「イケムラレイコ  土と星 Our Plane」展

「イケムラレイコ  土と星 Our Planet」展の様子


毎回、注目すべきアーティストの展覧会を開催している国立新美術館。今回、2019年1月18日(金)から4月1日(月)まで、「イケムラレイコ  土と星 Our Planet」展が開催されるとあって、実際に作品を観てきました。

70年代にヨーロッパで活動を始めた、イケムラレイコ氏の繊細かつ力強い約210点の作品を16のインスタレーションとして紹介しており、まさに圧巻でした。

そこで私が感じたのは、現代アートに対しての未来志向でした。ご本人も大きな意気込みを語り、この春大注目の展覧会だと思います。

   

ヨーロッパで高く評価されているイケムラレイコって?

   
「イケムラレイコ  土と星 Our Plane」展

現代美術家のイケムラレイコ氏


イケムラ氏は1970年代に美術を学ぶためスペインに渡り、スイスで本格的に現代美術家としての活動を始めました。そして、1980年代前半にドイツのケルンに移り、現在ではベルリンを拠点に制作を続けています。

絵画、彫刻、ドローイング、水彩、版画、写真と、多岐にわたるメディアを扱いながら、国内外で精力的に活動を続け、2009年にアウグスト・マッケ賞を受賞、2014年にはケルン・ファインアート賞を受賞するなど、ヨーロッパを中心に高く評価されています。

イケムラ氏が海外に渡った、1980年代の絵画を席巻していたのは、荒々しい筆づかいや激しい色の対比を特徴とする手法でした。その流れのなかで、女性であること、そして異邦人であることの困難に抵抗するかのような荒々しい絵画や、多様な線で構成されたユーモラスで人間味あふれるドローイングなど、実験的な試みに没頭したと言います。

しかし、その経験を経て、1990年代以降に現われてきたのは、小さな動物や無垢な少女たち、母と子、木々や山と一体化した人物、誕生と死を含みこむ神話的な原始の風景などでした。

こうしたモチーフを扱う一方で、近年イケムラ氏は社会に向き合う作品を数多く発表しています。寡黙でありつつ、自身の内に深く入り込んでいく内省的な作品世界は、まさに唯一無二です。

 

なぜ今、イケムラレイコ展を見る必要があるのか

 
「イケムラレイコ  土と星 Our Plane」展

「うさぎ観音」。作品と映像、朗読を組み合わせた展示空間


今回の展覧会は、2~3年ほど前に国立新美術館サイドからイケムラ氏にお話があり、1年ほど前から準備してきたと言います。プレス内覧会にはイケムラ氏も登場したのですが、感極まって涙する場面も見られました。それだけ、本展覧会にかける意気込みが大きいのでしょう。

また、2011年の東日本大震災以降から、創作に対する心構えに大きな変化があったと言います。私が感じたのは、イケムラ氏の作家としての過去40年間の活動の集大成というより、現代アートに対しての未来志向でした。日本とヨーロッパという異なった土壌で鋭敏な感覚を磨いてきたイケムラ氏だからこそ見出せた、啓示に満ちた作品が集まっています。

イケムラ氏の作品には、陶器を使ったものも多く見られるのですが、80年代の終わりごろから陶器の作品を発表し始めたそうです。

80年代にはまだ陶器を美術作品に使うことは稀で、イケムラ氏が最初に陶器を作品として発表した先駆者だと言われています。有機的要素と無機的要素が融合しており、一見の価値ありです。

 
「イケムラレイコ  土と星 Our Plane」展

「うねりの春」。同展のハイライトとなる大型絵画が並ぶ
 

また、本展覧会でクライマックスを飾るのは、新作の大型絵画「うねりの春」です。人や動物、自然が形を変えながら連鎖するイメージのなかで、生命の不思議さを感じられる作品となっています。

イケムラ氏自身もこの作品によって新しい段階に入ったと感じていると言います。ぜひ、会場に足を運んで、イケムラ氏の40年間の創作の先に存在する、神話的な風景を体感してみてください。

 

DATA
イケムラレイコ  土と星 Our Planet

会期:2019年1月18日~4月1日
会場:国立新美術館
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話:03-5777-8600
開館時間:10:00~18:00(金・土曜~20:00)※入場は開館の30分前まで
休館日:火曜
観覧料:一般/1000円、大学生/500円/高校生・18歳未満:無料
※2019年2月24日(天皇陛下御在位30年記念)は無料観覧日
アクセス:千代田線乃木坂駅6出口直結
 
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