老後資金を残しながら、リフォームや住替えなどで快適な住まいを得る方法

高齢化が進む今、定年退職後の期間は長くなっています。そこで、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんに、老後のお金で考えておきたいことや、老後資金を残しつつ住まいを整える選択肢などを教えていただきました。

提供:住宅金融支援機構

お話をうかがった方

深田 晶恵(ふかた あきえ)

ファイナンシャルプランナー:深田 晶恵(ふかた あきえ)

外資系電機メーカーにて8年間勤務後、1996年にファイナンシャルプランナーに転身。1998年にFPとして独り立ちする。その後、同じオフィスの仲間と特定の金融商品、保険商品の販売を行わない独立系FP会社「生活設計塾クルー」を立ち上げ、個人向けコンサルティングを行ういっぽう、セミナーやメディアを通じてマネー情報を発信している。「すぐに実行できるアドバイスを心がける」のがモットー。

「老後のお金」について考えておきたいこと

「老後のお金」について考えておきたいこと

定年退職が近づく60歳頃になると、老後の暮らしについて考え始める方が増えていきます。特に、収入の減少や医療・介護の支出、退職金の運用など、お金にまつわる不安や疑問を感じる方は多いようです。

深田 晶恵さん(以下敬称略)「私が受けているマネー相談にはさまざまな年齢の方が来られますが、60歳前後の方はとても多いです。

定年がある会社員や公務員の方にお話しているのは、60歳以降に『収入ダウンの崖』が3回あることです。1回目は60歳で、定年後に同じ会社に再雇用されて働いたとしても収入が下がるケースが多いためです。2回目は65歳で、公的年金が収入の柱となるからです。3回目は配偶者が亡くなったときで、世帯の年金収入が2人分から1人分になるためです。

一般的な老後のマネープランは、収入が安定している60歳までに老後資金を貯め、65歳までは下がった収入の範囲内で暮らす生活を心がけ、65歳以降は収支の赤字分を老後資金から取り崩すことになります。

貯蓄が少なかったり取り崩す額が多かったりすると、老後資金が不足するのでは……と不安になりますよね。最近NISAが新しい制度になり、老後資金を増やそうと資産運用に関心を寄せる方もいますが、それよりも、まずは自分の収入・支出を把握してください。さらに、どの程度支出を削れば赤字を抑えられるかを考えておけば、漠然とした不安は解消できるでしょう」

60代は老後の住まいを整える時期

60代は老後の住まいを整える時期

定年退職後は家にいる時間が長くなることから、快適に生活するためにリフォームや住替えなどを検討する方は多いようです。

深田「老後の住まいについては、こどもが独立し、仕事も落ち着いてくる60歳前後から考え始め、65歳を過ぎた頃にプランを実行される方が多いですね。

具体的には、一戸建てに住んでいる方は家の傷みや寒さ、暑さが気になり、リフォームを検討されます。また、何かと便利な駅近のマンションに住みたい、子世帯の近くに住んで子育てを手伝いしたい、親の介護のために近くで暮らしたいなどの理由で住替えを考える方もいます。

実際、老後の住まいの資金に関するご相談は年々増えています。みなさんが悩まれるのは、コツコツ貯めてきた老後資金の中から、どのくらい住まいの資金に使っていいのかという点です。セカンドライフにどの程度お金がかかるのか、残すべきなのかをアドバイスして欲しいとおっしゃいます」

希望するリフォームや住替えを老後資金の範囲内で実現できればよいのですが、全国的に住宅価格やリフォーム費用が高騰していることもあり、難しいケースもあるようです。

深田「そのような場合は、老後資金をある程度残しつつ、リフォームや住替えなどの費用を確保する方法のひとつとして『リバースモーゲージ』をご紹介することもあります。リバースモーゲージとは、自宅の家や土地を担保に金融機関からお金を借りる融資制度のことです。契約者は利息だけ払い、元金は契約者の死亡後に相続人が一括で返済するか、自宅の売却などで返済する仕組みです。

リバースモーゲージはいくつか種類がありますが、住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供する【リ・バース60】の利用をおすすめします」

60歳からの住宅ローン【リ・バース60】とは

【リ・バース60】

公的金融機関である住宅金融支援機構(旧:住宅金融公庫)が、住宅融資保険という制度を通じて金融機関と提携。その金融機関が提供している、満60歳以上の方が対象のリバースモーゲージ型住宅ローン※1【リ・バース60】です。都市圏はもちろん全国を対象としており、融資限度額は(1)8,000万円(2)所要資金以内(3)担保評価額の50%または60%※2のうちの最も低い金額となります。

※1:生活資金および投資用物件の取得にはご利用いただけません。
※2:契約者の年齢が満50歳以上満60歳未満の場合は「担保評価額の30%」となります。担保とする住宅(セカンドハウスを含みます)が長期優良住宅の場合で、契約者の年齢が満60歳以上のときは「担保評価額の55%または65%」となります。

返済方法(イメージ)

(注)変動金利の場合は、金利が見直されると毎月の返済額または支払額が変わります。

【リ・バース60】も毎月支払は利息のみなので、元金と利息を毎月返済する住宅ローンと比べると、月々の支払い負担は少なくなります。

深田「住宅ローンは毎月十数万円返済するケースが多いのですが、【リ・バース60】は利息のみの支払いなので数万円程度で済みます。収入が少なく支出を抑えたい年金生活者にとって、【リ・バース60】はとてもメリットが大きい商品だと思います。

ただ、【リ・バース60】を変動金利型で利用する場合、金利が上がると毎月支払額もアップします。金利が上がっても支払いに困らないように、借入額はできるだけ抑えるのがよいでしょう。取扱金融機関は限られますが、固定金利期間選択型という商品もあります」

元金の返済方法は希望に合わせて選択できる

【リ・バース60】の元金は、生存中に繰り上げ返済することで減らすことが可能ですが、契約者が亡くなられた後に残金を一括で返済することになります。その返済方法は、次の2つより選択できます。

  • 方法1:相続人が一括返済する
    相続人が物件を引き継ぎ、相続人の預貯金などで一括返済するか、ローンを組んで返済する。元金の返済後には担保物件を引き継ぐことができる。

  • 方法2:担保物件の売却代金で返済する
    売却方法は、相続人が自分で売却するか、金融機関などが競売手続きをとる。売却代金での返済後に債務が残った場合、不足分の取扱いはノンリコース型かリコース型かによって異なる(下図参照)。

ノンリコース型とリコース型が選べる

※1:2023年度のお申込み件数に占める割合です。
※2:ノンリコース型の場合、返済が不要となる残債務分については、債務免除益とみなされ、一時所得が発生し、所得税等が課税される可能性があります。詳しくは、税務署や税理士にご相談ください。

深田「家や土地の相続に関わりますし、契約者の死亡後にいくつかの手続きが必要になるため、【リ・バース60】の利用を検討するなら相続人としっかりと話し合っておきましょう

相続人が家や土地を引き継ぐ予定がないなら、担保物件の売却代金で返済する方法で『ノンリコース型』を選択されるとよいかもしれません。というのは、物件の売却は立地や広さなどの条件が揃っていないと結構大変ですし、売却に伴う費用もそれなりにかかるからです。

また、物件を相続する人がいない方にも『ノンリコース型』をおすすめします。契約者の死亡後は金融機関などが担保物件の売却手続きを行ってくれるため、煩わしさを感じることなく、最期まで快適な住まいで暮らし続けられるでしょう」

【リ・バース60】について詳しく知りたい >>

【リ・バース60】の利用相談は取扱金融機関で

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【リ・バース60】は、手元資金を残しながら老後の住まいを整える方法の一つですが、自然災害で家を失った方が住まいを復興する手段としても利用できます。

深田「九州地方の豪雨災害で自宅が倒壊した高齢者のご夫婦が、土地を担保にした【リ・バース60】の融資と自己資金を元に、平屋の新居を建てた事例もあります」

このように、高齢者にとって有効な選択肢になる【リ・バース60】ですが、深田さんは、利用するタイミングは考慮すべきとアドバイスされます。

深田「一般的な住宅ローンは月々利息とともに元本も支払っていくため、払い続ければ借入残高が少なくなっていきます。

一方、【リ・バース60】は利息のみの支払いで月々は少なくて済みますが、借入残高は1円も減りません。ですから、契約者が亡くなるまで利息を払い続けなくてはなりません。つまり、長生きすると利息の総支払額が増えてしまうため、あまり早いタイミングでの利用は避けたほうがよいかもしれません。

とはいえ、高齢化が進み定年後の期間が長くなった今、老後資金を減らさずに快適な住まいを実現できる【リ・バース60】は、価値のある選択肢です。利用するタイミングも含め、商品の仕組みなどに疑問や不安があれば、【リ・バース60】を取り扱う金融機関に相談に行くことをおすすめします」

【リ・バース60】は、取扱金融機関によって利用できる方の年齢、資金の使いみち、融資限度額、金利タイプなどが異なります。取扱金融機関は【リ・バース60】のWEBサイトで検索できるので、詳しい情報は確認してみましょう。

【リ・バース60】について詳しく知りたい >>