マネーtips!お金持ちになるための365日

結婚10年、夫の不倫が発覚。慰謝料も養育費もいらないと見栄を切ったものの……

お金のちょっとしたすれ違いが縁の切れ目にもなれば、逆に人間関係のこじれがお金の問題に発展することも……。今回は、お金はいらないと離婚に踏み切ったものの、コロナ禍を経て、その判断に後悔している女性のお話――。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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お金のちょっとしたすれ違いが縁の切れ目にもなれば、逆に人間関係のこじれがお金の問題に発展することも……。男女の人間関係に関する著書も多いフリーライター、亀山早苗さんが、お金にまつわる複雑な人間模様のお話をお届けします。

令和元(2019)年の人口動態統計によると、この年に離婚した夫婦は20万8496組。離婚に至った理由がわかるデータとしては、司法統計の「婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別」があります。これによると、妻から夫へ離婚を申立てた動機として、「離婚性格が合わない」が39.2%と一番多く、異性関係が原因となったものも15.4%あります。
妻からの理由

妻の離婚申立動機推移

※令和元年の離婚関係事件の申立ては男性からが1万6502件、女性からが4万4040件となっており、離婚件数のすべての理由を把握することはできません
※婚姻関係事件には、乙類以外の調停事件に分類される離婚等調停事件、乙類事件に分類される婚姻費用分担事件、離婚後の財産分与事件、請求すべき案分割合に関する処分(離婚後の年金分割)事件等が含まれます
※申立て件数1件につき、3つまで動機を選択できるため、総計は100%を超えます

2020年は、「コロナ離婚」という言葉が騒がれていましたが、実際にはコロナ禍にあった2020年1月から9月までの離婚件数は前年を下回っており、コロナによる経済事情などで踏みとどまっている夫婦もいるのかもしれません。それだけ婚姻関係を解消し、一人で生計を立てていく決断というのは重いものなのでしょう。

今回は、お金はいらないと離婚に踏み切ったものの、コロナ禍を経て、その判断に後悔している女性のお話――。

* * *

夫が他の女性と関係をもっていた。それがわかったとき、多くの妻は怒り、悲しみ、絶望する。もうこの人と同じ部屋の空気さえ吸いたくないと家を出ていくケースもあるだろう。だが、どんなに感情的になったとしても、子どもがいるなら、よほど自分の収入が高いとき以外は養育費を請求したほうがいい。
 

夫の不倫にはらわたが煮えくりかえって

お金はいらないと離婚に踏み切ったが…

もう1日もこの家にはいたくない。その一心で……

エミコさん(42歳)の夫が、仕事で知り合った女性と3年にわたって関係をもっていたことがわかったのは彼女が40歳のとき。今から2年前だ。当時、結婚して10年、一人娘は7歳になっていた。

「夫のことは全面的に信じていました。仕事が忙しい人だけど、いつも私と娘のことを第一に考えてくれていると思っていたんです」

共働きだったので、エミコさんが残業のときはよく夫が早く帰って娘に食事をさせていた。だがあるとき、残業必至だった日に、たまたま早く帰れたことがある。

「娘はもう寝ている時間でしたが、それでも早く寝顔を見たくて帰ったんです。そうしたら玄関に見慣れない女性ものの靴がある。嫌な予感がしました」

リビングに入っていくと、夫と若い女性が肩を寄せ合って飲んでいた。何をしているのと声をかけたら二人は飛び上がるようにしてエミコさんを見たという。

「それまで二人だけの世界に入り込んでいたのがわかりました。マンションですから、リビングのすぐ手前の部屋では娘が寝ているんです。その自宅に呼ぶほうも呼ぶほうだけど、来るほうも来るほうだと完全に頭に血が上ってしまいました」

つかつかと寄って行き、ワインのボトルをつかんで振り上げた。彼女を殴るつもりだった。ところが夫に阻止された。

「夫は彼女の味方なんだ。そう思いました。怒りと絶望しかなかった」

仕事も家庭も全力でがんばってきたエミコさんの中で、何かが音を立てて切れた。
 

夫は「やり直したい」と言ったけれど

夫は彼女を促して玄関へ。ぼそぼそと声が聞こえたのをエミコさんは覚えている。おそらく彼女に謝ってタクシー代でも渡しているのだろうと、ますます全身の血が逆流するような思いだった。

「玄関のドアを閉める音がして夫がリビングに入ってきたのと、娘が起きてきたのが同時でした。あと一歩遅かったら、娘が見てしまうところだった。トイレにいった娘が再度寝るのを見届けて、夫とリビングで向き合いました」

夫はひたすら謝っていた。たまたま仕事の書類を届けてもらったから、お茶でもと誘ってしまっただけだと言い訳もしたが、エミコさんは信用しなかった。

「じゃあ、携帯を見せてと夫に詰め寄ったんです。夫はうろたえていました。今すぐ見せろと低い声で言いました。もちろん、私、ふだんはそんな言葉遣いはしませんが、あのときはちょっとおかしくなっていた」

鬼気迫る妻の様子に観念したのだろう、夫は携帯を渡した。そこには彼女と関係をもっている証拠がこれでもかと詰まっていた。

「さっきまでソファで何をしていたのか言ってみろ、と詰問したような気がします。黙っている夫の頬を張り、娘の部屋へ行きました。朝方、やっととろとろとまどろんで、会社に休むと連絡をしてアパートを探しに不動産屋へ。もう1日もこの家にはいたくない。その一心でした」

住居を決め、離婚届を書いて、その週末、彼女は娘と二人で引っ越した。夫からのどんな声にも振り向こうとはしなかった。

「何もいらない。とにかく離婚して。願いはそれだけだったんです」

自分も働いているからなんとかなる。プライドを捨ててまで夫から金などもらいたくない。エミコさんはそう思っていた。

「夫はときどき学校近くで待ち伏せして娘に会おうとしていたようですが、それもやめてくれと連絡しました」
 

コロナ禍で残業が減り……少しの後悔が

ただ、今になって目算が狂ってきているとエミコさんは言う。

「コロナ禍で私の残業が減り、収入が目減りしているんです。あげく私が心身ともに調子を崩して1カ月ほど休職した時期もあって。今は通常通りに出勤していますが、先日も健康診断でひっかかってしまった。自分がもしかしたら働けなくなるかもしれない、それだったら財産分与や慰謝料、養育費はもらっておくべきだったと思っています」

今からでも夫は話し合いに応じるはずだと思うと、エミコさんは言う。だが、「何もいらない」と見栄を切ってしまった以上、夫には連絡できないと感じている。

夫の不倫などが原因で、「とにかく顔を見たくない」と金銭を介在させずに離婚に踏み切る女性は少なくない。だが、離婚を考えたら、どんなに屈辱感を覚えていても、「まずはお金をきちんととる」ことを優先させたほうがいい。一時の怒りより、末永い生活のほうが大事なのだから。

「知り合いが弁護士を紹介してくれるというので、頼もうかと思っています。夫は娘と会う権利を主張してくるでしょうけど、落ち着いて考えれば、娘にとってはたった一人の父親ですから彼女が望むなら会わせるのも大事かなと。短気は損気って、昔、よく祖母に言われたのを思い出しています」

エミコさんはそう言って、照れたような困ったような曖昧な笑みを浮かべた。

教えてくれたのは……
亀山早苗

 


亀山 早苗さん

フリーライター。明治大学文学部演劇学専攻卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、講談、浪曲、歌舞伎、オペラなど古典芸能鑑賞。All About 恋愛ガイド。
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