才能と学習困難を併せ有する「2E(ツー・エクセプショナル)」とは?
才能(ギフテッド)と学習困難を併せ有する子どもたちを指す「2E(ツー・エクセプショナル)」という言葉を聞いたことがありますか?2021年に文部科学省が「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」でギフテッド教育について言及した際、この「2E」についても明言されています。 「2E」は「Twice Exceptional」の略で、特異な才能がありながら、学習困難や発達障害といった困難を併せ有する子どもたちのことを指します。ギフテッドのすべてが「2E」ではありません。ギフテッドの中に「2E」の人がいるというイメージです。2Eの子どもたちは、特に興味のある分野で優れた能力を発揮します。例えば、数学や科学、音楽、芸術などの分野で驚異的な才能を見せることがあります。
しかし一方で、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)により、学習の一部に困難を抱え、注意力や社交スキルに課題を抱えることも少なくありません。また、得意な分野と苦手な分野のギャップや、感情的に敏感な面も特徴です。
彼らは一見、才能だけが際立って見えるかもしれませんが、同時に学習の場で困難に直面することも多いのです。2Eの子どもたちが、その潜在能力を最大限に発揮するためには、二面性を持つ彼らの特性を周囲が理解し、適切な支援を提供することが非常に重要です。
才能を伸ばし困難をサポートする「ギフテッド教育」
マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツやMeta(旧Facebook)を創業したマーク・ザッカーバーグはギフテッドであるといわれており、専門的な分野で革新をもたらしました。ギフテッド教育とは、高い才能を持つ子どもたちがその潜在能力を最大限に発揮できるよう支援するものです。具体的なアプローチとして、「加速学習」では、高度でチャレンジングな学習機会を提供し、彼らが興味を持ち続けられる環境を整えます。また2Eの子どもたちは、通常の学習環境では才能を十分に発揮できない可能性があるため、「個別化された学習プラン」によるアプローチが不可欠です。教育者や保護者が彼らの強みと弱みを理解し、個別化された教育プランを提供することで、才能を伸ばし、学習上の困難を乗り越える手助けが可能です。
専門家との連携も重要です。心理学者やカウンセラーと協力し、子どもの社会的・感情的なニーズにも対応します。ギフテッド教育は、子どもたちが社会で活躍できるよう、多様なアプローチでサポートしているのです。
才能と困難の両立を支える家庭でのサポート
2Eの子どもたちには、家庭でのサポートも欠かせません。親が彼らの特性を理解し、適切な環境や学習機会を提供することで、成功体験を積み重ね、自己肯定感を育むことができます。そのためにもまず、子どもの特性を理解して強みと弱みを見極めることが大切です。興味や才能を伸ばす環境を提供し、外部のプログラムやワークショップに参加させることも効果的です。
例えば、「2E児の可能性に気づくためのチェックリスト」(著:角谷詩織)では、「成績やテストの得点よりも、実際は頭が良さそうに見える」「難易度の高い課題はよくできるが、簡単な課題に非常に苦労する」など具体的な様子が記載されています。
このようなチェックリストから子どもの様子を読み取り、学習困難に対しては、集中しやすい環境を整えて、柔軟な学習スケジュールを設けるなどの工夫が必要です。また社交性やコミュニケーションの練習を通じて、社会的スキルの育成もサポートしてあげるとよいでしょう。専門家との連携も欠かせません。子どもの特性やニーズに応じた定期的な相談や効果的なサポートプランの作成を通じて、成長を支える体制を整えましょう。
2Eの子どもたちにとって最適なサポート体制を築くことで、その潜在能力を最大限に発揮し、健やかに成長できるように支援しましょう。
<参考>
・特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(文部科学省)
・「2E児の可能性に気づくためのチェックリスト」:日本語版Checklist for Recognizing Twice Exceptional Children 上越教育大学研究紀要 44 91-, 2024-08-30