【医師が解説】大切な娘のために知っておきたい!「子宮頸がん」とその予防について

日本で毎年10,000人以上の女性が診断される「子宮頸がん」は、若い世代で数が増加している「がん」のひとつです。大切なお子さんを子宮頸がんにさせないために、医師で「女性の健康」ガイドの山本佳奈先生に、子宮頸がんを引き起こす原因とその予防法をうかがいました。

提供:MSD株式会社

お話をうかがった方

山本 佳奈

内科医 / 「女性の健康」ガイド:山本 佳奈

1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。自身の体験から、大学時代より貧血の問題に取り組んでいる。貧血のほか、低用量ピル、性感染症、不妊、痩せ、更年期障害など、女性の健康に関する症状・病気についてわかりやすく解説できる「女性の総合医」を目指し、日々研鑽を積んでいる。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。

まずは知っておきたい基礎知識。「子宮頸がん」ってどんな病気?

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子宮頸がんは、子宮の入り口にできる「がん」のことです。日本では毎年10,000人以上の女性が子宮頸がんと診断され、年間約2,900人が亡くなっています。※1

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山本先生(以下敬称略)「子宮にできる『がん』には、妊娠中に赤ちゃんが育つ部分(子宮体部)にできる子宮体がんと、赤ちゃんを産む際に産道の一部となる部分(子宮頸部)にできる子宮頸がんの2種類があります。

そのうち子宮頸がんは、最近20~30代の若い女性に増えています。がんというと、高齢になってかかるものというイメージがあるかもしれませんが、子宮頸がんは若い世代から気を付けなくてはいけないがんのひとつです」

20~30代といえば、結婚や妊娠、出産といった女性のライフイベントと重なる時期。

山本「子育て世代の母親が子どもを残して亡くなってしまうことがあるため、子宮頸がんは別名“マザーキラー”とも呼ばれています。また、治療のために子宮を摘出したり、妊娠を諦めなければいけなかったりすることもあります」

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その子宮頸がんの原因は、ごくありふれたウイルスだと言います。

山本「子宮頸がんの原因は、おもにHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染です。海外の報告では、性交渉の経験がある女性の84.6%が一生に一度はHPVに感染すると推計されています※2。つまり、子宮頸がんは“誰がかかってもおかしくない病気”なんです」

ただ山本先生によれば、子宮頸がんは予防の手段がある数少ないがんでもあるそう。

山本子宮頸がんの予防には、ワクチン接種(一次予防)と定期検診(二次予防)があります。日本では2000年以後、患者数も死亡数も増加していますが、オーストラリアやアメリカなど、早くから男女を問わずHPVワクチンを推奨し、子宮頸がん検診受診率も高い国では、HPVの感染や異形成(がんに進行する可能性がある異常な細胞が増えている状態)の発生が低下しています。なかでも対策が進んでいるオーストラリアでは、高いワクチン接種率と検診率が維持されれば、2028年には新規の子宮頸がん患者はほぼいなくなる※3と考えられています」

「せっかく予防する方法があるのに、それを知らずに辛い人生を送るのはもったいない」という山本先生に、2つの予防法について詳しく聞いてみました。

※1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録/厚生労働省人口動態統計)全国がん罹患データ(2016年~2018年)/全国がん死亡データ(1958年~2019年)
※2 Chesson HW, et al. Sex Transm Dis. 2014; 41(11) :660-4.
※3 Hall MT, et al. Lancet Public Health. 2018 Oct 1. doi: 10.1016/S2468-2667(18)30183-X

10代からのワクチン接種で「子宮頸がん」の原因となるウイルスの感染を防ぐ

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山本「HPVには200種類以上のタイプがあり、低リスク型と高リスク型に分けられます。持続的に感染することで発症する高リスク型の中でも、16型と18型が子宮頸がんの原因の約7割を占めています。

こうした高リスク型のHPVの感染を予防するのがHPVワクチンです※4日本では、小学校6年生~高校1年生相当の女の子を対象にHPVワクチンの定期接種を行っています。また、過去に定期接種の機会を逃した方が公費助成でワクチンを接種できるキャッチアップ接種もあります」

定期接種:小学校6年生~高校1年生相当の女の子
対象者は無料(公費助成)でHPVワクチンを接種することができます※5。十分な予防効果を得るためには、同じワクチンを3回接種することが必要です。

キャッチアップ接種:平成9年度(1997年度)~平成17年度(2005年度)生まれの女性
過去に、定期接種の機会を逃した方も、公費助成でワクチンを接種できる制度です。キャッチアップ接種期間は、令和4年(2022年)4月から3年間で終了となります。

山本「主に性交渉によって感染するHPVに対し、性交渉前の子どもにHPVワクチンの接種は必要なのかと疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、HPVに感染する前、つまり性行為が始まる前にワクチン接種をすることが最も効果的なのです」

>>HPVの予防についてもっと詳しく
>>HPVワクチンを接種すれば、絶対に子宮頸がんにはならないの?

※4 ワクチンは含有する型に対して有効です。また、すべてのがんを防ぐわけではありません。
※5 HPVワクチンの公費助成制度については、住民票のある自治体にお問い合わせください。

20歳を過ぎたら2年に1回の定期検診で、治療可能な早期の「がん」を見つける

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ただし、ワクチンですべての子宮頸がんを防げるわけではありません。山本先生は公費助成もある「子宮頸がん検診」※6を併せて行うことも大切だと言います。

山本「高リスクHPVに感染しても、約90%の人は免疫の力でウイルスが自然に排除されます。残りの約10%の人はHPV感染が長期間持続し、このうち自然消失しない一部の人が、異形成とよばれる前がん状態を経て数年以上をかけて子宮頸がんに進行すると言われています。この、がんになる前の細胞(前がん病変)や、治療可能な早期のがんを見つけるのが、子宮頸がん検診の役割です」

厚生労働省では、20歳を過ぎたら定期的に子宮頸がん検診を受けることを勧めています。早期の子宮頸がんはほとんど症状がないため、何気なく受けた検診で見つかることも多いそうです。

山本「検診では、子宮の入り口部分の表面をやわらかいヘラやブラシで軽くこすり、採取した細胞を顕微鏡で観察して、異型細胞があるかどうかを調べます。これを細胞診といいますが、採取時に痛みがあるかどうかを気にする方もいるでしょう。子宮の入口部分は痛みの感覚が弱いため、一般的に痛みはほとんどないと言われていますが、個人差はあります。

細胞診の前に行われることの多い、視診(子宮頸部のあたりを観察すること)のための器具を入れる際に、痛みや違和感、気持ち悪さなどを感じる方が多いかもしれません。力をいれてしまうと器具が入りにくくなってしまうので、息を吐くことを意識し、リラックスして臨みましょう。検診は1~2分ほどで終わります」

>>検診による子宮頸がん予防って?

※6 子宮頸がん検診の公費助成制度については、住民票のある自治体にお問い合わせください。

ワクチンと定期検診の両方で”子宮頸がん”を予防

ワクチンは含有する型に対して有効ですが、がんを100%防ぐことは不可能です。一方で、検診では見つかりにくいがんもあります。子宮頸がんを予防するためには、10代からのHPVワクチン接種と20歳を過ぎたら定期検診のどちらも大切なのです。

山本「とはいえ、10代の女性にとっては正しい情報を手に入れたり、自ら婦人科に足を運んだりすることは難しいかもしれません。一方、ここ数年で子宮頸がんをとりまく状況は大きく変わっているため、親の知識がアップデートできていないケースもあるでしょう。まずは親子で一緒に情報収集を始めてみてはいかがでしょう。

ワクチンや検診に関する話は、子宮頸がんだけでなく、自分の健康を自分で守ることや、性についてどう考えるかにもつながる大切なテーマです。思春期の子どもと性に関する話をするのはなかなか難しいかもしれませんが、むしろHPVワクチンの話が良いきっかけになると捉えていただくといいと思います」

そして、口コミサイトや根拠があいまいなサイトなどではなく、厚生労働省、自治体、学会などの公的機関や、婦人科などの専門家の信頼できる情報を適切に得ることが重要です。例えば、厚生労働省や自治体のホームページやパンフレットなどで、子宮頸がんの情報は得られます。さらに、「調べてもわからないことがあったら医師に相談に行くのも一つの手段」と山本先生。

山本「実際にHPVワクチンの接種や、定期検診を実施している病院やクリニックがおすすめです。より具体的な話が聞けることが多く、若い患者さんもたくさん来院していて受診しやすいでしょう。予約の際に相談のみであることを伝えて、受診日時を調整してもらっておくのがベストですね。医師は接種を強制することはないため、安心して疑問や不安な点を聞いてみてください」

すでにHPVワクチン接種の有効性が多数報告されているため、世界では今後ますます接種の流れが加速するでしょう。また、子宮頸がんは、早期がんのうちに治療すれば治癒率も高く、子宮を温存できる可能性も十分ありますが、進行がんになると再発率・死亡率も高くなります。しっかりとした知識を持つことが、命を守ることにつながりますので、積極的な情報収集を心がけましょう。

以下の「もっと守ろう.jp」では、子宮頸がんの疾患や予防(ワクチンと検診)に関する詳しい情報を知ることができます。また、近くにある子宮頸がん予防について相談できる医療機関の検索もできるので、ぜひチェックしてみてください。