不安も大きかった「究極のTKG」と、自らコラボの依頼に動く理由
基本的には食べ物周辺の製品が多い平林さんは、実際にも料理が大好き。パッケージや取り扱い説明書の作例写真なども、多くは彼女が自分で作って、自分で撮影しています。だからというわけでもないのでしょうが、企画もそちら方面が通りやすいのだそうです。それでも、最初に「究極のTKG」を出すときは不安もあったと言います。「モノとして面白いものを作っているという自信はあっても、売れるかどうかは出してみないと分からないです。TKGは、最初の究極シリーズで、ここまで大人向けにして、実際に買ってもらえるものなのかが全然分かりませんでした」と平林さん。
「究極のTKG」では、日清食品に例によって自分でアポを取って試作品を持ってプレゼンをしに行き、チキンラーメンとのコラボモデルを実現させています。そのときは、最初の試作品がまだ未完成で、プレゼン時に白身を泡立てる部分がうまく働かず、「また来ます!」と言って出直して、コラボにこぎ着けたそうです。 「積極的にコラボを依頼しに行くのは、せっかくの企画は商品化したいというのが大きいかもしれません。もうコラボが決まっているのにと言えれば、商品化が取り消しにくいじゃないですか(笑)。今でこそ、究極シリーズは社内的にも社外的にも信頼がありますが、このときは、まだ海のものとも山のものとも知れなくて、受注がいただけなかったら商品化は見送ろうという話になる可能性もありました。それこそ、企画会議を通って、試作もできて、社長プレゼンでOKが出た製品でも、受注数が少なかったら商品化は中止ということはありますから」
振り返ってみれば、平林さんは、まだ新人のデビュー作からすでに、企画もコラボも資材調達も、全部自分で動いています。案外、最初の仕事がそうだと、仕事の進め方はそういうものだということでスタイルができていくものかもしれません。
「アイデアを出すことだけは苦にならないんです」
2020年発売のタカラトミーアーツ「タピッてグー!」は、製品を作っているうちにタピオカブームが下火になってしまい、いまひとつヒットしなかったそうだ。「タピオカ粉を使わなかったのが良くなかったのかな」と平林さん。当たり前だが、全てがヒットするわけではないし、没になる企画も多いのだそうだ
「生活雑貨とか文房具はや作ってみたいです。ハンディファンとかは製品として出していますし、何かできそうなんですけど」と平林さん。そして、ずっとやりたいけれど、まだ形になっていないのが「筋トレ」関係と「ペットグッズ」。
ただ、生活雑貨にしても食品関係にしても、便利を目指すより、面白がってもらえるものを作りたいのだそうです。
「どちらかというと真面目な家庭で育ったので、子どもの頃から面白いことに飢えているんですよ。反動でどうしても面白い方向に行きたがるんです。すごいものを作ろう、イノベイティブなものを作ろうというのは、私にはあまりありません。それより、面白がられたいんです。人に楽しいと思ってもらえることにやりがいを感じるんですよ」という平林さんが、タカラトミーアーツという、個人で動くことを許してもらえる会社にいる巡り合わせもすてきですね。
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