ベンチャー企業経営者が語る、「エクイティ」と「デット」の資金調達はこう使い分ける
IPOを目指すベンチャー企業が成長する過程の中で、エクイティによる資金調達にとどまらず、デットでの資金調達を必要とするのはどの時期からでしょうか。自らもベンチャー企業のCEOを務める福原正大さんは、アーリーステージからミドルステージへの移行期が重要といいます。「この時期にデットによる資金調達を求める経営者は多いのですが、一般的に業績が安定している企業に比べてハードルは高く、資金調達の谷間ができやすいのです」。そうした谷間を乗り越えるため、福原さんに、資金調達候補先のひとつとして日本公庫の融資の特徴などを詳しく伺いました。
提供:日本政策金融公庫
お話をうかがった方

igs株式会社創業者・CEO/All About 「MBA・海外留学」ガイド:福原 正大(まさひろ)
日系・外資企業役員を経て、グローバルリーダー養成塾(国内・海外MBAエッセイ、TOEFL iBT対策を含む)を起業。その後、2010年に人材の評価・教育を支援するigs株式会社を創業し、新卒採用で多くの企業が利用するAIツール【GROW】なども手がける。MBA(INSEAD)。MBA進学・海外留学の専門家としても活躍
ベンチャー企業が資金調達で悩む時期、デットによる資金調達が重要に
シードからアーリー、ミドル(またはエクスパンション)、レイター、IPOへと移行していくベンチャー企業の成長モデルでは、各時期に応じた資金調達が必要。2010年にベンチャー企業を創業してCEOを務める福原正大さんは、そうした資金の調達先について、創業から現在までを以下のように振り返ります。
福原さん「ベンチャー企業ではアーリーステージの時期はもちろん、ミドルステージでも赤字決算や利益の薄い黒字決算がほとんどです。当社もミドルステージに入ったところですが、これまでベンチャーキャピタル(VC)によるエクイティで資金調達を行ってきました。しかし最近、新たな事業展開のために資金調達を検討した際に、スタートアップ時から支援を受けてきたVCからデットによる調達を勧められたのです」
福原さんはその提案をもとに金融機関へ相談を重ねているそうですが、VCにはどのような狙いがあり、ベンチャー企業はどんなメリットを得るのでしょうか?
福原さん「VC側は当社がIPO前に資金がショートしないよう、運転資金などに余裕を持たせたいとの狙いからでしょう。当社にも、創業メンバーの持ち株の希薄化が避けられるというメリットがありました。一般的に業績が安定している企業に比べて、ベンチャー企業は、デットによる資金調達のハードルが高いものの、金融機関へ対する期待は高いですね」
民間金融機関と連携して支援。日本公庫の2つの融資制度とは?
日本公庫のベンチャー企業向け融資の特徴は、エクイティ調達からデット調達への移行期間にあるベンチャー企業に対して、民間金融機関と連携しながらリスクマネーを供給している点であり、金融支援体制の構築に向けた支援に取組んでいます。
福原さん「この時期は更なる事業成長に向けた人材の採用などで人件費が増えたり、売上増加に伴い外注先への支払いが増えたりと、先行して多額の経費が発生し、運転資金が不足しがちです。こうした運転資金の調達を目的にデットを活用したいと考えるベンチャー企業の経営者は多いと思います」
こうした資金ニーズに応える融資制度として日本公庫には「資本性ローン」と「新株予約権付融資」があり、それぞれ以下のような特徴を持っています。
福原さん「ベンチャー企業の経営者や財務担当者から見ると、どちらも非常に魅力的な融資制度ですね。資本性ローンは決算実績に応じて金利が変わるため、ミドルステージでも赤字が見込まれるベンチャー企業にとっては、資金調達コストが低く抑えられる可能性があります。また新株予約権付融資はIPO時などに経営者等に新株予約権を売却してくれるため、いたずらに株主が増えることがなく、安心して経営ができるでしょう」
さらに日本公庫ではこうした融資制度をもとに民間金融機関と密接に連携し、例えば次のようなベンチャー企業への支援を日本各地で行っています。
融資前でも、企業に対する経営面での助言を日本各地で行う
加えて日本公庫では単に融資を行うだけでなく、ベンチャー企業の経営者や財務担当者との打ち合わせを重ね、借入調達を行う場合の事業計画のポイントを助言したり、融資後に販路拡大に繋がる取引先の紹介や金融支援体制構築に向けた金融機関の紹介など、その企業がIPOに至るまでを丁寧にフォローしていく点も特色の一つです。
福原さん「起業家は大きな夢の実現を目指して経営を進めることから、ややもすると足元の資金計画を甘く見積もりがちです。しかも経営者のカリスマ性が強すぎると、財務担当者が正確な見通しを言うに言えない状況が続き、結果的に資金がショートして終わりを迎えるようなこともあり得ます。その点で日本公庫のような金融機関が、これまでベンチャー企業を支援してきた経験を生かしてアドバイスしてくれるのは貴重だと思います」
さらに国の重要な施策の一つである地方創生の実現に向け、日本公庫では地域で活躍するベンチャー企業の支援も積極的に行っています。具体的には各地の支店において、地域の新事業・ベンチャー支援の推進体制を構築している他、地元ベンチャー企業への支援のネットワークを構築するため、各地の民間金融機関等とともにベンチャー支援機関同士の情報交換会を開催しています。
福原さん「地域のシーズやニーズは地元の金融機関がよく分かっているでしょう。加えて都市圏で先進的なベンチャー企業の支援も行う日本公庫が、その知見をもとに企業を大きく育てていくノウハウなどを提供するなど、両者が協力する支援の取り組みは非常に期待できますね」