今回は、厚生労働省の資料をもとに、「夫婦2人のモデルケース」や「さまざまな働き方・ライフスタイル別の年金受給額」をご紹介します。
モデルケース:厚生年金受給者(夫)・基礎年金のみ(妻)の場合
2025年(令和7年)度の公的年金額は、物価の上昇(+2.7%)や賃金の上昇(+2.3%)を踏まえ、前年度より1.9%の引き上げとなりました。これは「マクロ経済スライド」という制度により、年金制度の持続可能性を保つための調整が行われた結果です。厚生労働省が公表した「令和7年度の年金額改定について」において、標準的なモデルケースとして示されているのが、夫婦2人で受け取る厚生年金の金額である「月額23万2784円」です。
この金額は、月収45万5000円(賞与含む)で40年間働いた夫が老齢厚生年金を受け取り、その妻と2人分の老齢基礎年金を加えたものです。
前年度(2024年/令和6年度)は22万8372円でしたので、月4412円の増額となります。
ただし、この金額はあくまで「モデルケース」であり、実際の受給額は働いた年数・年金の加入期間・収入の水準などによって大きく異なります。
特に最近では単身世帯も増えており、「自分はいくらもらえるのか」を具体的に把握しておくことが、老後の生活設計においてとても重要です。
多様なライフスタイル別の年金受給額
ここでは、代表的なライフスタイル別の年金月額(概算)をご紹介します。【厚生年金中心(20年以上)の男性】
・月額:17万3457円
平均的に約40年の厚生年金加入歴と、月収50万9000円を想定したケースです。会社員や公務員として長く勤務してきた人が該当します。
【国民年金中心(第1号被保険者・20年以上)の男性】
・月額:6万2344円
主に自営業やフリーランスとして働いていた人など、厚生年金の加入期間が短く、国民年金(基礎年金)が中心の方が該当します。
この金額には、「平均厚生年金加入期間7.6年」に相当する「厚生年金分として1万4335円」が含まれています。完全に基礎年金のみというわけではありませんが、受給額は全体的に低めとなっています。
【厚生年金中心(20年以上)の女性】
・月額:13万2117円
平均で33年余りの厚生年金加入歴と、月収35万6000円を想定したケース。女性会社員や公務員に多いライフスタイルです。
【国民年金中心(第1号被保険者・20年以上)の女性】
・月額:6万636円
主に自営業やフリーランスで働いてきた女性が該当します。
資料によると「平均厚生年金加入期間6.5年」があり、「厚生年金分として8485円」を含んでいます。したがって、受給額の大部分は国民年金(基礎年金)ですが、「基礎年金のみ」ではなく、一部に厚生年金分も含まれていますが、全体として受給額は少なめです。
【国民年金中心(第3号被保険者・20年以上)の女性】
・月額:7万6810円
結婚後に専業主婦として過ごし、配偶者の扶養に入っていた方に多いケースです。年金の中心は国民年金(基礎年金)ですが、「平均厚生年金加入期間6.7年」あり、「厚生年金として9056円」も含まれています。加入状況に応じて受給額には差があります。
このように、長期間会社勤めをしていた人でも、年金の受給額は月13万~17万円台が一般的。一方、自営業や専業主婦だった方の年金は月6万~7万円台と、かなり低くなる傾向にあります。
この場合、多くの人にとって「年金だけで老後を安心して暮らす」ということは難しいのが現実と言えそうです。自分のこれまでの働き方に応じて、「どれくらいもらえるのか」を早めのうちに把握し、不足分は計画的に準備していくことが大切です。
将来の備えは「自分が将来もらえる年金額を知ること」から始めよう
老後資金を考えるうえで、まず知っておきたいのが「自分が将来いくら年金をもらえるのか」。その第一歩は、毎年届く「ねんきん定期便」のチェックです。「ねんきん定期便」とは、これまでの保険料納付状況や将来の年金額の目安を知らせる通知です。年金制度への理解を深めるため、毎年誕生月に手元に届きます。
さらに詳しく確認したい場合は、「ねんきんネット」の活用がおすすめ。スマホやパソコンから、年金記録の確認や年金見込額の試算などが簡単に行えます。
年金だけでは不安?今こそ備えのスタートを
厚生年金のモデルケースでも、夫婦2人で月23万円程度です。公益財団法人 生命保険文化センターが発表した「生活保障に関する調査」2022(令和4)年度によると、「最低限の老後生活費」は月23万2000円、「ゆとりある暮らし」には月37万9000円が必要とされており、年金だけでは不十分なケースも多いのが現実です。
特に単身世帯では、生活費の負担が大きくなりがち。だからこそ、iDeCoや新NISAでの資産形成や、できるだけ長く働く環境づくりが重要になります。
老後は「まだ先」のことではありません。未来の自分のために、今できることを少しずつ始めていくことが、安心した暮らしにつながります。