食生活・栄養知識

黄色ブドウ球菌による食中毒の危険性……素手の調理で、死亡例も

【管理栄養士が解説】黄色ブドウ球菌は身近な菌ですが、食品に付着すると食中毒を引き起こすことがあります。「エンテロトキシン」という毒素の性質、黄色ブドウ球菌による食中毒を防ぐための3つのポイントについて、わかりやすく解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

食中毒を起こした胃

食中毒を防ぐには、食材に菌をつけないこと、菌を増やさないこと、やっつけることの3つが大切です。

百貨店で販売された「うなぎ」によって、大規模な食中毒が起こってしまいました。7月31日時点で、少なくとも161人が症状を訴え、うち1人が亡くなったことが報じられています。

「手袋をつけず、素手で調理をしていたことが原因」と報道されていますが、一般的な家庭では、調理は素手で行うことがほとんどでしょう。素手で行う調理はそんなにも危険なのかと、疑問に思う人も多いかもしれません。わかりやすく解説します。

黄色ブドウ球菌とは……身近だが、食品に付着するととても危険な食中毒菌

今回の食中毒を引き起こした原因は、「黄色ブドウ球菌」という食中毒菌です。食中毒菌といっても決して珍しいものではなく、健康な人であっても、のどや鼻の穴などに高確率で存在している菌です。おできやにきび、水虫などの化膿性疾患を起こす代表的な菌でもあります。

身近に存在する分、手洗いが不十分だったり、手指にケガをしていたりすると、素手で調理をしたときに黄色ブドウ球菌が食べ物に付着してしまうことがあります。でも、元々のどや鼻の穴にいても人体には深刻な影響を及ぼしていなかった菌によって、なぜ食中毒が引き起こされるのでしょうか?

それは、黄色ブドウ球菌が、食べ物に付着し、食べ物の中で増殖し始めると、「エンテロトキシン」という毒素が作られ、これが食中毒の症状を引き起こすからです。黄色ブドウ球菌は熱に弱いのですが、エンテロトキシンは熱に強い性質のため、一度毒素ができてしまうと、加熱しても食中毒を防ぐことはできません。
 
今回の食中毒の事故は持ち帰り弁当によって起きています。調理してから食べるまでに時間があったために、弁当内でエンテロトキシンが増殖し、人の命を奪うほどの量に達してしまったのでしょう。

黄色ブドウ球菌による食中毒を防ぐ3つのポイント

身近にありながら、一歩間違えると非常に痛ましい事故を起こす黄色ブドウ球菌。この菌による食中毒を防ぐためには、3つのポイントがあります。
 
  1. 手指の洗浄・消毒を十分に行うこと
  2. 手指などに切り傷や化膿した部分がある場合、十分に工夫をすること
  3. 食品は食べるまで10度以下で保存し、菌が増えるのを防ぐこと
 
「2」の手指などに切り傷や化膿部位がある場合は、基本的には、食品に直接触れたり、調理をしたりしないことが大切です。それでも、どうしても調理をせざるを得ない場合は、使い捨てのビニール手袋を使うなどして、食品に直接触れないようにしましょう。特に、調理済の食品は絶対に素手で触れないようにすることが大切です。

黄色ブドウ球菌の場合の食中毒予防のポイントは上記の3つですが、食中毒菌には、ほかにもさまざまな種類のものがあります。

性質はさまざまですが、いずれの食中毒も、食中毒予防の3原則である「菌をつけない、増やさない、やっつける」をしっかり守ることで、予防することができます。衛生にしっかりと気をつけて、毎日の食卓の安心と安全を守っていきましょう。
 
■参考
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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