ゼブラ「サラサクリップ3C」各440円(税込)。右上からボール径0.5mmで軸色が透明、紺、白、黒、ボール径0.4mmのモスグリーン、赤、ミストブルー、黒。替芯は、0.5mmがJK-0.5、0.4がJK-0.4mm(税込各66円)
サラサクリップ3Cがすごいのは、これまでの多色ペンに使われていたリフィル(替芯)をそのまま使いながら、このスリム化を実現していることです。
今は、細軸の多色ペンもいろいろあるのですが、多くは金属製の4Cと呼ばれる規格の細いリフィルが使われています。しかしそうではなく、価格も安く、インク量も多い、一般的なペンで使われているリフィルで、この細さを実現したことが、このペンの決定的に新しい部分なのです。
筆記距離とスリムさを両立させるための新しい構造
「とにかく、サラサの多色ペンの軸を細くしたいというのが企画のスタートでした。とはいえ、4Cなどの細いリフィルを使えば軸径は細くはなるのですが、それだと筆記距離がかなり短くなってしまいます。また、リフィルも高価になります。ゲルインクの宿命でもあるのですが、『インクがすぐになくなる』と言われることもあるので、現状よりインクを減らす方向には行きたくなかったんです」と、「サラサクリップ3C」の開発を担当したゼブラ株式会社研究本部の水鳥元嵩さん。つまり、従来のリフィルを使いながら、いかに細くするかというのが、この製品の開発の課題だったということです。そしてその裏には、2023年に発売20周年を迎え、累計10億本を売り上げたサラサという人気ブランドの中にあるものの、“多色ペン”については、あまりユーザーへ浸透していないという状況がありました。
実際、「サラサクリップ」という製品のイメージが強く、定番のゲルインクボールペンとして、すっかり定着している分、他の製品に目が届きにくくなっているというところはあるかもしれません。実際、筆者もサラサの多色ペンは使っていませんでした。 「もともとサラサの多色ペンは軸がやや太かったのですが、それでも、3本のリフィルが1本の軸の中に入っていて、それぞれのリフィルにスプリングが巻き付いていますから、それぞれのリフィルを近づけると、スプリング同士が干渉して誤動作の原因になってしまいます。そもそも、スプリングがリフィルに巻き付いているということ自体が、細くすることを邪魔しているわけです。
ですから、これ以上細くするためには、従来の方法では無理だということは分かっていました。それでも、いろいろな方法を検討していく中で、ついに『サイドスプリング』という方式にたどり着きました」と、もう1人の開発担当者、ゼブラ株式会社研究本部の佐野葵さん。
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