと思います。

消費税の仕組みを理解しよう


■消費税の計算方法

消費税の納税義務がある会社や個人事業主の方々は、一体どのように消費税を計算し、納税しているのでしょうか?実は、これはいたってシンプルな仕組みとなっています。算式にすると、

「納付する消費税額」
=「収入に係る消費税額」-「経費にかかる消費税額」

つまり、売上げが525万円(うち消費税25万円)、仕入れが315万円(うち消費税15万円)の会社の場合、納付するべき消費税額は25万円-15万円で差引き10万円となります。

■消費税納税の仕組み
少しのお金でも……
「消費税」は「納税する義務がある人」と「実際に納税する人」が異なる税金です。
このような税金を「間接税」といいます。


消費税は一体誰が負担するのでしょうか?
それはその名からも想像がつくとおり「消費者」が負担すべきものです。でも、私たちが買い物をする度に税務署にいくことはありませんよね。
私たちがコンビニやスーパーで買い物をしたときに、商品の代金とともに消費税をこれらのお店に預け、お店が私たちに代わって税務署に消費税を納めてくれる、そのような仕組みになっています。

私が仮に以下の弁当をスーパーで買った場合、私の負担した消費税の流れはどうなるのでしょうか?
  1. スーパーが私に弁当を私に630円(うち消費税30円)で販売した。
  2. その弁当は、弁当業者がスーパーに420円(うち消費税20円)で販売したものでした。
この場合、消費者である私の買った弁当分の消費税30円が税務署に行っていれば良いということはお分かりのことと思います。
商店の納めるべき消費税は「収入に係る消費税額-経費に係る消費税額」ですから、計算してみると……

●スーパーの納める消費税

スーパーの売上は私からの630円、仕入は弁当業者からの420円ですから、今回スーパーが税務署に支払うべき消費税は30円-20円で、差引き10円となります。あらら、これではまだ30円に足りませんね。

●弁当業者の納める消費税

スーパーの仕入先である、弁当業者にまで取引をさかのぼってみましょう。
弁当屋はスーパーに対する売上げ420円があり、仕入れはありません。
今回、弁当屋が税務署に支払うべき消費税は20円-0円で、差引き20円となります。

スーパーの10円と弁当業者の20円を合計するとピタリ30円!


これで私が最終的に消費した弁当にかかる消費税30円は、2つのお店を通じて間接的にですが、税務署に納税されたことが確認できました。

実際の消費税の計算方法等は色々ありますが、基本的なモデルとしてはこの程度が理解できれば、充分大丈夫です!

次ページで「人材派遣業者が消費税を逃れたくなってしまった」その理由に迫ります!
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