「いいマンション」とはどんなもの?認定制度を知って管理を見直すべき理由とは

自分が所有する、または購入したいマンションは、資産価値が下がらず、毎日安心して暮らせる「いいマンション」であってほしいもの。そのために必要な条件や対策などを、マンション管理士である武居さんに聞きました。

提供:住宅金融支援機構

お話をうかがった方

武居 知行

株式会社メルすみごこち事務所 マンション管理士:武居 知行

マンション管理士、宅地建物取引主任者、ファイナンシャルプランナー。 マンションの建築企画から管理、不動産の流動化まで豊富な経験と実績を持つ。左脳的・理系的なアプローチでマンション管理組合の問題解決を図るコンサルタント。

「いいマンション」の判断基準は幅広い

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マンションに居住する、購入するという観点で見たとき、一般的に「いいマンション」とはどんなところがポイントになるでしょうか。

武居さん(以下敬称略)「よく注目されているのは、まず立地と価格、居住面積、築年数でしょう。他には、外観のデザインの美しさやエントランスの豪華さといった見た目の部分と、共用施設の豊富さなどに魅力を感じる方が多い印象です」

どんな条件で「いいマンション」と判断するかは人それぞれ。マンションは管理を買えという言葉もありますが、管理状況を見る方は少ないでしょうか。

武居「管理は非常に重要です。しかしマンションを購入し区分所有者になってからは、そのマンションの管理に慣れて、他の物件と比較する機会はなくなってしまいます。正しく管理状況を判断するには、ある程度の知識も必要になります。

マンションの管理を知るのは難しいものですが、わかりやすい例としてゴミ置き場が挙げられます。管理会社による清掃が行き届いているかだけでなく、ゴミの捨て方や粗大ゴミの集積の仕方などで、居住者の意識の高さもチェックできます」

国の基準でマンション管理をわかりやすく

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マンションの管理状況を目に見える形で知るために、参考にしたいのが2022年にスタートした『管理計画認定制度』。長期修繕計画や管理組合の運営などの項目で、国の基準を満たしていることを地方公共団体が認定するものです。

武居「管理計画認定制度は国の基準が非常に細かく、自治体ごとの独自基準が追加されているケースもあり、マンションによっては条件をクリアして認定を取得するハードルが高い場合もあります。

そのため、高経年マンションの購入を検討しているときや、実際に居住しているのなら特に参考になるでしょう。しっかりと修繕計画が立てられ、適正に修繕積立金が確保できているなど、現在の基準に合っているという目安になるからです」

安心して住める「いいマンション」のひとつの基準となるこの認定は、新築マンションでも『予備認定』という形で取得することができます。

武居「予備認定は、すでに新築マンションのスタンダードになりつつあります。おおむね管理計画認定と同じ内容なので、予備認定を取得できていれば、建築後に管理計画認定も受けやすくなっています。逆に予備認定が取得できない場合は、売りやすさを重視して修繕積立金を低く想定しているなどの問題が隠れていることもあり、注意が必要です」

『管理計画認定制度』を取得するメリットは?

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管理計画認定制度を取得することで、そのマンションに住む人には以下のようなメリットがあると考えられますが、いかがでしょうか。

【区分所有者のメリット】
  • 管理組合が健全に機能しているか分かる。
  • 適切な管理で、暮らしやすい環境が保たれる。
  • 正しい時期に適切な修繕が行われ、マンションの長寿命化につながる。
  • マンションの資産価値が守られやすく、売却時も有利になる。
  • 修繕積立金や管理費の変更など、住民同士の合意が得やすくなる。
  • 条件によって固定資産税が減税される可能性がある。 など

武居「たくさんのメリットが挙げられますが、目には見えにくいマンションの管理全般について、客観的に把握できることがポイントとなるでしょう。一定基準を満たす指標が生まれるため、何か問題点があった場合も改善しやすくなります。管理について興味がない、知識がないなどの理由で、管理は管理組合にお任せ……という区分所有者が多いのが現状です。

認定制度は、あくまでも行政から見た“いいマンション”という基準です。一番大切なのは、区分所有者が基準を知って、管理に対する興味を持ち、意識を変えること。認定が取得できるかどうかとは別に、これを上手に利用して積極的に管理に関わることこそが重要なのです」

安全な金融商品を、さらに有利に利用できる

管理計画認定制度を取得すると、金銭的なメリットも生まれます。特に注目されているのは、住宅金融支援機構の【マンションすまい・る債】利率の上乗せ。これは、修繕積立金の保管・運用に利用できる利付10年債券です。

武居「大規模修繕に向けて、修繕積立金を計画的に積み立てる、という目的が明確な債券です。国の認可を受けている金融商品で、資本金の全額を政府が出資する住宅金融支援機構の総資産から優先的に弁済を受けることができるため、大切な元本を守りながら、安定して利息が受け取れます。市場金利の変動に合わせて毎年利率が見直されますが、購入時に10年間の利率は確定します。手数料無料で途中換金が可能なのも安心ですし、銀行の定期預金より利率がよく、銀行の倒産リスクも回避できます」

2025年の応募分では、通常のマンションすまい・る債の10年満期時年平均利率が0.525%(税引前)のところ、認定マンションでは0.575%(税引前)に上乗せされます。

年々、応募する管理組合は増加しており、管理計画認定制度を取得したマンションも大幅に増えています。募集期間は2025年4月21日~10月10日となっているので、管理計画認定制度のご検討とあわせて、早めに申請の準備をしておくのがお勧めです。

【マンションすまい・る債】の詳細はこちら

また、もうひとつ見逃せないのが、住宅金融支援機構の『マンション共用部分リフォーム融資』です。共用部分のリフォームをする際に利用できるローンで、管理計画認定制度を取得したマンションは、融資金利の引き下げを受けることができます。

武居「マンションは新築または大規模修繕工事の後、築17年を超えたあたりから急速に劣化がすすみます。さらに築25年を超えるころには比較的費用のかかる、2回目の大規模修繕工事、エレベーターのリニューアル、駐車場機器の入れ替えなどを連続して実施しなければならなくなります。お金がないからと修繕を先送りしても、傷みが進んで余計に費用がかかることも多いものです。

工事の資材や人件費は年を追うごとに高騰しており、来年になればさらに上がっているでしょう。低金利の今は費用のメリハリをしっかりとつけて、安全なローンであれば借りてでも修繕を検討すべきタイミングです」

積極的に管理に関わることで「いいマンション」に

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管理計画認定制度で管理状況を可視化し、「ここを見ればいい」というチェック項目がわかったら、次に何をするといいのでしょうか。

武居「ぜひ、積極的に管理組合の役員を体験してほしいですね。外から見ているだけではわからない、マンションの状況が明確になります。しっかり知って見直すことが自分と家族の暮らしを守り、大切な資産価値を保つことにつながります」

これまではつい他人任せにしていたとしても、管理の知識を得ることで関心をもち、自分事と捉えることができそうです。

武居「現在、認定基準の中でクリアできずに弱点となっている項目がわかれば、対策も見つけやすいでしょう。全国の多くのマンションが認定を取得したり、申請に向けて認定基準に近づこうと対策を進めているのが現状です。

この時代の流れに乗り遅れることなく、区分所有者全員でぜひマンションの管理に向き合ってください。それが、結果的に“いいマンション”に結びつくのだと思います」