自分の老後をイメージしてみる
50代で老後をイメージするなんて、まだ早いと思うかもしれません。しかし、あと10年も経たないうちに定年を迎え、そのあたりから長い老後が始まるのですから、イメージしてみるのに早過ぎることはありません。シングルの人は自分1人の老後を、パートナーがいる人はお互いの老後をどうしたいかを話し合ってすり合わせておきましょう。特に、夫婦で老後の過ごし方の希望に深い隔たりがあると、熟年離婚に発展し、お金持ち老後どころではなくなりますから。公的年金は夫婦2人分でも、生活をしていくのは厳しいので熟年離婚は避けたいもの。シングルの人は、熟年結婚を考えてもいいかもしれません。
家計を見直してダウンサイジングをスタートする
50代は子どもにお金がかかる時期でもあり、家計サイズが大きくなりがちです。今の段階でムダな支出はないか、夫婦で話し合ってみてください。住居費、食費・外食費、生命保険料、車関係費、通信費、交際費、レジャー費、子どもの教育費など、聖域を設けず見直し、すぐに減らせそうな費目は減らす工夫をしましょう。家計のダウンサイジングは50代からスタートさせておきたいからです。すぐに減らせない費目は時間をかけて、どうしても減らしたくない費目はムリに減らさなくてもいいでしょう。
老後資金の貯蓄法を考える
50代ともなれば、積立貯蓄はしているでしょうし、多少はまとまった金額の貯蓄もあるはず。その貯蓄法を考え直してみましょう。キーワードは、老後資金を少しでも増やすために「国の節税制度を活用する」です。まず、積立は、会社が制度を導入していれば財形貯蓄を利用します。制度を導入していない、財形貯蓄以外の商品も利用したい、投資にもチャレンジしてみたい人は、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」で積み立てることも考えて。iDeCoは、老後資金を作るための公的年金制度の1つ。自分で運用する商品を選び、その運用成果で将来の年金額が変動する投資型の年金です。積立できるのは60歳までなので、50代は積立できる期間は短いですが、掛金の拠出時、運用中、受取時の3段階の節税メリットを利用しない手はありません。iDeCoは20歳以上60歳未満の人なら、ほとんどの人が加入できるので、公的年金に上乗せするために夫婦で積み立てるといいでしょう。
まとまった金額の貯蓄は、どこに預けても利息はほぼつかないので、普通預金に預けっぱなしではありませんか? その貯蓄の一部を「NISA(少額投資非課税制度)」で投資してみてはいかがでしょう。NISAは、年120万円まで5年の間、配当金や売買益などに税金がかからない制度です。
そして、10年以内に退職金を受け取ることになるでしょうから、その使いみちや貯蓄・運用方法を考え始めておきましょう。
副業が可能な会社員は副業を考えてみる
今や、本業の給料による積立と退職金では、老後資金が足りないくらい寿命が延びています。自分はそんなに長生きしないと思うかもしれませんが、長生きしてしまった場合に、公的年金だけでは生活できない、けれど、取り崩す貯蓄が枯渇してしまったという最悪の事態は避けたいもの。そこで、貯蓄を増やす手立ての1つとして、副業はできないかを検討してみましょう。最近では、国も会社員の副業を推進しており、副業禁止規定を見直す会社が増えています。勤めている会社の就業規則を確認し、副業が禁止されていなかったら、本業に差し支えない程度で副業をしてはいかがでしょう。もちろん、副業で得た収入の多くの部分は老後資金の貯蓄に回して。また、副業は、再雇用が終わった後の本業にするつもりで選ぶといいでしょう。
老後をなくす、短くする準備をする
国は、公的年金の不足分をカバーするために、会社員にできるだけ長く働いてもらおうとしています。定年の廃止や延長、定年制を維持する場合でも希望者には65歳や70歳まで再雇用することを会社に義務づけています。60歳の定年時に、仕事を続ける気力がなくなってリタイアしてしまう人もいるようですが、60歳以降の30~40年もの間をどう過ごすつもりなのでしょう。やはり、再雇用で働ける年齢まで働き、その後も何らかの形で生涯現役のつもりで仕事を続けましょう。老後をなくす、短くするのは、自分自身で決められるのです。
50代の今、やりたくてもやれないでいることを、再雇用が終わったあとに仕事にすることを考えてみましょう。そして、再雇用が終わったときに、心身ともにボロボロで働けないなんてことがないよう、今から体力・気力を養ってください。
執筆/小川千尋
1994年FP資格取得。FP資格と編集の技術を融合させ、お金の貯め方、保険や老後の情報を発信、マネー誌を中心とした編集・執筆に従事。「わかりにくい難しいことをわかりやすくひもとく」がモットー。