「ジェットストリーム シングル(ライトタッチインク搭載)」における伝統の継承と新しさ
「ジェットストリーム スタンダード」(上)と「ジェットストリーム シングル(ライトタッチインク搭載)」(下)を並べてみた。低粘度油性ボールペンが切り開いた、新しい油性ボールペンの歴史を俯瞰して見ているような感慨があるが、スタンダードのボール径1.0mmは筆者には宛名書き用ペンとして今も手放せない
最初の「ジェットストリーム」の形は、古くなったのではなく、それは18年間愛されたベーシックな形として大事にしながら、次の未来に向けたベーシックは何だろうというところから生まれたのが「ジェットストリーム シングル(ライトタッチインク搭載)」(以下、「ジェットストリーム シングル」)ということなのです。 「例えば、ジェットストリームのアイコンにもなっているノックボタンの下、クリップ部分の斜めのラインは、実は、一部のカラー軸では取り入れていなかったのですが、これはブランドのDNAとして重要だと考えたので、改めてカラー軸の全てに入れ直しています。
そして、今回の『ジェットストリーム シングル』でも、一見、流行りに準じたデザインのように見えますが、思想的にはかなり、“少し先のベーシック”という考え方を強く意識しています。クリップ部分の斜めのラインも、今回は逆向きに入れているんです。見た感じは変わりますがDNAとしてはつながっているんです」と百田さん。
この斜めのラインが、後ろからクリップ方向に斜め下に切られていたスタンダードのデザインではなく、クリップ部分から後ろに向けて斜め下に向かうラインになっているのには機能的な理由もあります。
このラインの方が、胸ポケットや手帳などに挟んだときに、飛び出し部分が短くて収まりが良くなるのです。これは、ネックストラップなどにペンを付ける人が増えているという現状に対応したものでもあります。
「今、このときに一番良いものを普通に作ろうと思ったらこうなった」というのが、このプロダクトの理念と特徴なのだと百田さんは言います。
普通に見えるけれど使うと分かる細かい機能
上がスタンダード、下が新シングル。ペン先のギリギリまでラバ-グリップがオーバーラップしているため、シームレスなデザインになっているし、変則的な持ち方も可能になった。低価格の筆記具で先端部分がグリップと一体になっているのは珍しいのだ
例えば、ノックボタンを押して芯を出したとき、ノックボタンが後ろでカチャカチャと鳴ることがありません。ノックして押し下げられた部分で静止するように作られているのです。
また、グリップ部分のゴムがペン先のギリギリの部分までオーバーラップしていて、持つ位置によって指が引っ掛かるということがありません。そして、軸全体の一体感が感じられます。
この価格帯のペンは一般的にペン先部分は別パーツになっていて、そこを回してリフィルを取り替えるのですが、このペンではそこではなく、グリップの後端、ペンの中央部くらいにネジが切られています。
「このグリップ部分のゴムがペン先までカバーしている構造は、三菱鉛筆の商品で国内で販売しているものに関しては今回が初めてです。ペンの持ち方は、お客様によってさまざまなのですが、この構造だと、指当たりがどこにきても同じフィーリングで持てるんです。シームレスなデザインになっているという意味でもポイントだと思っています」と百田さん。
そのようなさまざまなアイデアと技術が盛り込まれた軸には、新開発の「ライトタッチインク」のリフィルが搭載されています。そのインクがあるからこそ、さらに、このデザインや機構が生きることになります。
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