Q:今年60歳になります。非正規雇用でなかなか貯金が貯まらず、63歳で年金繰上げを考えてますが、どうでしょうか?
「こんにちは。今年60歳になります。非正規雇用でなかなか貯金が貯まらず、63歳で年金繰上げを考えてますが、どうでしょうか?」(ネズミさん)
なかなか貯金ができず、年金の繰上げを考えています
A:繰上げ受給をすると、繰上げ請求した時点の減額率が一生涯適用されます。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰上げする必要があるなど、さまざまなデメリットがあるので注意が必要です
ネズミさんは今年(令和7年)で60歳になるとのこと。1965年(昭和40年)生まれかと思います。ネズミさんが男性とした場合、老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)は、原則65歳から支給されることになります。もし65歳より前に年金を受給したい場合は、60歳以降65歳になるまでであれば「繰上げ受給の請求」をすることで、年金を受け取れます。ただし、繰上げ受給の手続きをすると、繰上げする期間に応じてひと月当たりの年金受給額が0.4%減額されます(昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は0.5%)。この減額率は一生変わりません。繰上げ請求した時点の減額率で計算された年金を、一生受け取ることになります。
減額率の計算式は以下の通りです。
・減額率(最大24%)=0.4%×繰上げ請求月から65歳に達する日(誕生日の前日)の前月までの月数
繰上げ請求すると、年金を早く受け取れますが、長生きすればするほど、受け取れる年金受給額の合計が少なくなってしまいます。
さらに繰上げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を、同時に繰上げする必要がありますので、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方とも減額されてしまいます。一度繰上げ受給をすると、取り消しはできません。
その他、さまざまなデメリットがあります。過去に国民年金保険料の未納期間がある人が対象にはなりますが、国民年金の任意加入や追納もできなくなります。繰上げ受給をした日以後は、事後重症(障害認定日には基準に該当しない障害状態の場合、その後障害の状態が重くなること)などによる障害基礎(厚生)年金を請求できません。
ネズミさんが厚生年金に加入して給与をもらい、年金を繰上げ受給するのであれば次のような注意点もあります。
厚生年金に加入して給与収入を得ている人が、基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)とおおよその給与収入(総報酬月額相当額)の合計が支給停止基準額51万円(令和7年度)を超えると、老齢厚生年金受給額の一部もしくは全額が支給停止されます。これを在職老齢年金制度と言います。
例えば老齢厚生年金が月額12万円、給与収入などが月額30万円であれば、合計しても51万円を超えませんから、老齢厚生年金は支給停止となりません。繰上げした場合に老齢厚生年金をいくらもらえるのかを事前に年金事務所で確認してみるといいでしょう。
また、在職老齢年金制度の対象になるのは、老齢厚生年金です。老齢基礎年金は在職老齢年金制度の対象ではないので支給停止にはなりません。
平均寿命が長くなり、長生きされる人が多くなりました。年金は生涯にわたって受け取れる大切な収入源です。繰上げ受給のデメリットをよく把握して手続きするようにしましょう。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)