ベーシック版の元となったのは、2016年に発売されて大ヒットした「ビッグストリーム そうめんスライダー」。その後、マイナーアップデートをしながら、2020年に発売された、コースをカスタムパーツなどを使ってカスタマイズできる「ビッグストリーム そうめんスライダー カスタム」が、翌年から「そうめんスライダー カスタムベーシック」として毎年、販売されていました。
そして、2024年4月、新たなベーシック版そうめんスライダーとして登場したのが、「ザ・そうめんスライダー」です。基本的なコースのレイアウトや構造は「ビッグストリーム そうめんスライダー カスタムベーシック」と同じで、コースのカスタマイズが可能なのも引き継いでいますが、大きく変わったのは「水をくみ上げるためのモーター部分」です。
家庭で遊ぶオモチャである以上、そうめんスライダーの製品化にはいくつもの制限があります。乾電池駆動であることもそのひとつ。なので、水をくみ上げるパワーにも限界があります。
開発担当者の平林千明さんは、この2年くらい、モーターの改良を試していたそうです。そして、今回、モーター自体のパワーは変えずに、スクリューなどの部品の調整と新開発で、より効率良く水をタワー上部に送ることができて、その分、水流も多くなるモーターが完成しました。
通常モードとアウトドアモードが切り替えられる
右の出っ張りが電池ボックス。ここに単1形アルカリ乾電池を3本入れる。左側の下部に仕込まれたモーターがフィンを回して、水を上方にくみ上げる仕組み。新しいモーターはパワーだけでなく、防水性能も向上させている
この「アウトドアモード」に注目が集まっていますが、これも、定番品にするなら、何かもうひとつ仕掛けを入れたいという平林さんのサービス精神によるもの。元々は、屋内でも気軽に流しそうめんを楽しむためのオモチャだったはずが、ここに来て、再び外に持ち出して楽しむ機構も搭載されたという流れが、とても面白いと感じました。 この噴水が、想像以上に勢いよく噴き出すのも、新しいモーターだからこそなのでしょう。部屋の中でちょっと試すなんてとてもできない、正にアウトドアのためのギミックです。
実際、YouTubeなどを見ると、テラスや屋外で「そうめんスライダー」を使っている人は結構おり、夏を楽しむ製品なので、この新しいギミックはより夏を感じさせるものとして歓迎されそうです。夏場の噴水というのは、花火と並んで盛り上がるものですから。
このあたり、毎年新しい要素を加えながら出し続けている製品だからこそ、モーターの改良などの基礎研究が続けられるわけです。オモチャだといっても、製品の魅力を向上させるためには基礎研究が欠かせません。
それはどういう分野でも同じでしょうし、そこをおろそかにしている製品は、長くシリーズを持続させることは難しいでしょう。逆に言えば、「そうめんスライダー」シリーズは、それだけ真剣に作られているということでもあります。
水流の勢いもアップしてよりエキサイティングに
アウトドアモードを切って、通常モードにした場合、噴水に使っている水流も、流しそうめんのレールに流れるわけで、その分、麺が流れる速度もアップします。コース自体も、長年の研究で、麺の流れ具合などは完成の域に達しつつあります。今回、バッシャハウスのデザインが以前と変わっていないので、同じ金型を使っているかと思ったのですが、噴水を勢いよく噴射するには、単にハウスの屋根に穴を開けるだけでは実現できません。そこも新しい金型を作って、新しい設計で製品化されています。
内部の水流を噴水側とコース側に切り替えるパーツも新たに作られています。以前あった、ナイトプールバージョンでは、LEDユニットをうまく組み込んで、同じ金型で改造して光るバッシャハウスが実現できたそうですが、水流を変えるとなると、そうはいかなかったようです。
バッシャハウスが「そうめんスライダー」の肝ですから、当然と言えば当然かもしれませんが、「だったらやめよう」とならないのが、この開発チームの素晴らしいところだと思います。
特別ユニット「爽mens」も誕生
これが、4人組ユニット「爽mens」。公式サイトにはPVもある
しかも、「爽mens」のプロデュースも、「そうめんスライダー」シリーズの生みの親である平林さんが担当。開発はもちろん、プロデュースから広報的な動きまで、本気で作っているからこそ、毎年、ヒット商品として完売するのでしょう。しかも、今回の「ザ・そうめんスライダー」は定番品ですので、来夏も発売されます。
アウトドアモードのような大きなギミックを付けていながら、それをベーシックだと言うタカラトミーアーツは、本当にありがたくも面白い会社ですね。
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