食中毒を引き起こす主な細菌・ウイルス・寄生虫一覧
食中毒の原因はさまざま……しっかり加熱しても危険な細菌もあります
■食中毒を引き起こす主な細菌
- サルモネラ
- カンピロバクター
- 腸炎ビブリオ
- 腸管出血性大腸菌(O157、O111など)
- 黄色ブドウ球菌
- ウェルシュ菌
- セレウス菌
- ボツリヌス菌
- リステリア・モノサイトゲネス
- エルシニア・エンテロコリチカ
- ノロウイルス
- アニサキス
- クドア
- ザルコシスティス・フェアリー
食中毒予防の3原則は「つけない」「ふやさない」「やっつける」
上記の食中毒の原因となる菌やウイルスなどは、時間とともに数が増えることで食中毒症状を引き起こします。そのため、食中毒の原因となる菌やウイルスを「つけない」「ふやさない」「やっつける」の3つが「食中毒予防の3原則」とされています。「つけない」は文字通り、食品に食中毒菌をつけないようにすること。例えば、サルモネラ菌は鶏の体内に存在することから、鶏卵の殻に付着している可能性が高いことで知られています。そのため、鶏卵を割った手を洗わずに別の食品を触った場合、別の食品にサルモネラ菌を付着させてしまうリスクが高くなります。
他にも、黄色ブドウ球菌は人間の皮膚にも存在していることが知られていますので、顔などを触った後、手を洗わずに食品を触った場合に黄色ブドウ球菌を付着させてしまうリスクが高くなるといった具合です。
「ふやさない」は、食品を保存する時間が長くなればなるほどに、食中毒菌が増殖するタイミングが長くなります。そのため、調理後はできるだけすぐに食べることがオススメとされるのです。
最後の「やっつける」は、加熱調理がよく知られています。加熱することで食中毒菌やウイルス、寄生虫などが死滅することから、しっかり加熱調理をして食べようと言われるのです。
例えば、食中毒例の多い、寄生虫のアニサキスは、生サバなどの体内に存在しています。酢締めなどでは死滅しませんが、加熱処理をすれば死滅します。また、肉や魚などに多いとされるカンピロバクターもしっかり加熱すれば死滅します。
加熱処理しても油断禁物!「芽胞」を作るセレウス菌、ウェルシュ菌
食中毒予防の3原則を守れば、かなりの食中毒を予防することができます。しかし、残念ながらあらゆる菌やウイルスに対して、完璧な方法というわけではありません。実は、食中毒菌の中のセレウス菌やウェルシュ菌などは、「芽胞」といわれる、卵のようなものを作ります。芽胞自体は、人間の体内に入っても問題を起こすことはありませんが、熱に強いため、加熱した後も生き残ります。芽胞を作る食中毒菌は、加熱処理した後も、しばらくすると芽胞が発芽します。加熱処理後に、再び食中毒菌が増えてしまうのです。
シチューやカレーなど、「作りたてよりも翌日のほうが味がなじんでおいしい」といわれるメニューもありますが、味が馴染んでも、体調を崩してしまっては意味がありません。前日に煮込んだカレーやシチューなどは、食べる直前に必ずしっかりと再加熱してください。
梅雨時や夏だけでなく、冬に危険な食中毒も……特徴を知って正しい対策を
また、食中毒というと食べ物が腐りやすいような蒸し暑いシーズンや夏のものと思っている人が多いかもしれませんが、季節を問わず注意が必要です。例えばノロウイルスによる食中毒は、主にカキなどの二枚貝を加熱不十分な状態で食べて発症することが多いですが、夏よりも冬に多い食中毒です。ノロウイルスは、他の食中毒菌などよりも少ない数で発症しますので、食中毒予防の3原則のうち「ふやさない」の手段が使えません。「つけない」か「やっつける」ことでしか、予防ができないということです。コントロールの難しさから、給食現場では「夏の食中毒よりも冬の食中毒のほうが怖い」といわれることもあります。給食業務に従事をしている人の中には、「カキは加熱処理をしたものも食べない」と徹底する人もいるほどです(私が知る範囲だと「加熱処理をしてあればカキを食べる」という人のほうが少ないです)。
一般の方はそこまで徹底しなくてもいいとは思いますが、カキなどの二枚貝を食べるときには、しっかりと加熱処理することが大切です。
食中毒にはさまざまな原因があり、それぞれに特性が違うことを知り、上手に予防しながら季節ごとの食事を楽しんでください。
■参考
- 食中毒を起こす細菌・ウイルス一覧(株式会社町田予防衛生研究所)
- 食中毒をおこす細菌・ウイルス・寄生虫図鑑(農林水産省)