新路線・みなとみらい線、いよいよ開業!
2004年2月1日、横浜に新しい地下鉄が開業します。その名も「みなとみらい線(正式名称:みなとみらい21線)」。横浜駅を出発し、みなとみらい21地区の真ん中を通り、官庁街を走り抜け、元町・横浜中華街・山下公園にたどり着く、新しい路線です。
みなとみらい線の駅を巡れば、横浜のさまざまな「顔」を感じることができるでしょう。もうすぐ開業するみなとみらい線の駅を、いち早くご紹介いたします! トリビア満載、みなとみらい線に乗る時にうんちくを語ってくださいね。
※この記事は2004年1月に取材した情報です。
<INDEX>
みなとみらい線について
各駅は「玄関口」にふさわしい異なるデザインに
【新高島駅】活気ある街の将来を予感させるデザイン
【みなとみらい駅】近隣施設とマッチする近未来的なデザイン
【馬車道駅】テーマは「過去と未来の融合」
【日本大通り駅】「歴史」と「最先端」両方のイメージが交錯
【元町・中華街駅】駅全体が資料館のよう
みなとみらい線のバリアフリー対策について
みなとみらい線について
みなとみらい線は、横浜駅~元町・中華街駅の約4.1kmを約8分で結びます。東急東横線と相互乗り入れるため、渋谷~終点の元町・中華街駅まで約35分(特急利用)と、都内からのアクセスもバツグンによくなります。都内からの観光客が増えるということで、駅周辺は盛りあがっています。新しく走る車両は、みなとヨコハマの海をイメージしたブルーと伸びゆく都市をイメージしたイエローのグラデーションで彩られた落ち着いた色合いです。側面にはみなとみらいの「M」の文字が描かれています。 車内は薄紫色の壁で、赤紫色のシートが並んでいます。シートの柄は伝統産業である「横浜スカーフ」がモチーフになっていて、船の舵やランプなどの模様が入っています。
東急東横線が乗り入れるため、みなとみらい線を走る全車両が新しいデザインとなるわけではありません。なお、東急東横線「横浜駅」は開業後には地下駅となり、「高島町駅」「桜木町駅」は2004年1月30日の終電をもって営業が終了となります。
料金は初乗り180円で、横浜~元町・中華街駅までは200円(小児は半額)。みなとみらい線全区間乗り降り自由な一日乗車券もあります。
※2019年1月31日現在、初乗り180円、横浜~元町・中華街駅までは210円。一日乗車券は大人460円(小児230円)
各駅は「玄関口」にふさわしい異なるデザインに
新しくできる駅は、新高島、みなとみらい、馬車道、日本大通り、元町・中華街の5つ。いずれの駅周辺も横浜を代表する地区であることから、駅を単なる乗り降りする通過点というだけでなく、それぞれの特徴をあらわす「玄関口」と位置づけてられています。そのため駅構内は、すべて異なるデザインになっているというからオドロキです。開業前の1月10日に行われた都市デザインセミナー「横浜・みなとみらい線駅デザイン」の講演と見学会(日本建築学会関東支部神奈川支所・JIA神奈川・神奈川建築士会共催)に参加させていただきました。そこで、新高島~元町・中華街までの5つの駅は、ちがう設計士(設計会社)が設計を担当したということを初めて知りました。
1992(平成4)年にデザイン委員会が設置され、各駅のデザインについて検討されたという力の入りよう。デザイン委員会委員長・渡辺定夫氏の「街の雑踏を楽しく包み込む空間にしたい」という思いを中心に、「各駅を横浜にふさわしい個性的なデザインとする」「周辺環境と調和し、人々に親しまれ、地域の財産となる空間を実現する」「ただ費用をかけるだけでなく、洗練されたデザインで実現する」という基本理念のもとで創られていきました。
セミナーでは各駅設計者の方々の話を伺うことができ、各駅を見学することができましたので、各駅のコンセプトや見どころをご紹介いたします。
※2004年1月12日現在、各駅はまだ建設途中のため、残念ながら開業日までは駅構内に入ることはできませんのでご注意ください。
新高島駅:活気ある街の将来を予感させるデザイン
横浜の次の駅となる新高島駅。この駅名は、幕末・明治期の横浜のまちづくりに貢献した高島嘉右衛門にちなんでいます。駅のある高島町は、京浜間の鉄道開業に際して、嘉右衛門が鉄道用地として埋め立てた土地で、現代で言うと、みなとみらい21地区のような存在だったかもしれません。その場所につくる駅ということで、活気ある街の将来を予感させるデザインになっています。5つの駅の中で、一番地下深い駅がココ。
テーマ:海をモチーフに、未来を先取りするようなスピード感を表現
設計・建築:山下昌彦+UG都市建築
- ホーム
ホームは地下5F。アートフレームが目印のエスカレーターは地下2Fのコンコースへ通じています。このアートフレームは単なるオブジェではなく、エスカレーターの落下防止と層間の防煙区画の機能も兼ねています。
- 地下2階 コンコース ウォールアート
白い波打つ壁の途中には、ステンドグラスのウォールアートが。深海のようすを現しています。
(ルイ・フランセン作 テーマ:海─Deep Waters W8.4m×H3.0m)
- 地下1階
水の泡をかたどった黄色いオブジェが天井にくっついています。水の中から見た水面近くのイメージを表現したもの。
- エントランス
新高島駅周辺は、まだ建物が何もない更地の状態。そのため、周辺に予想される建築と対峙しないようなニュートラルなボックスデザインとなっています。地下に光を多く取り入れることができるよう、格子状の穴があいていてガラスがはめこんであります。夜には、発光ダイオードによって光のオブジェと変化します。
- こだわりベンチシート
各駅のベンチは建築家がそれぞれの個性を発揮しているツール。新高島のものは、丸くて白いシートがランダムに並んでいます。
みなとみらい駅:近隣施設とマッチする近未来的なデザイン
みなとみらい駅は、みなとみらい21地区の中心に位置します。周辺には横浜美術館や横浜ランドマークタワー、パシフィコ横浜、クイーンズスクエア横浜などの商業・文化施設とマッチするような近未来的なデザインとなっています。地下鉄では珍しくホームに吹き抜けがあり、自然の光が入り込りこんできます。
テーマ:船をモチーフに、アーバンギャラリーとしての駅を創造
設計・建築:株式会社 早川邦彦建築研究室
- ホーム
ホームは地下4階。電車を降りると、天井の鮮やかなブルーとシルバーのストライプがパッと目に入ってきます。出口の方向(空間の方向性)をわかりやすくするための工夫だそうです。
空調の吹き出しなどの配管をむき出しにすることで、天井高3,250mを確保。配管は赤や緑、黄色、オレンジなどポップな色合いになっています。単なるデザインというだけでなく、機能(排煙や吸気など)ごとに色分けされているそうですよ。
- エレベーター・エスカレーター
エレベーター・エスカレーターはシースルーになっています。少しでも圧迫感をなくし、広く見せる工夫がなされています。
元町側は約20m四方の吹き抜けがあり、地下20mのホームからクイーンズスクエア、さらにクイーンズスクエアの吹き抜けを通して上空を望むことができます。
- コンコース(ボールト部)
横浜美術館出口へと続く中央部には大きなボールト空間があります。真っ白い空間はギャラリーとしての機能を兼ね備えているそうです。プロジェクタが4台設置されており、それを利用して壁にアートや広告などの映像(3m×16m)を映し出すことも可能です。またこのスペースを利用してイベントなども行われる予定です。
- こだわりベンチシート
みなとみらい駅は、黄色やオレンジなど派手な色が使われています。配管の色とマッチしたポップなイメージを醸し出しています。
馬車道駅:テーマは「過去と未来の融合」
横浜銀行旧本店跡地に建てられた馬車道駅。周辺には神奈川県立歴史博物館(旧横浜正金銀行本店)や帝蚕倉庫など、歴史を感じる建物が数多く残されています。西側には発展しつつあるMM21地区、東側には歴史を担ってきた関内地区、その間に位置する「馬車道らしさ」を表現した駅となっています。
テーマ:「過去と未来の融合」をテーマに、地下に歴史や時間がたまっていくような空間を表現
設計・建築:内藤廣+内藤廣建築設計事務所
- ホーム
地下3階となるホームに降りると、一面レンガ・レンガ・レンガ……。歴史的建造物が立ち並んでいるようなイメージです。地上の風景を予感させます。
- コンコース
吹き抜けの壁部分には、駅の地上部にあった横浜銀行旧本店のパーツが展示されています。まさに「地下に歴史や時間がたまっていく空間」。何もない部分にはこれから新しく出てくる「歴史」をはめこんでいく予定だそう。
反対の吹き抜けの壁部分には、横浜銀行旧本店にあった中村順平氏のレリーフが飾られています。長さがなんと約45mもある大作です。
改札前は直径24mもあるドーム型吹き抜け空間となっています。ここで過去と未来が融合するイメージ。馬車道駅の大きな特徴となっています。この吹き抜け部分の壁だけは「ホンモノ」にこだわり、明治期に広島県で焼かれた古レンガが使われています。
- こだわりベンチシート
馬車道駅は、透明なアクリルを曲げただけのシンプルなイス。周りのレンガで「過去」をベンチで「未来」を表現しています。
日本大通り駅:「歴史」と「最先端」両方のイメージが交錯
日本大通り駅(県庁・大さん橋)は、歴史的建造物が密集している地域にあります。開港場近くということもあり、開港以来、近代化の先端を走っている地域です。そんな地域性を表すため、この駅は「歴史」と「最先端」という両方のイメージを兼ね備えた、不思議な空間となっています。
テーマ:歴史的建造物の内部に入り込んだイリュージョン体験
設計・建築:鉄道建設・運輸施設整備支援機構
- ホーム
地下3階のホームは、白い空間にレンガ色のアクセントが効いています。周辺にある歴史的建造物の街並みを内部でも表現しようということから、日本大通り駅では、基本フォルムにアーチ、基本素材に石とレンガが多く使われています。
- エレベーター周辺
エレベーター周辺は他とはちょっとイメージが異なり、ブルーの大型タイルが使われています。横浜の海をイメージした空間になっています。階段やエレベーターも同じく、ブルーとシルバーが使われています。「移動空間」と他の空間を識別するための工夫です。
- コンコース
コンコースの壁には、歴史的建造物を象った模様が入っています。歴史的建造物に多く使われているレンガと花崗岩を用いることで、外の空間とのつながりを表現しています。
- コンコース(待合スペース)
コンコースには待合スペースが設けられています。レンガのアーチとテラコッタタイルの床が施されて、壁には緑が植えられています。和紙を透したやさしい光が全体を包み込み、暖かな空間を演出しています。また、待合スペースの横(2板出口側)の床には方位板がデザインされています。ここは日本大通りの真下に当たりますので、見てみてください。
- こだわりベンチシート
各駅のベンチは建築家がそれぞれの個性を発揮しているツール。日本大通り駅は、緑色のベンチが置かれています。まるで広場に緑が植わっているようなイメージです。
元町・中華街駅:駅全体が資料館のよう
元町、横浜中華街、山手地区、山下公園……表情の異なる観光地が周辺に多くあるのが終点の「元町・中華街駅(山下公園)」。そんな横浜の歴史や文化を駅に取り入れるため、駅全体がまるで資料館のようになっています。ホームやコンコースには、横浜開港資料館から提供された図版が194点も並べられています。
テーマ:横浜の歴史と文化を編さんしたグラフィカルな「本」の駅
設計・建築:株式会社伊東豊雄建築設計事務所
- ホーム
ホームには、真っ白な壁に「居留地時代の街並み」が描かれています。当時の絵ハガキから図版を編成し、海側壁面には本町通り・海岸通り(山下公園通り)・大さん橋エリアのようすが、陸側壁面には横浜中華街や山手・元町エリアのようすが配置されています。また、あまりキツい印象にならないよう、近くではぼんやり、遠くからははっきり見えるよう、画質に工夫がなされています。
図版が焼き付けられているタイルは1メートル角の大きさ。これは現時点で製作可能な最大の大きさだそう。駅全体で3,500枚も使われています。
- コンコース
コンコースのテーマは「居留地時代から現代までの街と人と暮らし」。大きく分けて3つに分かれています。人物やモノなどは実物大で描かれているのが特徴的。
- 中央のコンコース……横浜もののはじめ
- 横浜中華街側のコンコース……戦前の中華街にまつわるモノや祭りのようす
- 元町側のコンコース……元町・山手の風景と戦前の暮らしを表す人やモノ
天井の照明は、歩くところだけでなく、図版が描かれた壁面をも明るく照らしており、全体的に白く、柔らかな雰囲気の駅となっています。駅全体をグルッと回って、博物館のように楽しんでみてください。
- こだわりベンチシート
元町・中華街駅は壁の色に合わせ真っ白でシンプルなベンチです。真ん中がへこんでいるので、座り心地はGoodです。
みなとみらい線のバリアフリー対策について
新しい駅ということで、バリアフリー対策もバッチリ。エレベーターやエスカレーターが多く、施設内の段差も少なくなっています。階段などはコントラストをつけて、段差がわかりやすくなっています。車いすでも利用しやすい多機能トイレは男女両方に完備されています。車両にも車いすスペースがあったり、異なる長さのつり革がつけられていたりと、誰もが快適に使える工夫がいっぱいです。
いよいよ2004年2月1日に開通するみなとみらい線。この路線を機に、横浜は大きな変化を見せることでしょう。
※この記事は2004年1月に取材した情報です。
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