70sスタイルが映えるファクトリーカスタムモデル
ハーレーダビッドソンのモデルラインナップでもとりわけ日本人に高い人気を誇るスポーツスターファミリー。そのニューカマーとして今年2018年3月にデビューしたアイアン1200は、その名にあるとおり排気量1,202ccのVツインエンジンを搭載したバイクで、高く持ち上がったエイプハンドルバーに、レインボーデザインがまばゆいタンクグラフィックとダークなボディカラーが映えるストリートバイクに仕上げられています。スタンダードモデルとしてラインナップされているXL883N アイアン883がベースモデルとなっており、ハーレーダビッドソンが「こんなスタイルはどうだろう」と個性を与えたファクトリーカスタムモデルとして仕上げられています。
コンセプトは「チョッパー&カフェ」。まるで猿が木からぶら下がっている姿に見えることから「エイプハンガー」と呼ばれるハンドルバーに、テールライト一体型ウインカーが組み合わされた無駄のないシルエットが魅力のチョップドリアフェンダーと、「チョップ」(削ぎ落とす)の意味を汲み取ったスタイルを取り入れているアイアン1200。レインボーグラフィックは、当時のビンテージハーレーモデルから踏襲したものです。
さらにレーシーなイメージを高めるビキニカウルにカフェシートと、これまた人気のカスタムスタイルであるカフェレーサーテイストを取り入れてもいます。あえてこの2スタイルをミックスさせるところがハーレーらしいところと言えますね。
足つきを良くするための方法はシート交換
身長174cmの筆者がまたがってみると、ヒザが曲がってのベタ足と足つきは良い方とも思われます。スペックの数値を見比べると、最低地上高140mm / シート高760mmのアイアン883に対して、このアイアン1200は最低地上高140mm / シート高735mmとわずかに下がっている模様。
気になったのが「シートの形状」です。このカフェシート、ちょうどまたがった際に太ももの裏側が当たる部分が角張っており、そのせいで両足がガニ股のように開き気味になってしまいます。足つきの良さは本来 両足が真下にストンと降りていること が大事なので、身長が160cm、もしくはそれ未満の方だとこのシート形状が足つきを阻害する比率を高めます。
こういったシート形状はハーレーのみならず、海外製バイクによく見られる傾向で、海外系パーツメーカーのシートも同様です。ひとえに外国人と日本人の体型や乗り方の違いなのですが、その点を考慮した製品を手がけているのが国産シートメーカー。両足が真下に降りるよう股間部分を細身にし、シートの角をなるべく丸く仕上げています。アイアン1200に合う国産製シートに交換するだけで、足つきは飛躍的にアップするはずです。
これだけ個性が与えられていながら価格はリーズナブル
前述したとおり、チョッパー&カフェレーサーという個性的なキャラクターに仕上げるべくいくつものカスタムパーツを搭載するアイアン1200ですが、その価格は驚くほどリーズナブル。スタンダードモデル・アイアン883と比べるとその違いは歴然で、1,345,500~1,373,500円のアイアン883に対し、アイアン1200は1,366,200~1,395,200円と、わずか数万円の差しかありません。特殊なブレーキホースと加工を要するエイプハンガーへのカスタム(パーツ代込み)だけで10万円近くすることを考えると、パッケージモデルとしての価格でまとめられていることがわかります。
さらに特筆すべきはこのブラックアウトされたエンジンです。「ダークカスタムモデル」としてのエッセンスを与えられていることもあり、プッシュロッド以外の部分すべてがリンクルブラック塗装仕上げとなっています。このエンジンカラーはカスタムコンセプトを一貫する上でも重要な部分で、マフラーやボディカラー、その他のカスタムパーツを取り入れる際にこの「エンジンカラーにどう合わせる?」が重要になってきます。どれだけ一目惚れしたカスタムパーツも、エンジンカラーとミスマッチというだけで、パッと見たときにアンバランスに映ってしまうのです。
その点、このアイアン1200のフルブラック・エボリューションエンジンはどんなデザインも受け入れられるシンプルカラーであるところが利点です。この点を活かしたカスタムイメージがどんどん膨らんできそうです。
やはり気になるシート。燃費アップの秘訣も伝授
混雑の多い東京都内、そして東京~横浜間のハイウェイとさまざまなシチュエーションに持ち込んでの試乗をしてみました。一見するとクセがありそうなエイプハンガー、腕の位置も肩よりちょっと下ぐらいの高さになりますが、これはこれでバランスの取り方次第で操作できる仕組みになっているので、ハンドリングに大きな影響はありません。ただ、こちらも身長が170cm未満の方だと長距離走った際に疲れが出やすくなるように思えます。「比較的街中を走ることが多い」という方向けでもありますね。
足つき性を良くするべく車高を下げているので、道路の大きな窪みやハイウェイの継ぎ目などに遭遇した際の衝撃は、車高が保たれているモデルに比べても大きいものになっています。ツーリング時はそうした衝撃に出くわすシーンが多いので、何度も衝撃を受けていると体への負担が蓄積されて疲れやすくもなるでしょう。改めてストリートバイクとしての遊び方向きと言えるかもしれません。
容量12.5リットルのフューエルタンクにガソリン満タンで走れば、航続距離は150kmほどとまぁまぁなもの。とはいえ、リッター20kmにも及ばず200kmに満たない距離間でガソリンスタンドを探さねばならないバイクだと、ロングツーリングに行くこと自体に勇気がいるものとなります。
ただこれ、アメリカから輸入される際に日本の排ガス規制値にセッティングが変更されている弊害で、その設定を司るマシン内のコンピューター「ECM」のマッピングデータを修正してやれば、リッター20kmに近い燃費にできるのです。これを「インジェクションチューニング」と呼び、オーナーの遊び方に合った吸排気系パーツ(マフラーとエアクリーナー)と組み合わせれば、エンジンの性能をさらに引き出しつつグッドコンディションを維持し続けられるようになるのです。
私自身もスポーツスターオーナーで、愛車にインジェクションチューニングを施していますが、ノーマル時の乗り味とはまるで別物。「これぞハーレーダビッドソン」と感心させられる強烈なパワーライディングを楽しませてくれます。チューニング費用はなかなか良い値段がしますが、価格に見合ったパフォーマンスを手に入れられること間違いなしです。
まとめ | リッターエンジンを積んだストリートバイクとして楽しむ
排気量が1,202ccと、その数値だけ見るとロングツーリング向けとも言えるリッターモデル、アイアン1200。しかしそのスタイルはストリートチョッパーそのもの。どちらかと言えばシティーユース向きのマシンですが、どうせならそのパワフルなエンジンも存分に味わいたい。スタイルと乗り心地は相反する要素でもあるので、ここはオーナーが頭を悩ませながら折り合いをつけねばなりませんが、一方でインジェクションチューニングによるエンジンパフォーマンスアップは燃費も向上させるので、是非とも取り入れたいところ。それによって、遊び方にも変化が出てくるとも思えるので、"ノーマルのもう一歩先"を目指してほしいバイクと言えますね。
[HARLEY-DAVIDSON XL1200NS Iron1200 SPECIFICATIONS]
全長/2200mm
ホイールベース/1515mm
加重時シート高/735mm
車両重量/256kg
エンジン型式/Evolution(空冷)
排気量/1,202cc
フューエルタンク容量/12.5L
フロントタイヤ/190/90 B19 57H
リアタイヤ/150/80 B16 77H
【メーカー希望小売価格】(消費税込/2018年10月現在)
[ビビッドブラック]136万6200円
[トゥイステッドチェリー]139万5200円
[ビリヤードホワイト]139万5200円