地下鉄火災法令改正でどこまで変わる?
東京消防庁は都火災予防条例を改正し、都内にあるすべての地下駅にスプリンクラー設置を義務づけることを決めました。
昨年の2月、韓国大邱市の地下鉄内で放火による列車火災が発生し、死者192名、負傷者146名を出す大惨事を受けた対策です。9月の都議会に改正案を提出して、来年4月の改正条例施行を目指すということです。
もちろん、総務省消防庁・国土交通省でもスプリンクラーの設置は定められています。今年(2004年)3月の「地下鉄道の火災対策検討会」において、地下駅・トンネルの火災対策として、売店を設置する場合は、自動火災報知設備を設置すること。コンビニ型売店では、スプリンクラー設備も設置するよう定めています。
しかし、東京消防庁は全ての地下駅に対してスプリンクラー設備の設置を求めています。現在、東京メトロ、都営地下鉄、JR、私鉄などの鉄道会社では、259駅が都内の地下部分に駅舎を設けています。
この条例が施行されれば、それらの駅すべてにスプリンクラー設備の設置が義務付けられます。そして、設置義務を怠った鉄道事業者に対しては、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科されることになります(消防法に基づいた処分)。
なぜ、東京だけがスプリンクラー全駅設置なのか!?
一般の人だとどうなのかわかりませんが、防災関連のショップやメーカーの人達は、東京の地下鉄に乗るのを非常に嫌がります(もちろん全員ではありません)。仕事柄、常に火災やテロ、地震など様々なデータや情報に触れているせいだと思いますが、「とにかく怖い!」とのこと。
私の知りあいの中には、九州から上京するときにかなり本格的な「防煙マスク(右の写真)」を持って歩いた人もいました。
そこまでする必要があるか、無いかは別として、現在の東京は何も考えずに行動が出来るほど、安全な都市ではありません。
ところが、どんなに事前の準備をしていたとしても地下鉄のような閉鎖された空間で火災が発生した場合、危険度は大幅に増します。
ビルなどで火災が発生した場合は通常なら地上に向かって下へ避難します。しかし、地下の場合は地上に出る為には上に向かって避難をすることになります。
煙というのは、横に向かっては秒速0.5~1mの速さですが上に向かっては秒速3~5mで移動します。地下で火災が発生すると、人体にとって非常に危険な煙と共に避難をすることになるのです。
オーストリア カプルンの山岳鉄道事故の悲惨な事故例からも、トンネル火災で発生した煙は非常に危険であり、火災の早期発見と初期消火によって煙を発生させないことが重要になります。
次ページでは、 韓国地下鉄火災での、スプリンクラー設備の作動状況から「スプリンクラーがあれば、安心なのか?」を検証します。
オーストリア カプルン(ザルツブルク州)の山岳鉄道事故事故発生日:2000年11月11日 |
オーストリア アルプスの山岳ケーブルカー火災で、スキー客で満員のケーブルカーが麓駅を出発前後に出火、路線の大半を占めるトンネル内で火災が拡大。日本人10人を含む155人が死亡した事故。 30度近い急こう配のトンネルが煙突のような状態になり、煙と火の回りが早かったと言われており、ケーブルカーに乗っていた乗客の多くはケーブルカーから出てトンネル上部に向かい倒れた。ケーブルカー後部からトンネルの下の方に向けて自力で出た12人は助かっている。 1審のザルツブルク地裁は今年2月、ケーブルカー運行会社の役員ら被告16人全員に無罪が出ている。 検察側から「控訴手続きを3カ月延長してほしい」との申し出があり、裁判所が認めたことを明らかにした。これでリンツ高裁で行われる控訴審開始は10月以降となることが確実となっている。 |