人気ナンバーワンの座に君臨し続けるフォーティーエイト
2011年モデルとしてデビューして以来、不動の人気ナンバーワンモデルとして君臨し続けるスポーツスター・フォーティーエイト。デビューから5年が経った2016年、主にフットワークを中心にマイナーチェンジをはかりましたが、マシンのスタイルは変わらぬまま。
バイクに関心がない人まで「お、カッコいい」と惹きつけるフォーティーエイト、試乗インプレッションも踏まえてその魅力に迫ります。
そのスタイルは1950年代レーサーの再現
径は小ぶりながら太いタイヤが履かされ、クラシカルなラウンドヘッドライトにコンパクトなピーナッツタンクとソロシート、そして一見するとテールランプが見当たらないウインカー一体型テールランプ&チョップドリアフェンダー……。皆さんがパッとイメージする「オートバイ」の基本的なスタイルから大きく逸脱しているようなフォーティーエイトのフォルム。そう、日本のメーカーの発想では絶対に生み出されることがない規格外のモデルなのです。
そのスタイルの原点は1950年代アメリカ、太平洋戦争が終わってまもない時代のこと。イギリスから輸入されてきたネイキッドバイクの台頭もあって、この頃のアメリカではモーターサイクル熱が高まっていたのです。
そんななかでライダーが目指すのは「スピード」、つまり「誰が一番速く走れるか」とレースが盛んになり、木の板を組み合わせて作られたコースでのボードトラックレースや、未舗装の悪路で競い合うダートトラックレースが人気を集めました。
そんなレースシーンで人気を集めたのが「ボバー」と呼ばれるレーサースタイルでした。ヘアスタイルの「ボブカット」にもある通り、短くカット(切り落とす)するカスタムのことで、速く走るために軽くする、そのためには不要なものをどんどん切り落として行ったのです。それでいて、太いタイヤを履かせた前後16インチホイールが当時のスタンダードであったことから、「余分なものを削ぎ落とした前後16インチモデル」のことを指すようになりました。
時代の流れに逆らう反逆児
フォーティーエイトの特徴は、カスタムの基本である「無駄なくコンパクトに」をしっかり踏襲していること。国内外にあるさまざまなモーターサイクルメーカーが手がける現代バイクは、「さらなる快適なライディングを」と利便性を高める機能をいくつも追加していっています。
その点で言えば、フォーティーエイトは余計なものを取り除くという「時代の流れに逆らう反逆児モデル」と言えるかもしれません。そもそもハーレーダビッドソンというメーカー自体が、そういった他メーカーのムーブメントに乗っかるタイプでもありませんし、だからこそこんな規格外の、そしてグッと目を惹きつけるバイクを生み出せたのでしょう。
そんな反逆児ですが、2016年にはたしたマイナーチェンジのポイントは「フットワーク」。フロントフォークが41mmから49mmへとアップし、剛性とともにしなやかさも手に入れたのです。加えて後ろの足でもあるリアサスペンションも、近年のスポーツスター全モデルに搭載されている「プレミアムライド・エマルジョンショック」を換装。「見た目だけで走りはからっきし」というフォーティーエイトへのレッテルに対するカンパニーの挑戦とも言えるバージョンアップです。
そこで試乗! 新型フォーティーエイトがどんな進化をはたしたか、チェックしてみました。
デザイン優先のモデルゆえか、乗り心地は……
「見た目は最高、でも乗り味は……」が、これまでのフォーティーエイト評でした。正直僕もそんな評価をするひとりで、理由はライディングポジションにあります。
ご覧のとおり、フォーティーエイトのステップ位置は両足を前に投げ出すような位置(フォワードコントロール)にあります。アメリカンでカッコいい仕様ですが、実際にバイクとしてコントロールするとなると、この位置ではしっかり踏ん張れないのでライダーの体重をすべて臀部(お尻)で支えなければならなくなります。そうすると乗り続けているうちにお尻が痛くなる……という よろしくない効果も出てくるのです。
今回シートがガンファイター型になったことで(以前までは平らなそら豆シート)、走行時のライダーの体をしっかりホールドしてくれるようになっていました。好みが分かれるところかと思いますが、フォーティーエイトをより気持ちよく乗るようにするならステップ位置をシート下(ミッドコントロール)に変更するのが良いですね。フォワードコントロールのフォームもまたフォーティーエイトらしさでもあるので、ここはオーナーの好みで。
エンジンは排気量1202ccの空冷Vツインエンジン「エボリューション」。いわゆる1000cc超えのリッターバイクで、その力を最大限発揮できる場所はハイウェイ、つまり日本人にとってはツーリング仕様とも言えます。でもタンク容量は7.9リットルと、ちょっと考えられないぐらい少ない。そう、航続距離が長くない(むしろ短い)のです。満タンスタートで約100kmを過ぎたところで給油ランプが点灯するので、常にガソリンスタンドを意識しながら走る感じになります。これもフォーティーエイトの"らしさ"を生かすためのポイントと受け入れるほかありません。
フットワークは、主に高剛性アップしたフロントフォークの安定感アップが顕著で、まさにアメリカンマッスルカーのような力強い走りを味わわせてくれます。以前の41mmフォークだと、フロントホイール&タイヤの重量に引っ張られてタイトコーナーで切れ込む怖さがあったのですが、それもしっかり解消されていました。
しかし一方で、フロント周りがパワーアップをはたした反面、オートバイとして駆動するリア周りがフロントの剛性にちょっとついていけていない印象を受けました。言うなれば、リアが軽くなって振り回されている感じです。一カ所をパワーアップさせると全体のバランスが整わなくなるのかなぁ……と感じた次第。
いわゆるスタンダードなオートバイとの比較として見ると、お世辞にも"乗りやすい"と手放しで言える仕様ではないフォーティーエイト。しかしながらフォーティーエイトが目指したのは「バランスの整った乗りやすいバイク」ではなく、「そこに佇んでいるだけでカッコいいと唸らせられる」こと。グッと目を惹きつけられるフォーティーエイトの魅力を最大限生かすべく、オーナーは多少の乗りづらさを克服せねばならないのでしょう。
「ハーレーダビッドソンは、やせ我慢して乗るバイク」
美しいスタイリングのためには、多少の犠牲はつきもの。ハーレーに乗るんですから、このぐらいは許容できないと、ですね。
[HARLEY-DAVIDSON XL1200CX ROADSTER SPECIFICATIONS]
全長/2165mm
ホイールベース/1,495mm
加重時シート高/710mm
車両重量/252kg
エンジン型式/空冷式Evolution
排気量/1202cc
フューエルタンク容量/7.9L
フロントタイヤ/130/90 B16 73H
リアタイヤ/150/80 B16 77H
【メーカー希望小売価格】(消費税込/2018年4月現在)
[ビビッドブラック]149万円
[レッドアイアンデニム]151万9000円
[ツイステッドチェリー]151万9000円
[ハードキャンディーシャッタードフレーク]154万7000円
[レジェンドブルーデニム]157万円