クリップもノックボタンにすることで、より細く
「サラサ3」(左)と「サラサクリップ3C」(右)を上から見た様子。クリップがボタンを兼ねることで、軸上のスペースも取らない
「この構造のメリットを最大限に生かしたレイアウトと言えるかもしれません」と水鳥さん。しかも、サラサクリップの特徴でもある、大きく開くクリップの構造はそのままに、クリップがノックボタンも兼ねるという構造になっています。クリップとしての使いやすさと、狭い中でのノックボタンの安定した動作を両立させる構造だけに、操作性を、従来品に劣らないようにするのも難しかったそうです。
「『サラサ3』を少し太いなと思いながら使ってくださっていた方は、その細さにすぐ気が付くと思います。以前のものも、特別太いわけではないのですが、油性の多色ペンに比べると、リフィルの太さの分、どうしても太くなります。
ただ、ゼブラはゲルインクを得意としているメーカーですから、そこは生かしたかったんです。特に太いことに対してお申し出があったわけではないのですが、やはり、細い軸は人気もありますし、より多くの人に持ちやすいと感じてもらえるのではないかと思うんです」と水鳥さんは、サラサブランドで細い軸の3色ボールペンを出したいと思った理由を教えてくれました。
印刷ではない鮮やかな発色の天冠部分
目立たない部分ですが、天冠(キャップのトップ)のパーツにもこだわりが詰まっています。この「サラサクリップ3C」は、通常の多色ペンとは違って、ノックボタンには色が付いていません。どのボタンが、どの色の芯を出すのかは、天冠部分の色で見分けるようになっています。そのため、この天冠部分は黒、赤、青の3つの色が付いているのですが、これが印刷ではなく、それぞれの色のプラスチックが使われているのです。
「やはり、天冠部分は色をハッキリ出したいと思ったんです。しかし、3色あって、ベース部分もあるとなると、いくつかのパーツに分ける必要があります。1パーツで3色というのも実現できなくはないのですが、作るのは大変です。ですから、2パーツでそれぞれ2色成形なら出来そうかなど、かなり頭を悩ませました。複雑な形になりますし、それがパチッと噛み合わなければならないしなど、地味な部分ですが、ここはぜひ見てほしいと思います」と水鳥さん。
細いだけでなく、軽さも「サラサクリップ3C」の魅力の1つです。以前のサラサ3Cとは1gの差ですが、13gと14gは持てばハッキリ分かる違いなのです。筆者は、このペンを最初に持ったとき、細さよりも軽さに驚いたくらいです。ところが、開発担当のおふたりは、軽さについてはあまり意識していなかったのだそうです。
「単純に細くなったことによる副産物のような感じです。ただ、パーツも繊細になっているので、その分は軽くなっています」と水鳥さん。
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