2024年度末までに「昭和37~53年度生まれの男性」が無料の風しん抗体検査を受けるべき理由とは

昭和37年(1962年)4月2日から昭和54年(1979年)4月1日生まれの男性を対象に、2019年から実施されてきた「風しん」の抗体検査と定期予防接種が、2024年度末(2025年3月)で終了する予定です。対象となる人は、終了する前に風しんの抗体検査を受け、免疫がない(十分な抗体がない)場合は予防接種を受けておきましょう。

提供:一般財団法人阪大微生物病研究会

お話をうかがった方

清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド:清益 功浩

小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院小児科・アレルギー科で診療に従事。論文・学会報告多数。診察室外でも多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。

大人がかかると40℃超の高熱も!「風しん」ってどんな病気?

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「風しん」は、風しんウイルスによって起こる病気で、咳やくしゃみ、会話などの「飛沫」でヒトからヒトへ感染します。風しんウイルスの感染力は強く、免疫がない集団では1人の風しん患者から5~7人にうつると言われています。

感染してから発症するまでの潜伏期間は通常14~21日で、その後、発熱や発疹、リンパ節の腫れなどの症状がみられます。また、まれに脳炎や血小板減少性紫斑病などの重い合併症を引き起こすこともあり、注意が必要です。症状があらわれる約1週間前から感染力があるため、知らないうちに周囲に感染を広げてしまうこともあります。

風しんは数年おきに流行を繰り返していて、2012年から2013年にかけて全国で16,000人を超える大流行となりました。その後は一旦減っていましたが、2018年から2019年にも全国で5000人を超えて風しんが流行しました。風しんというと子どもの病気というイメージがあるかもしれませんが、実はこの時期の感染者は予防接種を受けていない(または接種歴不明の)成人男性が流行の中心でした。

大人が風しんにかかると、40℃を超える高熱が出る関節痛が強い(関節炎を呈することもある)など、子どもより重症化すると言われています。

風しんに特別な治療法はなく、症状をやわらげる対症療法が行われるのみで、1週間以上仕事ができなくなることもあるため、生活にも支障が出てしまいます。

特に注意が必要なのが「先天性風しん症候群(CRS)」

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風しんで特に注意が必要とされているのが、妊娠中の女性への感染です。

風しんに対して免疫がない女性が妊娠初期(20週頃まで)に風しんに感染すると、胎児も風しんウイルスに感染し、生まれてくる赤ちゃんは先天性心疾患、難聴、白内障などの症状を持って生まれてくる「先天性風しん症候群(CRS)」を引き起こすことがあります。2012年から2013年にかけての全国的な風しんの流行では、45人もの赤ちゃんがCRSと診断され、そのうち11人が亡くなりました。

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先天性風しん症候群の児に見られる主な症状

CRSには決め手となる治療法はなく、予防が重要です。女性の多くは風しんの予防接種を受ける機会がありますが、何らかの事情で予防接種を受けることができない人や、予防接種を受けたものの免疫がつかない人もいます。また、妊娠中の女性は予防接種を受けることができません。

妊娠中の女性への風しんの感染を防ぎ、子どもたちをCRSから守るためにも、社会全体で風しんに対する免疫を持ち、予防していく必要があるのです。

風しんはどうすれば予防できる?

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風しんはワクチンによって予防できる感染症です。手洗いやマスクの装着だけでは予防は完全ではなく、予防接種は有効な手段となります。

現在、風しん含有ワクチンは1歳児と、小学校入学前1年間の幼児に、定期接種として2回の接種が行われていますが、接種の機会がなく免疫を持っていない人の間では、今後も風しんが流行するおそれがあります。

特に風しん含有ワクチンの定期接種の機会がなかった昭和37年(1962年)4月2日から昭和54年(1979年)4月1日生まれの男性は風しんに対する抗体保有率が低く、注意が必要とされています。

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風しん含有ワクチン接種状況

そこで、昭和37年(1962年)4月2日から昭和54年(1979年)4月1日生まれの男性の抗体保有率を引き上げることを目標に、国が風しんの抗体検査と予防接種を無料で受けられるクーポン券を配布する事業(風しん第5期定期接種)を実施し、風しんの排除につなげようとしています。お住まいの市区町村から自分や家族にクーポン券が届いたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

2019年に始まったこの事業は2025年3月で終了する予定ですが、全国で約1,540万人の対象者のうち、2023年8月までに抗体検査を受けた人は約466万人と、対象者の約30.3%にとどまっています。

対象となる人は、ぜひこの期間に風しんの抗体検査を受け、免疫がない(十分な抗体がない)場合は予防接種を受けておきましょう。

クーポン券を使用できる医療機関のリストはこちら>>

※クーポンの対象でない方も、自費で抗体検査を受けることができます。妊娠を希望する女性とその同居家族であれば、市区町村で抗体検査を無料で受けられる場合もあります。

無料のクーポン券を活用し、風しんの感染拡大を防止しよう

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対象となっている年代の男性には、風しん抗体検査と予防接種のクーポン券が、お住まいの市区町村から送付されています。

届いたクーポン券をまだ使っていない人は、近くの医療機関などで無料の抗体検査を受けましょう。クーポン券はお住まいの市区町村以外でも使用でき、全国4万か所以上の医療機関で抗体検査を受けることができます。また、健康診断などで抗体検査を受けられる場合もあります。

抗体検査を受けて免疫がある(十分な抗体がある)ことがわかれば、予防接種は不要です。免疫がない(十分な抗体がない)ことがわかった場合は、無料で予防接種を受けることができます。

「自分は子どもの頃に風しんにかかったから大丈夫」と思っていても、実は記憶違いなどで免疫がない場合もあります。また、風しんにかかっても症状があらわれない場合もあり、気がつかないうちに妊婦さんたちにうつしてしまうおそれもあります。

自身が風しんにかかってしまうことや、誰かにうつしてしまうリスクを避けるために、この機会を利用してきちんと抗体検査を受け、免疫がない場合にはワクチン接種を受けることが望まれます。自分と社会の未来を守るために、風しんクーポン券を有効活用してください。

クーポン券を使用できる医療機関のリストはこちら>>

・検査の際に、クーポン券と住所が確認できる書類が必要になります。住民票の住所が変わっている場合、転居後の市区町村にクーポン券を再発行してもらう必要があります。
・クーポン券をなくした場合、お住まいの市区町村にお問い合わせください。

※本記事の掲載内容は2024年1月作成時点のものです。