日本の平均賃金は世界各国と比べてどのくらい低い?
ユニクロやGUなどを運営するファーストリテイリンググループが、2023年3月から、国内の従業員およそ8400人の年収を、最大40%ほど引き上げると発表しました(2023年1月11日付)。目的は、世界水準での競争力を強化するためだと説明されていますが、そんなに日本の賃金水準は低いのでしょうか?実は、日本の平均賃金は世界各国と比べてとても低い水準にあるのです。そのような現状を踏まえ、ファーストリテイリンググループでは優秀な人材を確保するため、このような方針を発表したと考えられます。
では、実際に日本の平均賃金はどのくらい低いのか、具体的な数値を見ていきましょう。 画像のグラフは、OECDに加盟する全34加盟国の平均賃金と、OECD加盟国の平均賃金をまとめたものです(USドルベース換算)。これを見ると日本は、2021年は34カ国中で24位、OECD平均を大きく下回っていることになります。また、G7加盟国(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ/議長国順)に絞れば、最下位になります。
その差は、例えばアメリカの平均賃金は74,738ドルであるのに対し、日本は39,711ドル。つまり、アメリカの平均賃金は日本の1.8倍以上もあることになります。また、隣国韓国の平均賃金は42,747ドルであり、韓国の平均賃金も日本よりも約8%高いということになります。このように、日本の賃金はOECD加盟国の中で見ても、低い水準にあります。
昔から日本の平均賃金は低いのか
では、日本の賃金水準は昔から低かったのでしょうか? 次のグラフは、1990年のOECD加盟国の平均賃金のグラフです。 これを見ると、日本の平均賃金は11位とそこまで低くないことが分かります。また、OECD加盟国の平均と比べてもそこまで差はありません。しかしながら、その後、OECD加盟国内で日本の平均賃金は2000年18位、2010年21位、2015年23位、2021年24位と徐々に下がっていっています。つまり、日本の賃金が各国と比べて、大きく伸び悩んでいることが分かります。
伸び悩む日本の平均賃金……
では、どのくらい日本の賃金は伸びていないのでしょうか? グラフは、日本とアメリカ、OECD加盟国の1990年から最近までの平均賃金の推移を示しています。このグラフが示すように、OECD加盟国の平均賃金が上昇しているのに対し、日本の賃金は約30年間ほぼ横ばいとなっています。具体的にいえば、1990年の日本の平均賃金が37,370ドルであるのに対し、2021年の日本の平均賃金は39,711ドルほど。つまり、1990年の賃金に比べて、約6%しか増加していません。それに比べて、2021年の平均賃金がOECD加盟国1位の水準であったアメリカの1990年の平均賃金は48,789ドル。2021年の平均賃金は74,738ドルなので、この30年ほどで約1.5倍に増加しているということになります。このように、各国の数値と比較してみても、日本の平均賃金は長年大きくは変わっていないことが分かります。
世界各国と同様、日本でも物価上昇が続いています。しかし、日本では物価上昇のスピードに賃金上昇が追いついておらず、実質賃金はどんどん少なくなっているのが現状です。
そんな中で、ファーストリテイリンググループの大規模な賃上げのニュースが入ってきました。また、経団連は2023年の春季労使交渉の経営側指針の中で、物価動向を重視し、賃金引上げへの積極的な対応は「企業の社会的な責務」として、例年より前向きに賃金引上げを呼びかけています。
このような流れに乗って、大企業だけではなく、日本の約9割以上を占める中小企業でもこの春、賃上げがなされることを期待したいと思います。
(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)