自分が作って楽しくないものは売れるとは思えないんです
写真は、タカラトミーで2008年に発売した「ギガプリン」をさらにパワーアップして、タカラトミーアーツから2015年に発売された「超ギガプリン3.0」。こちらも、もちろん、開発は平林さん
「面白い企画なら通してもらえる環境が、この会社にはあると思います。他の社員さんも、何か作りたいと思ったら、どんどん企画を出しますね」と平林さん。実際、先日発表されたチロルチョコを大量に使うボードゲーム「チロルチョコわくわく争奪戦」も入社2年目の方の企画。
「『ギガプリン』は、『DECOTTI(デコッティ)』のヒットのあと、上司からスイーツで企画を考えてみれば、と提案されて作った製品でした」と平林さん。
この製品もまた、プリンを作るための材料、メーカー探しから、実際の交渉まで平林さんが行っています。当時、筆者は、この製品を東京おもちゃショーでプレゼンしている平林さんを見たのですが、その製品のインパクト以上に、とても楽しそうに説明をされていた姿が印象に残っています。巨大なプリンが作れるという、おもちゃなんだか、なんなんだか良く分からない製品を、メーカー自体が面白がって作っているという感じが伝わって、そこが面白いと思ったのでした。
「自分が作って楽しくないものは、売れると思えないんです。『ギガプリン』は、大きなプリンを売っているお店があって、それが面白かったので、もっと巨大にしたら楽しいだろうなと思ったのが最初でした。でもスイーツで企画を出してと言ってくれた上司は、たぶんもっとかわいらしいものをイメージしていたみたいでした(笑)」と平林さん。
これもまたヒットします。それは、単に巨大なプリンが作れる容器だけでなく、材料も付いていて、買えば作れるというところまでセットになっていたことがヒットの要因だったのでしょう。ただ、おもちゃ会社なので、品質管理も含め、食材を売るということは、かなりの冒険ですし経験のないことです。だから、粉の調達まで平林さんがやることになるわけです。そして、それは他の部署も巻き込むことになります。
こちらは、平林さんが「ご飯もの」を手掛けた最初の製品。2012年にタカラトミーアーツから発売された「スマート飯」。ここから、「究極のおにぎり」へとつながるのだ
平林さんに伺った話ですが、別部署の人で縁起物の商品を作った方がいて、御利益も商品に加えたいと、会社の倉庫に神主さんをお呼びして、商品のご祈祷をしてもらったのだそうです。どうやら、タカラトミーグループというのは、面白いアイデアの実現のためには、労力を惜しまず真面目に実行していくという精神にあふれている会社でもあるみたいです。平林さんのような方が生まれるには、やはり社風も重要なのでしょう。
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