男のこだわりグッズ

紙にこだわるコクヨが挑む高級筆記具「WPシリーズ」!かつてない書き味とインクの“誕生秘話”を聞いた

コクヨがMakuakeでの予約販売を通して8月下旬にお届け、一般販売も予定されている「WPシリーズ」は、樹脂製チップを搭載した「ファインライター」と、ゲルインクより粘度が低い水性染料インクを使った「ローラーボール」の2種類がラインアップされています。どちらも一般的なボールペンやサインペンとは少し違った個性を持つ製品です。その魅力と開発経緯をコクヨさんにお聞きしてきました。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド

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コクヨ「WPシリーズ」。左が「ファインライター」、右が「ローラーボール」。軸色は、どちらもブラックとシルバーの2色。インク色はブルーブラックが用意されている。価格は各4400円(税込)

コクヨといえば、文具の大手メーカーなのだけど、あまり筆記具のメーカーという印象はありません。実は以前には、筆者が未だに愛用している秋田道夫さんデザインの「トライストラムス ボールペン」や、軸、リフィル、グリップを選んで自分好みの1本が作れる「エラベルノ」などの良い製品もありました。現行商品にも「マークタス」や「鉛筆シャープ」などのヒット商品があります。

しかし、高級筆記具のジャンルでは、トライストラムスの製品以外、あまり目立った製品はありませんでした。

今回、クラウドファンディングを使って発表された「WPシリーズ」は、コクヨが満を持して発売する高級筆記具ということになりそうです。樹脂製のペン先による“新しいサインペン”ともいえる「ファインライター」と、水性ボールペン「ローラーボール」の2種類の筆記具は、どちらも、「書く」ときの体験にフィーチャーした製品となっています。

今や、さまざまな高価格筆記具が登場し、ヒットもしている中、「WPシリーズ」にコクヨがどのように取り組み、どういう製品に仕上げたのか、開発を担当したグローバルステーショナリー事業本部 プロモーション推進部の粕谷高太郎さん、ものづくり第3本部の土岐一貴さんにお話をうかがいました。
 

コクヨ×サクラクレパスの協業が生んだ「ファインライター」

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コクヨ「WPシリーズ ファインライター」4400円(税込)。軸色は画像のブラックの他にシルバーがある

「コクヨは紙に強いメーカーなので、紙と筆記具の組み合わせで新しい体験を提供できるのではないかというのがスタートでした。そのときに、他の企業さんとの協業という話も持ち上がりました」と粕谷さん。「ファインライター」のパッケージを見てみると、確かに「コラボレーション・ウィズ・サクラクレパス」の文字がある。

「同じ大阪にある文具メーカーで、得意分野が違うということもあって、元々、サクラクレパスさんとは仲が良いんです。そして、水性ゲルインクを最初に作ったメーカーとして、良い筆記具をたくさん作られています。なかでも、水性ゲルの『ボールサイン』、油性マーカーの『マイネーム』、水性ペンの『ピグマ』は、メーカーを代表する製品です」と土岐さん。

「その中で、コクヨとしては、どちらかというと画材で使われているような水性ペンを、普通に書く筆記具として作ってみたいと考えたんです。それに、万年筆的な高級筆記具を作りたいと考えていたところだったので、インクタンクから樹脂芯の隙間を通ってインクが伝わる構造が、万年筆に似ているのも決め手になりました。これで、樹脂芯の材質やインクの出量を調整すれば、万年筆のような滑らかな書き味を作れるのではないかという仮説のもと、ファインライターの開発を進めたんです」と開発のきっかけを教えてくれました。
 

画材のイメージがある樹脂製チップのペンを筆記具に

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「ファインライター」のペン先は、樹脂製のチップになっている。チップには細かくスリットが入っていて、そこにインクが浸透している

樹脂製チップのペンは、サインペン、マーカーペン、ミリペンといった呼称が一般的ですが、今回は「ファインライター」という名前で発売されます。この名前は、少し前、「ペルパネプ」シリーズで発売された樹脂芯のペンと同じ名前ですが、実は、開発も命名も、こちらの「WPシリーズ」の方が先だったそうです。

「最初は“プラペン”と呼んでいました。プラスチックのペン先ですから。でも、それではカッコ悪いし、高級筆記具に見えませんよね。ドローイングペンとかミリペンも、画材っぽくなるので違うかなと思って、調べてみたら、ヨーロッパの方では、この手のペンのことをファインライナーと呼ぶらしいということが分かりました。とはいえ、その呼称は調べないと分からないくらい、日本でも海外でも、あまり浸透していないようでした。そこで、コクヨとして普段書きにも使える新しいカテゴリーとして商品を提供したいという思いもあって、ライン(Line)=線ではなく、ライト(Write)=書くという言葉に変えて、ファインライターと名付けました」と粕谷さん。

名前ひとつとっても、さまざまなこだわりと事情が絡んでいたというお話でしたが、結果的に、ファインライターというのは、分かりやすく商品を表現していると思いました。
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キャップは後ろに付けないで書く方がバランスが良く、軽い書き味をより楽しめると思った。グリップも持ちやすく、ペルパネプの「TSURU TSURU」と組み合わせたときの、ほとんど筆圧不要で書ける感じはクセになる

「インクの配合はサクラクレパスさんに協力いただき、製品企画やディレクション、本体の設計はコクヨが行いました」と土岐さん。

実際に、書いてみたところ、確かに滑らかなのですが、よくある筆記具の書き味の表現としての「滑らか」とは少し違う、ボールペンよりも万年筆に近い、スルスルと紙の上を抵抗無く走っていく感じなのです。筆記具としての方向が、パーカーの「インジェニュイティ」に近いせいか、書き味もよく似ています。

ただ、それよりももう少し硬質な感触があって、その柔らかさの中にあるシャープさが個人的には好みです。サインペンにありがちな、筆記時に感じる「キュッ」というような摩擦感がほとんど無いのも、この製品に使われているチップ(ペン先)が良くできている証拠ではないかと感じます。
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「ファインライター」での筆記例。

リフィルも550円(税込)するのですが、それだけの技術とアイデアが込められていると感じます。

また、こういうリフィルは、最初から、3000円とか5000円クラスの筆記具を作るという企画からでなければ生まれないのでしょう。大昔の高級ボールペンは、それ専用のリフィルが作られるということがほとんど無かったことを考えると、メーカーやユーザーの「書き味」へのリテラシーがとても向上していると感じます。

続いて、「ローラーボール」について、お話を伺いました。

>次ページ:スラスラ書けてヌルヌル感が味わえる「ローラーボール」
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