今は買い時?暮らしの変化から考える住宅取得のタイミング
新型コロナウイルス感染症の影響で暮らし方や働き方が変わる中、住まいについて考える人が増えています。住宅取得を考えた場合、今は買い時なのか、そして、どのような視点で住宅やローンを選ぶべきかについて、All About『住宅購入のお金入門』ガイドの久谷真理子さんに伺いました。
提供:住宅金融支援機構
お話をうかがった方
All About『住宅購入のお金入門』ガイド:久谷 真理子
ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター。個人向けに相続・不動産の相談業務、実行支援業務を行う傍ら、住宅ローン、ライフプラン等のマネーに関する各種セミナーの講師や、Webサイト、新聞、雑誌等で情報発信をしている。
「新しい生活様式」によって、求める住まいに変化が
新型コロナウイルスの感染拡大により始まった「新しい生活様式」。在宅ワークやオンライン授業が増えたり、外出機会が減ったりするなど、私たちのライフスタイルは大きく変化しています。このようなライフスタイルの変化により、求める住まいも変わったのでしょうか。
久谷真理子さん(※以下敬称略)「コロナ以前と比較すると、住まいを選ぶ視点に変化が見られます。例えば、住環境は、駅や商業施設などが近く生活利便性が高いことを優先する方が多くいらっしゃいました。しかし、在宅ワークが中心になった方は、年齢や性別を問わず、可能な範囲で自然が近くにある緑が豊かなエリアに住みたいと話されます。
間取りでいうと、コロナ以前は仕事や学校で家族全員が忙しかったため、家に居る時間は家族が一緒に過ごせる広々としたリビングが人気でした。しかし、今はワークスペースの確保が最優先で、そのための独立した空間を求める方も増えています。同時に、家で過ごす時間が長いため、窓が大きい、天井が高いなど開放感のある空間を求める方も多いですね」
住宅の買い時っていつ?
ライフスタイルの変化に合わせるために、住まいの購入や建築、リフォームを検討している方は多いでしょう。とはいえ、社会情勢や経済動向に不安を感じ、なかなか踏み出せない方もいるかもしれません。
久谷「コロナ禍による景気の停滞は見られますが、住宅取得の相談頻度はコロナ前よりも増えているように感じます。相談に来られるのは、子供の進学や定年退職が視野に入ったことで先々の暮らしのイメージが持てるようになり、資金計画の目途も立ちつつある方たちです。このような方は、コロナ禍だからといって住宅取得のタイミングを待つことは少なく、むしろライフステージの変化から今の家に不満を抱いたことで積極的に動いています」
現在の住宅市場を見ると、都市部においては、新築住宅の販売戸数や中古住宅の流通戸数が限られているために需給バランスが崩れ、住宅価格が高止まりの傾向にあります。その一方、住宅ローン金利は史上最低水準が継続中。住宅価格は高いけれど、低金利の今こそ買うべきなのか……と迷う方も多そうです。
久谷「景気や住宅市場、住宅ローン金利などの動向は、私たちがコントロールできませんし、先々を正確に予測することも不可能です。なので、住宅は欲しいタイミングで買うのが正解だと思います。
一方で、住宅取得に関する資金計画は自分でコントロールできます。ご家庭により事情は違いますが、取得時には自己資金をしっかり用意して、ローンを返す期間についても考えたうえで、借りすぎを防ぐようにしましょう。あまりにも自己資金が少なかったり、返済期間を長くとりすぎたりすると、入居後にローン返済に苦しむ、売却したくてもローンの残債があり難しい、定年後も延々とローンを払い続けなくてはならないなどの状況に陥る可能性があるからです。
住宅を買う目的は“楽しく暮らす”ことで、購入はその通過点に過ぎません。家が欲しいと思い、先々の暮らしのイメージが持て、資金計画が立てられたときが、その方にとっての『買い時』と言えるでしょう」
今なら、いろいろな住宅取得支援制度が利用できる
コロナ禍による景気停滞から回復するために、国は色々な住宅取得支援制度を用意しています。
●「グリーン住宅ポイント制度」
2020年に創設。一定の省エネ性能等を満たす住宅の新築/リフォームを行う場合や、一定の要件等を満たす中古住宅を購入する場合、30万ポイント(1ポイント=1円相当)を基本に、最大100万ポイントが受け取れる制度です。受け取ったポイントは、様々な商品や一定の追加工事と交換することができます。
●「住宅ローン控除」
住宅ローンの年末残高(上限4000万円※)の1%を、所得税や住民税から10年間控除が受けられる制度です。消費税が10%に増税された際、緩和策として控除期間を10年間から13年間にする制度が導入されており、現在も継続中です。
●「住まい給付金」
住宅ローン控除の恩恵を十分に受けにくい所得層のために、一定の要件を満たす住宅を取得する際に最大50万円が支給される制度。所得額などにより段階的に給付額が変わる仕組みです。
●「住宅取得等資金贈与の特例」
父母や祖父母から子や孫が、住宅取得の資金として贈与を受けた場合に利用できます。贈与税が非課税となる金額は契約年月日や住宅性能などにより異なりますが、最大1500万円となっています。
「住宅ローン控除」「住まい給付金」「住宅取得等資金贈与の特例」以外にも、固定資産税・都市計画税の特例(減額措置)、不動産取得税や登録免許税の軽減などがあります。気になる方はホームページで情報をチェックしたり、税理士に相談しましょう。
久谷「国の住宅取得支援策は、要件が合えば資金面で大きなメリットがあります。期限が定められているため、取得を迷っている方が“決断のきっかけ”とするのも良いでしょう。ただし、住宅取得のタイミングはライフスタイルに合う家のイメージや資金計画などの準備が整っていることが前提。制度を利用するために取得を急ぐのは禁物です」
※認定長期優良住宅の場合は5000万円。
【フラット35】なら、求めるライフスタイルに合わせた金利引下げプランも
国の住宅取得支援策以外にも、住宅ローンは史上まれにみる低金利が続いています。このチャンスを活かして資金計画を立てたいものです。
久谷「資金計画を立てる中で、住宅ローン選びはとても重要になります。住宅ローンの金利タイプには、大きく分けて変動金利型と固定金利型がありますが、この低金利の恩恵をより多く受けるために、変動金利型を選ぶ方は多いです。
しかし、住宅ローンの返済期間は20~30年と長期間に渡ります。ずっと低金利が続くか分かりませんし、変動金利型を選ぶと先々で金利上昇があれば、その負担は自分が負うことになります。その点、固定金利型は借入時などに返済額が決まるため、返済計画の見通しを立てやすく家計の安心感につながります。そのあたりもよく考えて、住宅ローンを選ぶことをおすすめします」
固定金利型の住宅ローンは複数ありますが。金融機関と住宅金融支援機構が提携した【フラット35】は、最長35年の全期間固定金利型の住宅ローンです。そして【フラット35】には、【フラット35】S、【フラット35】地域連携型、【フラット35】リノベなど、要件を満たすと金利が一定期間引き下げになるプランが用意されています。
●【フラット35】S
長期優良住宅など、省エネルギー性や耐震性など質が高い住宅を取得する場合に、借入金利が一定期間引き下げられます。金利引下げ期間は、住宅性能(技術基準レベル)によって異なります。
●【フラット35】地域連携型
子育て世帯や地方移住者等に対する積極的な取組を行う地方公共団体と、住宅金融支援機構が連携したプランです。補助金などとセットで【フラット35】の借入金利が一定期間引き下げられます。また、【フラット35】Sや【フラット35】リノベとの併用が可能です。
●【フラット35】リノベ
中古住宅の取得と合わせて一定の要件を満たすリフォームを実施する場合や、住宅事業者により一定の要件を満たすリフォームが行われた中古住宅を購入する場合、【フラット35】の借入金利が一定期間引き下げられます。金利引下げ期間は、リフォーム工事費や住宅の要件等により異なります。
久谷「建てたい家やライフスタイルによって、一定期間金利引下げが受けられるのは、【フラット35】ならではの魅力といえます。特に、【フラット35】地域連携型は一定期間金利引下げが受けられるだけでなく、自治体から補助金なども受け取れる、とても興味深い商品です。各自治体がどのような事業を行っているかは住宅金融支援機構のWEBサイトでチェックでき、自治体窓口のリンクも貼られているため、調べるのに手間はかかりません。取得する住宅やリフォームの要件が当てはまるなら、是非活用したいですね」
情報を集めて、無理のない資金計画を立てよう
【フラット35】の特徴のひとつに、取扱金融機関が多い点があります。数多の金融機関の中から、どのように選べばよいのでしょうか。
久谷「借入先の金融機関を選ぶポイントはいくつかありますが、まずは金利と手数料を調べて、比較すると良いでしょう。金利が高くても手数料が低い場合は、借入時のコストを抑えられます。反対に、金利が低く手数料が高い場合は、毎月返済額を抑えることが可能です。自分たちによってどちらが都合が良いのか、よく考えて選択してください」
【フラット35】取扱金融機関の多くは、相談窓口に借入希望額と返済期間を伝えると、総返済額と毎月返済額、手数料などを試算してもらえます。
久谷「住宅の取得やリフォームには大きな費用がかかります。支払うのは自分なので、不動産会社や金融機関の担当者に任せ過ぎずに、自分でも調べたり比較検討することで、無理のない資金計画を立てたいですね」