誰とビジネスをするか? これこそが華僑の仕事の本質
日本のお金の常識に捉われているうちはお金持ちになれない!?中国、シンガポール、マレーシア、香港などアジア各国・地域を拠点に
ビジネスを展開し、アジアの富裕層を知るジョン・シュウギョウさんが、
これからのグローバル時代にお金持ちになる方法を伝授します!(第1回『日本とアジア各国・地域で違う「お金の考え方」』から続きます)
お金は人間関係そのものである──その真理を中国のビジネスマンたち、いわゆる華僑と呼ばれる人たちとのつき合いで学びました。
よくビジネスで大事なのは人・物・金と言われます。その言葉通り、一番最初に来るのは物でも金でもなく、人です。そのことを彼らはよく認識しています。
「どんなビジネスをするではなく、誰とビジネスをするかが問題だ」
知り合いの中国人がよく話す言葉です。彼らは顔が広い。どんなビジネスであろうと、パートナーにふさわしい人はたくさんいるのです。そのなかで「なぜあなたと仕事をするのか?」、その理由が問題になるのです。
彼らはたんにその仕事で利益を上げることだけが目的ではありません。一緒に仕事をして前向きで創造的で、さらに未来の可能性が広がるような人物と一緒に仕事ができるかどうか? それが彼らの大きな目的でもあります。
ですから本当に信用できる人物かどうか? 一緒にビジネスをしてともに成長し稼ぐことができる人物かどうか? 相手の人間性を見極め、厳選します。「この人物なら大丈夫」、「この人と仕事がしてみたい」と判断したら、それこそ本当に彼らは自分たちの仲間として、一生の付き合いをするのです。
人の紹介で人脈がどんどん広がっていく
私の場合、ある中国人ビジネスパーソンに私の投資の仕方を教えているうちに、彼らの仲間に加えてもらうことができました。私の仕事ぶりや人間性を評価してくれたのだと思います。その彼が仲間を紹介してくれ、紹介してくれた人がまた別の人を紹介してくれる。こうして一気に人脈が広がっていくのですが、いわゆる異業種交流会などで名刺交換をして知り合ったような関係とは全く異なります。それは紹介という形でつねに信頼関係の中で広がっていくものです。
「この人が紹介する人なら間違いない」、そういう担保があるので、紹介されたほうも安心して付き合える。中国系の人たちのつながりは、それこそビジネスライクに損得勘定で結びついたものではありません。長い付き合いの中で培われたお互いの強い信頼関係と協力関係に基づいています。ですから信頼できる人からの紹介ということであれば、もうその時点でウェルカム、家族なのです。
このような、一生ものの強固なつながりの中で交友関係を増やしていき、お互いの専門分野のスキルと知識を共有しながら、ビジネスを広げていくのです。極端な話、一度このつながりの中に入ることができたら、何か大きなヘマや不義理をしてその輪から弾かれない限り、一生仕事ができるのです。
華僑のつながりに入るための絶対条件とは?
ただし、彼らのコミュニティに受け入れられるのは容易ではありません。どんなに仕事ができて、頭脳が優秀だからといって、彼らのお眼鏡に叶うとは限らない。その人柄、全人格が信頼するに値するかどうか? 仲間と呼ぶにふさわしいかどうかが試されるのです。ではそのポイントは何か? それはギブ&テイクならぬ、ギブ&ギブ&ギブの精神です。見返りを求めず、とにかく相手に対して与え続けること。「今度会社を興したいのだけど」と相手が言えば、「それならば私の知り合いで優秀な税理士がいます」とか、「ウェブサイトをたちあげるのだけど」と言えば「じゃあ、私も作ったことがあるから協力するよ」と無償で提案する。
相手が喜ぶこと、助かることを率先して「与える」。だけでなく「与え続ける」のです。それに対して見返りを求めない。与え続けることができる人間に対して、彼らも与え続けようとすることで関係が出来上がる。ビジネスの世界でありながら、ビジネスを越えた領域に入ることができる人物か? それこそが彼らが人を見極めるポイントなのです。
でもビジネスは結局利益がでるかどうかじゃないの? という声が聞こえてきそうです。それは決して間違いとは言いません。ただし、それを前面に出してしまうと、そのコミュニティの中には絶対に入れません。
視野が短期的になっている日本のビジネスパーソンたち
どうも私の目から見て、最近の日本のビジネスパーソンは考え方が短期的になっている気がします。その場その場で損得勘定を考える。異業種交流会なども盛んに行われていますが、本当の意味で人脈を広げるというより、自分の仕事の営業活動の延長で参加している人が少なくありません。私も参加したことがありますが、保険の勧誘員とか、経営コンサルタントが多いでしょう? すぐに結果になることを狙っているわけです。ビジネスは人そのものである。そしてそのつながりがすべてであるということを、私は中国系のビジネスパーソンたちとのつながりから学びました。ただ、一度認められると今度はべったりと言っていいくらい、付き合いが密になります。しょっちゅう連絡が来て、今度はどこどこでパーティがあるとか、こういう人を紹介するとか、昼食を食べようとか、お誘いは半端ありません(笑)。
多少煩わしく感じることはあっても、惚れ込むくらいに親密になり、お互いを尊重しあい一緒に仕事をする。それが長い目で見たとき、目先の損得勘定では決して得ることができない、大きな利益に変わるのです。
★第3回『200円でも価値がなければ払わない!アジアのお金持ちのお金の使い方』に続きます
教えてくれたのは……
ジョン・シュウギョウさん
取材・文/本間大樹