植物や動物が描かれた美しいデザイン、人肌に近いとされている革の手触りが唯一無二の工芸品は一生使える大人の小物です。こちらでは、十三代にわたって印伝を作り続けている「印傳屋」のアイテムをイチオシします。
鹿革と漆で作られる甲州印伝
印伝は正しくは「甲州印伝」と呼ばれ、17世紀の江戸時代にオランダの東インド会社より伝わったインド伝来の革が起源とされています(※諸説あり)。その説を聞くとなるほど、日本ならではのモチーフを描きながらも、その配置や緻密な模様はインド綿生地「インド更紗」を彷彿とさせます。「印傳屋」のアイテムはひとつひとつが熟練の職人さんによる手作り。鹿革と漆をていねいになめして作られているというだけあって、軽いのに丈夫。日常的に使っても少しも傷まないのが流石です。
バリエーション豊かなデザインパターン
印伝の最大の魅力は、何といってもその独特なデザインです。日本の自然や四季のモチーフをインド更紗のようなパターンに配置していくと、この唯一無二の模様ができあがります。小桜や青海波(せいがいは)などの、日本人なら一度は目にしたことがある伝統的な模様から、トンボ、小桜菖蒲、瓢箪など思わず「可愛い!」と手に取りたくなるものまで、さまざまなパターンが揃っています。
そして深紅や紺をベースにした和風の落ち着いたカラートーンも、「大人の小物」という風格を演出しているポイントです。
フランスにもファン多数がいる理由とは?
フランスで「印傳屋」の小物を持っていると、ときどき気付く人がいます。「どうしてフランス人が日本の印伝を知っているの?」と驚きますが、実は印伝にはフランスのある物との共通点があるのです。それは、南フランスのプロヴァンス地方に伝わるプロヴァンス生地です。赤や黄色のビビッドな背景に花や昆虫が描かれている柄、見たことありませんか? このプロヴァンス生地も、印伝と同様に東インド会社から16世紀にフランスに伝わったインド更紗が起源なのです。
色のトーンや素材は違うものの、緻密な配置や模様がどことなく似てい両者。こんなこともあってか、フランス人のなかにも印伝のファンが多いのです。海外ブランド品も良いですが、「違いのわかる大人」が持つ日本が誇る上質な印伝の小物。ひとつは持っていたいものです。
DATA
印傳屋
※山梨県甲府市のほか、青山、心斎橋、名古屋に直営店を展開しています。