食生活・栄養知識

おいしいさつまいもの選び方…「黒い汚れ付きが甘い」はウソ

【管理栄養士が解説】甘いさつまいもの見分け方を知っていますか? 秋に旬を迎え、ビタミンや食物繊維だけでなく、アントシアニンやヤラピンなどのポリフェノールを含むさつまいも。皮に黒い汚れがついているものは蜜が多くおいしい証拠という説は、残念ながら誤りです。さつまいもの栄養価と、おいしいさつまいもの選び方をご紹介します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

さつまいもの旬と栄養……ビタミン豊富な高エネルギー食材

おいしいさつまいもの選び方

蜜が多いほど甘い? 皮に黒い汚れがついているものがおいしい? 上手なさつまいもの選び方のポイントとは

秋になるとおいしくなる「さつまいも」。保育園や小学校の芋ほり行事などで、さつまいもを掘った思い出がある人も多いのではないでしょうか。また、この時期に限らず、栄養学科の学生さんたちに献立作成をしてもらっても、かなりの高率でさつまいもが食材として使われています。「みんなさつまいもが好きなんだな」と思います。
 
そんなさつまいもは、9月から翌年の3月くらいまで出荷量が多いのですが、ピークは10月。出荷量が翌年まで維持できるのは、保存性が高いから。保存したさつまいもは、水分が抜けて甘味が強くなっているものも多いようです。冬まで美味しくいただけるなんて、優秀な食品ですね。
 
さつまいもの栄養で注目したいのは、ビタミン類です。焼き芋1本分(200g)でビタミンE(3.2mg)、ビタミンB6(0.56mg)、葉酸(98mg)、パントテン酸(1.92mg)、ビタミンC(58mg)が含まれています。その他、食物繊維も割合としては高くないものの、たくさんの量を一度に食することができるため、効率よく摂取できます(焼き芋1本で2.3g)。このようにおいしくて体に良いさつまいもですが、糖分も多い(29.2g)ため、エネルギーが高く(264kcal)食べすぎには注意といったところかもしれません。

また、さつまいもというと、鮮やかな皮の赤色を思い出す人も多いと思います。この赤色は、ポリフェノールの一種である「アントシアニン」という色素の色で、抗酸化作用があるとされている成分です。
 

さつまいもに含まれる注目の栄養素……「ヤラピン」とは

そしてもう1つ、最近脚光を浴びているのは、さつまいもから染み出している黒い汁のようなもの。実はこれもポリフェノールの一種で、蜜ではありません。さつまいもを切った際に白い液体が染み出してくるのを見たことがある人もいると思いますが、白い液体は「ヤラピン(ヤッパ樹脂)」という物質です。このヤラピンが空気に触れて、皮に多く含まれているポリフェノールである「クロロゲン酸」と反応し黒くなったものがあの皮の黒い液体の正体です。

さつまいもの皮に黒い汁や汚れがついているほど、蜜が多くて甘いと考える人もいるようですが、ポリフェノールには味はありませんので、残念ながら、味の良し悪しを判断することはできません。

その代わり、ヤラピンは緩下剤(いわゆる下剤ですね)として知られています。さつまいもの便秘解消効果は、食物繊維だけではないのですね。
 

おいしいさつまいもの選び方……皮の色・傷や黒ずみの有無・ひげや根の量

味に最も影響を与えるのは「品種」だといわれています。さつまいもには「安納いも」「シルクスイート」「紅あずま」「紅はるか」「鳴門金時」「こがねせんがん」などさまざまな品種があります。それぞれに味に特徴がありますので、選べるのであれば、品種を選ぶことが最優先です。そのうえで、皮の色が鮮やかで傷や黒ずみがなく、ひげや根が少ないものを選びましょう。

「甘い」と噂の黒い変色は、傷がついている証拠になりますので、選ばないほうが無難。芽が出ているものも、古い証拠ですから選んではいけません。

さつまいもは、生鮮食品ではありますが、自宅で新聞紙に包んで涼しい場所に保管すれば、比較的長持ちします。ただし、冷やしすぎると甘味が落ちてしまいますので、冷蔵庫に入れて保存する際には注意してください。
 
おいしいさつまいもを上手に選んで、おいしく食べて秋を楽しんでください。

■参考 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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