スマートフォン/スマートフォンの周辺機器

ケーブル不要でスマホを充電「ワイヤレス給電」とは

わずらわしいケーブル接続の必要なく、充電器に置くだけでスマートフォンを充電できる「ワイヤレス給電」。一部のスマートフォンが対応するなど実用化が進んでいるワイヤレス給電ですが、なぜケーブルレスで充電ができるのでしょうか。

佐野 正弘

執筆者:佐野 正弘

携帯電話・スマートフォンガイド

ケーブル不要でどうやって電気を送るのか?

スマートフォンを充電するには、ケーブルで電源に接続するのが当然だと思っている人も多いかと思います。ですが現在ではケーブルをつなぐことなく充電できる「ワイヤレス給電」に対応したスマートフォンも存在しています。
ワイヤレス給電

ワイヤレス給電に対応したスマートフォンの1つ「Galaxy S8」(執筆時点では日本未発売)。専用の充電器に置くだけで充電ができる

ワイヤレス給電

充電器からGalaxy S8を持ち上げたところ。同機種のUSB端子は本体下部にあるので、充電器と本体がケーブル接続されていないことが分かる

ワイヤレス給電に対応したスマートフォンは、実は国内では2011年から提供されており、現行モデルの中にも対応する機種がいくつか存在します。さらには人気のiPhoneが、次のモデルでワイヤレス給電に対応するのではないか?という一部報道も出てきていることから、関心が急速に高まってきているようです。

しかしそもそも、充電するにはケーブルで電源に接続するというのが常識のはず。にもかかわらず、なぜケーブルに接続することなく充電ができるのでしょうか。ワイヤレス給電にはいくつかの方法があるのですが、スマートフォンで多く用いられている、ワイヤレスパワーコンソーシアムが提唱するワイヤレス給電方式の「Qi」では、主に「電磁誘導」という方式が用いられています。

電磁誘導は学校の授業で習ったことがあるという人も多いかと思いますが、要はコイルに磁石を近づけたり、遠ざけたりすると、磁場が変化してコイルに電流が流れるという仕組みです。Qiでは電力を送る充電器側と、それを受けるスマートフォン側の双方にコイルが搭載されており、充電器側のコイルに電流を流すことで磁石として使用し、磁場を変化させることで電磁誘導を起こし、スマートフォン側に給電する訳です。

そうしたことから電磁誘導方式は、送電側と受電側のコイルの位置をぴったり合わせないと、うまく給電できないという弱点があります。それゆえQiに対応した充電器の一部は、充電したいデバイスを置くと、受電側のコイルが移動して位置を合わせてくれる仕組みが導入されていますが、最近では電磁誘導方式の弱点を根本的に解消するべく、「磁界共鳴」という方式の導入も進められようとしています。

磁界共鳴は、送電側と受電側のコイルを共振させることで、電力を伝える仕組みです。音叉を鳴らすと、離れた所にある音叉が共振して鳴るというのと似た原理であり、電磁誘導のようにコイルの位置を性格に合わせる必要なく、やや離れた場所にあっても給電できるのが大きな特徴となります。一方で電磁誘導と比べ仕組みが複雑になる、給電能力が電磁誘導と比べ弱くなる、などの弱点もあるようです。


採用するスマホは減少傾向だが給電性能は大幅に改善

では実際のところ、どの程度のスマートフォンがワイヤレス給電に対応しているのでしょうか。2017年4月末時点で販売されているモデルを確認すると、Qi対応モデルはNTTドコモやauから販売されている「Galaxy S7 edge」、そしてauの「TORQUE G02」のみとなっており、選択肢が多いとは言えない状況にあります。Qi対応の充電器の種類は最近急速に増えていますが、肝心の充電できるスマートフォンが、国内ではあまり増えていないのです。
ワイヤレス給電

国内向けとしては数少ないワイヤレス給電対応のスマートフォン「Galaxy S7 edge」

実は2013年頃までは、より多くのQi対応スマートフォンが存在したのですが、2014年を境として採用機種数は大きく減少しています。理由の1つとしては、Qiに積極的に取り組んでいたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズ(NECモバイルコミュニケーションズに改名後、解散)が国内向けスマートフォン開発から撤退してしまったことが挙げられます。

そしてもう1つの理由は、従来Qiの送電出力性能が5Wと低かったため、充電にかなりの時間を要していたことです。ケーブルレスの利便性よりも、より素早くスマートフォンを充電できる“急速充電”へのニーズが高かったこともあり、メーカー側もワイヤレス給電より、急速充電を優先するようになったといえるでしょう。
ワイヤレス給電

2013年頃まではQi対応のスマートフォンが多く販売されていたが、国内メーカーの相次ぐ撤退で数が急減している

しかしながら最近では、Qiも仕様変更を重ねたことで送電出力がアップし、2015年に登場したQiのバージョン「1.2」では、従来の3倍となる15Wにまで出力が高められ、クアルコムの急速充電規格「Quick Charge 2.0」相当の充電速度を実現できるようになったとされています。「ワイヤレス給電は遅い」という評価は過去のものとなりつつあるだけに、今後採用機種が再び増えることを期待したいところです。

ちなみにワイヤレス給電は、スマートフォンに限ったものではありません。最近では電気自動車の広まりもあり、自動車向けのワイヤレス給電に関する技術開発も急速に進んでいるようです。例えばクアルコムは、電磁誘導方式を用いたワイヤレス給電技術「Qualcomm Halo」を開発し、自動車メーカーにライセンス提供を進めています。
ワイヤレス給電

クアルコムは自動車向けのワイヤレス給電規格「Qualcomm Halo」を開発、自動車メーカーにライセンス提供を進めている

他にもさまざまな分野でワイヤレス給電に向けた取り組みが進められていることから、将来的にはより幅広い機器がワイヤレス給電に対応し、電源ケーブルの取り回しに苦労することもなくなっていくかもしれません。

【関連リンク】
ワイヤレスパワーコンソーシアム WPC



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