ファミリーいち攻めるスポーツスター
ラバーマウント・スポーツスターでは初となる18インチリアホイールに倒立フロントフォーク、ダブルディスクブレーキングシステムと、2年前の2016年にデビューしたこの「ロードスター」は、どのスポーツスターモデルよりも“攻めている”モデルです。
「ハーレーと言えばクルーザー」というイメージが強いかと思いますが、重量が400kgに及ぶメガツアラー群「ツーリングファミリー」、伝統のリジッド型フレームを継承するバリエーション豊富な「ソフテイルファミリー」と並び、ハーレーのVツインエンジンでスポーツライドを楽しませてくれるモデルがずらり並ぶのがこの「スポーツスターファミリー」なのです。
どちらかと言えばクルーザー色を含んだアイアン883、前後16インチホイールという独特のシルエットが人気を集めるフォーティーエイトといったモデルと比べると、よりスポーツライドなモデルとしての主張が強いこのロードスター。アイアン883と同じミッドコントロールステップというニュートラルな位置ながら、グッと垂れ下がったハンドルバーと18インチホイールの組み合わせにより、やや前かがみなライディングポジションになるのも特徴的。シートにどしっと座る従来のハーレーとはかなりイメージが異なりますね。
ひとくちに「ハンドルバー」といっても、その形状はさまざま。ご覧のように、アップライトな中央と下のハンドルバーに比べ、ロードスターのそれは両サイドが垂れ下がっています。これは「カフェレーサー」と呼ばれるストリートバイクカスタムのスタイルを模したからで、本来ならセパレートになっているカフェレーサースタイルのハンドルを一本もののバーハンドルとして近づけたもの。ロードスターのキャラクターが掴めるディテールと言えるでしょう。
見た目とは裏腹に素直な反応をする優等生バイク
「カッコいいとは思うけど、もっと乗りやすいハーレーがいいなあ」という声が聞こえてきそう。1977年に生み出されたハーレー初のカフェレーサーモデル「XLCR」のオマージュとも言えるこのロードスターですが、クルーザーモデルが並ぶハーレーのイメージとはかけ離れて見えるのは仕方のないことかもしれません。
しかし、一見戦闘的にも見えるこのロードスターですが、実際に乗ってみると全然重ったるくないし、教習所で習ったライディングの基本操作法をきちんと入力してやると、実に素直に反応してくれます。逆に「言い聞かせよう」として押さえつけると逆効果という、まるで生き物のようなバイクです。
倒立フロントフォークにプレミアムライドサスペンションという性能に優れたフットワークを備えていることから、つい手に力が入ってしまって腕力でバイクを曲げようとしてしまいがちですが、そうするとこのロードスターはうまく動作してくれません。そう、「バイクは腕ずくで操作するものではない」という基本に立ち返ることが大切なのです。
教習所で習ったコーナリング時の基本的な操作法とは「しっかり減速して進むべき進行方向に視線を向け、ステップを踏み込んでバイクをバンク(傾ける)させ、適切なルートに乗ったらしっかり加速して駆け抜ける」というもの。ハンドル操作はあくまで「行くべき方向を指し示す」ためのもので、しっかりステップコントロールして傾けてやることが重要。あとはバンクしたバイクが流れるようにコーナーをクリアしていってくれます。その爽快感といったら! バイクに乗る楽しさ、ライディングプレジャーを余すところなく味わわせてくれるモデルと言ってもいい一台です。
一方、他メーカーのスポーツバイクに乗ったことがある方には、やや物足りなさを感じてしまう(かもしれない)ロードスター。「ここがもっとこうなっていればいいのになあ」と思うところが散見するのも事実。
しかしそこには、「武士道」とも形容されるべきハーレーダビッドソンの哲学が潜んでいたのです。
寸止めの美学
例えばこのステップ、実際に跨ってみると外に出っ張りすぎていて、バイクを傾けたときに、思っていた以上に早いタイミングで地面を擦ってしまいます。もう少し短いものでも十分だと思えるのですが、この点をハーレーダビッドソン本社の開発陣に聞いたところ、「わざとこの長さにしているんだ。路面からのインフォメーションを早くするためにね」とのことでした。
つまり、「そこまで無茶な走り方をしなくてもいいだろう?」というハーレーダビッドソンからのメッセージが込められているのです。そう、いわゆる寸止めの美学が内在しています。
そう言われると、スポーツネイキッドと謳っていつつもややスペックが見劣りする前後サスペンションやライディングポジションなどにも合点がいきます。要は“ライダーを頑張らせすぎない設計”であることがロードスターの本質で、極端な言い方をすれば“なんちゃってスポーツバイク”というわけなんですね。
「いや、俺はもっとロードスターで攻めた乗り方がしたい!」という方は、各地で生み出されているロードスター用カスタムパーツで好みのスタイルへとカスタムする方向があります。「スポーツネイキッド」という最初のキャラクターがはっきりしているので、進むべき方向もハーレーらしいスポーツバイクとなるでしょう。高性能パーツと軽量化を図っていけば、想像以上に戦闘的なマシンへと変貌してくれますよ。
まとめ:日本人のライフスタイル向けモデル
あくまでスタートラインな設計のロードスター。そのまま乗っても十分楽しめるし、物足りなくなればカスタムしてもっとソリッドな一台に高められます。ハーレーらしいエッセンスを持ちつつ、現代のロードシーンにふさわしいキャラクターとして生み出されたこの一台、オーナーの手入れ次第で面白いバイクへと変貌することは間違いありませんね。
[HARLEY-DAVIDSON XL1200CX ROADSTER SPECIFICATIONS]
HARLEY-DAVIDSON XL1200CX ROADSTER(2018)
ホイールベース:1,505mm
シート高:785mm
車両重量:259kg
エンジン型式:Air-cooled, Evolution
排気量:1,202cc
フューエルタンク容量:12.5L
フロントタイヤ:120/70 R19 M/C
リアタイヤ:150/70 R18 M/C
【メーカー希望小売価格】(消費税込/2016年5月現在)
[ビビッドブラック] 155万5000円
[コロナイエローパール] 158万5000円
[スマトラブラウン] 158万5000円
[エレクトリックブルー/シルバーフォーチュン] 161万円
[インダストリアルグレーデニム/ブラックデニム] 161万円
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