レディースファッション

女性のオーダースーツの手順とこだわるべきポイント

最近ぐっと手ごろになったオーダースーツ。メンズだけでなくレディースのスーツもあるのはご存知ですか?スーツのオーダー方法と、特にこだわるべきポイントを解説します。

執筆者:All About 編集部

スーツのオーダーの流れとチェックポイント

手持ちのスーツには不満が……

手持ちのスーツには不満が……(私物)


最近は職場のドレスコードが緩まり、金融系や接客業などを除き、スーツで通勤する女性が減っているそうです。とはいえ、大人としてマナーある場面で着るスーツですから、30代になるとキチンと体に合ったものがほしいと思い始めます。

しかも、女性の場合、男性ほどオーダースーツが一般的でなく、既製のスーツを無理やり着ることが多いのも事実。
「スタイルよく見えるスーツが欲しい」「肩や胸まわりは窮屈ではいや」「もっといいデザインがあればいいのに」「値段と着心地のコスパが気になる」「パンツorスカートがあればいいのに」――などと考えると、理想のスーツを求めてさまようことになってしまいがち。

そこで、スーツを着るのは年に数回ほどの30代・会社員・女性の代表として、オーダーの流れを体験します。



10年前に購入した手持ちのスーツの問題点

10年前のスーツの問題点

10年前のスーツの問題点(私物)


10年ほど前、急きょスーツが必要になり、ネット通販で1万円ほどで購入したスーツ。これは30代の社会人としてアリなのでしょうか? フィッターと呼ばれるオーダーメイドのプロと共に手持ちのスーツの問題点からカウンセリングしてもらいました。

【手持ちスーツの問題点】
・3つボタンがカッチリしすぎていて、リクルートスーツのようで年齢に合わない。
・3年ほどでトレンドが変わるので、ジャケットやサイズ、形などが全体的に古い印象。
・ジャケット丈に対してVゾーンが狭く、苦しそうに見える。
・アームホールが大きくもたついているのに、肩幅が狭く、二の腕が目立っている。
・タイトスカートのデザイン自体はベーシックだが、セットで購入しているため、腿幅が合わずしわが寄っている。
・袖が長く、だらしない印象に見えがち。

――以上の問題点を解決するオーダーを体験していきます。


■STEP1 カウンセリング
フィッターとのカウンセリングの様子

フィッターとのカウンセリングの様子


担当フィッターの木原さん(HANABISHI 馬車道店)は、オーダーで最も重要なのはカウンセリングだと語ります。

「生地、スタイルにはじまり、ボタン、裏地、襟型、袖口、ポケット、ベント、パンツ、スカートなどなど、すべてを合わせると3万通り以上にもなる膨大な組み合わせから、オリジナルの一着をつくっていきます。

まず、お仕事ならその業種、パーティ等のドレスコードなど、そのスーツを着る目的やシーンについてお伺いします。目的やシーンが幅広い場合は、クローゼットに不足しているスーツの色や、あると便利な黒や紺、グレー、それらのストライプ柄などをオススメすることもあります。また、体型や顔映りなどのお悩みを解消するようなスーツをお望みかどうかなどもお聞きします」(木原さん)

フィッターとのカウンセリングで最初に聞かれるのは、マニッシュかフェミニンなどイメージ、そして、仕事や業種、仕事用・入卒式用・パーティ用などのオケージョンの内容など。それらをプロと共有すしながら大まかに絞り込むので、スーツの用語やマナー、自分に合うモデルなどがわからなくても、「自分が本当に欲しくて必要なスーツ」に近づきやすくなるというもの。

欲しいイメージや着たいシーンから、デザインを絞り込んでいきます。

欲しいイメージや着たいシーンから、デザインを絞り込んでいきます。

ジャケットとパンツのデザインイメージ。

たくさんある! ジャケットとパンツのデザインイメージ。


いずれにしても、どんなイメージになるスーツが欲しいのか、こだわりたいポイントはどこなのかなどの希望があれば、どんどん伝えましょう。

逆にあまりこだわりがないのであれば、「どれが人気?」「どちらがカジュアル? どちらがフォーマル?」などとこちらが質問して、フィッターにおまかせすることもできました。店内にもサンプルが多数あるので、「デザインのイメージが近いのはこれで、生地はこれにしたい。でももう少し明るい色がいい」などのようにざっくりしたイメージから、理想に近いものを繰り寄せることができそうです。

襟周りのデザインでかなり印象が変わります。テーラードはカッチリ、ノーカラーはすっきりフェミニンな印象。

襟周りのデザインでかなり印象が変わります。テーラードはカッチリ、ノーカラーはすっきりフェミニンな印象。


「レディースの場合、ジャケットのデザインは、ビジネススーツの定番のテーラードタイプ、式典スーツらしい上品なラウンドノーカラー、それに加えて、ノーカラーのVネックタイプは近年のトレンドです」(木原さん)


■STEP2 生地選び
完成価格の3万9000円~で、記事が並んでいます。

お仕立て上がり時の価格が生地見本に表示。3万9000円~、(オプションなしの場合)


カウンセリングで決めたスーツの大まかな方向性をもとに、順を追って選んでいきます。ちなみに、店内の生地見本には、「(オプションなしの場合の)お仕立て上がり時の金額」が書かれています。ジャケット、スカート、パンツをグレーの生地でオーダーすることにしました。

生地を肩にかけて、顔うつりもチェック。

生地を肩にかけて、顔うつりもチェック。


「グレーはフォーマル度が高く、暗すぎないので3シーズンどんな場面にも着ていきやすいわりに、意外とお持ちでない方が多いのでオススメです。ご希望があれば、ボトムやジャケットを別素材にしたり、スカートを別のデザインでもう1着つくったりするのもオススメですよ」(木原さん)


■STEP3 デザイン・ディテール選び
裏地やボタンの見本。生地の色などからオススメを絞ってもらうことも可能。

裏地やボタンの見本。生地の色などからオススメを絞ってもらうことも可能。


スーツの生地が決まったら、裏地、ボタンの種類、ステッチの種類や色などのディテールを選びます。豊富なボタンや裏地は、見ているだけで楽しく、オーダーの醍醐味のひとつです。


■STEP4 採寸
メジャーを使って、バスト、ウエスト、ヒップを測定し、採寸します。

メジャーを使って、バスト、ウエスト、ヒップを測定し、採寸します。


採寸時に気を付けることを聞いてみると……、

「スーツやジャケットを美しく着るのには、胸回りからウエストにかけてのラインの美しさがポイント。そのため、通常スーツを着るときに、インナーにしている薄手のトップスを着た状態で測定するのもポイントです。さらに、自分の体に合ったブラジャー、いつも身に着けるボディスーツやガードルなどを着けて測定するのもオススメです」(木原さん)

続いてメジャーを使って、バスト、ウエスト、ヒップを測定し、だいたいのサイズ感をつかみ、ゲージ服と呼ばれる見本サイズの服を身に着けて、体型やお好みに合わせて調整していくのがオーダーの採寸です。

「男性と違って女性は体のラインに凹凸が多いので、個人個人に合わせた補正をすることで、着やすさとスタイルアップがかないます。とくに、下腹とお尻の盛り上がりを中ヒップとして測定して補正する『出腹補正』、大きなバストでもジャケットをよれにくくなる『胸高補正』など、体型の悩みをカバーする補正をしていきます」(木原さん)

まずは、パンツから試着。見本のゲージ服はブーツカットタイプですが、私のオーダーは、テーパードタイプ。実際にピンを打って、ひざ下をタイトにします。

ピンをうって、好みのシルエットに調整。

ピンをうって、好みのシルエットに調整。


フィッター木原さんから「さらに1サイズ上のゲージ服にして、テーパードを強調したほうがスッキリと見える」と助言をいただき、1サイズ上のゲージ服も試着。また、椅子に座って、ふくらはぎや太もものハリ具合をチェックしました。

次は、ジャケットを試着。スカートとパンツ両方を作るため、どちらに合わせるか悩みます。木原さんによると、

「パンツはヒップラインがしっかり出るので、ヒップラインの一番高いところを基準に、すこし長めにする方もいます。スカートの場合、ヒップラインより少し上からフレアになるシルエットもあるので、すこし短めにしてもスッキリ見える場合もあります。オーダーなどで同じジャケットでスカートとパンツを作る場合、パンツに似合う長さをオススメします」とのこと。


■STEP6 完成&試着
3~4週間後、仕上がったスーツを試着。手持ちのスーツと比べると以下のことがわかります。
左から、ジャケットとパンツのセットアップ、ジャケットとスカートのセットアップ。

左から、ジャケットとパンツのセットアップ、ジャケットとスカートのセットアップ。ジャケット3万6000円(オプション付き)、パンツ1万3000円、フレアスカート1万8000 円。


【今回オーダーしたスーツのポイント】
・ジャケット襟のゴージライン(切れ込みのある部分)を上目にするのが今どきの流行。
・バストサイズに合わせた補正をすることで、ジャケットのVゾーンが開きにくい。
・アームホールが合っていて、ウエストの絞りがキレイにボディラインにフィット。
・ジャケットが1つボタンなので、ウエスト位置を上の方で絞ることができ、スタイルアップ効果も。
・Vゾーンが広く空いているので、顔周りがスッキリ見えます。
・最新のシルエットに合わせて、肩パットを薄めに、肩幅はジャストに補正。


フィッターにも、オーダーの醍醐味をさらに聞いてみました。

「体に合っているジャケットやボトムスは、着心地が良くて長時間着ていても疲れにくいのが特徴。女性のスーツ姿というのは、バストからウエストにかけての曲線が重要なので、細かい補正ができるオーダーメイドは、理に適っていると言えます。

また、既製服よりも縫いしろを広く取って作られているので、サイズの微調整が可能。ちょっとしたシルエットやバランスの微調整でしたら1年間は無料で直すことができるのもメリットのひとつ。

2回目以降にオーダーする際は、1回目の仕様や採寸データがかきこまれたカウンセリングシートがあるので、さらに簡単に、理想的なオーダーができるようになるはずです!」(木原さん)


初めてオーダースーツを注文するならこだわりたいポイント

かなり多くのパーツを自由に選ぶことができるオーダー。自由度が高いがゆえに迷ってしまうという方に、ぜひこだわるべきポイントをご紹介します。

1.単品オーダーアイテムを追加して着まわす
ジャケットを変えると印象がガラリと変わります

ジャケットを変えると印象がガラリと変わります


スカートとパンツ両方を作ったり、共布で違うシルエットのボトムを追加オーダーすると、着回しの幅も広がります。

また、メンズスーツの今年の流行でもあるのがベストつきの3ピース。ウォームビズの発想で、秋冬用のスーツとして合わせて作られる方も増えているそうです。

ベストを作って、3ピースにするのも差が付きます。

ベストを作って、3ピースにするのも差が付きます。※ベストはセット購入の場合は1万円。単品だと2万1000円~。


「スーツやジャケットと同じ共布で作れば、かなりお得なオプション(+1万円 ※2016年12月現在)としてつけられるのもポイントです。制服っぽく見えるのは避けたいという人は、ジャケットとベストの生地(素材)を変えるオッドベスト・スタイルに挑戦してみては?」(木原さん)


2.印象を左右する、ジャケットの「Vゾーンと襟のデザイン」

テーラードのなかでも、ノッチドラペル、ピークトラペル、クローバーリーフのように襟の形を選べます。
左からテーラード

左から、シャープな印象のピークドラペル、丸みが柔らかい印象のクローバーリーフ。


最近の流行は、ノーカラーのラウンドネックやVネックのタイプで、フロントボタンを付けないデザインも。ラウンドノーカラーであれば柔らかい印象、Vノーカラーならシャープな印象に。カジュアル化の波で、ジャケット単品でワンピースやカットソー、手持ちのボトムスと合わせやすい点が人気の理由とのこと。

「特に、Vノーカラーは、ドラマ『家売るオンナ』(TBS系・2016年)で北川景子さんが着こなしていたり、海外セレブのファッションなどの影響で人気を博しているトレンドのデザインでもあります。

ゴージラインと呼ばれる、上襟と下襟の縫い合わせ部分の位置が高いと、目線の位置が上がり、上半身や顔周りがスッキリと見える効果もあります」(木原さん)


3.ボトムに合わせてジャケットの長さや丈を調整

ヒップの一番高い位置にジャケットの裾が来るように調整。

パンツに合わせて、ヒップの一番高い位置にジャケットの裾が来るようにオーダー。


今回は3点セットのオーダーなので、パンツに合わせやすいようにヒップの一番高いラインに合わせてもらいました。どんなボトムで着こなしたいかによって、ジャケットの丈を調整するのもオススメです。

「ひざ下のスカートやワイドパンツに合わせるなら、ジャケットはヒップラインより短めに。ミニスカートやスキニーパンツに合わせるならジャケットは長めに……など、私服のコーディネートと同じく、上下のバランスを考えるのも、オーダーならではです」(木原さん)


4.ポケットのカタチや位置をカスタマイズ
2つポケットを付けたジャケット

2つポケットを付けたジャケット。


「HANABISHIの女性用ジャケットのベースのデザインには、胸ポケットや内ポケットがないのですが、オーダーでつけることが可能です。内ポケット、胸ポケットなど、希望に合わせてつけられます。

また、スマホのサイズに合わせたポケットを付ける方や、社員証やネームタグ、ピンバッジなどをつけるためのデザインを追加される方もいます」(木原さん)


5.裏地のカラーと名前の刺繍で見えないおしゃれ
下の名前を共布部分に入れると、わかる人にはわかるこだわりのポイントに。

下の名前を共布部分に入れると、わかる人にはわかるこだわりのポイントに。

スーツの裏地は、通常は人からは見えない部分。

「女性の場合、スーツのインナーに滑りの悪いニットやカットソーも合わせるので、裏地を付けるのがオススメ。ポリエステル100%がベースとなるオーダーについているのですが、湿気を吸収してくれる『キュプラ』に変えるなど、素材にこだわったカスタマイズもできます。また、ジャケットがストレッチ素材ならば、裏地もストレッチにするとより快適です」(木原さん)

また、女性の場合、ジャケットに刺繍をいれるだけでも、こだわり感が出ますが、生地の状態で刺繍できるオーダーの場合、共地部分に刺繍を入れられるのがオーダーならでは。苗字よりも、下の名前で刺繍を入れるのがオススメとのこと!


6.ステッチで印象をチェンジ
襟元のステッチでカジュアルな印象に。

襟元のステッチでカジュアルな印象に。


「通常、細い糸でさりげなく入れるステッチは、ベースのオーダーに含まれていて、アリ・ナシを好みで選べます。入れると高級感が出るうえ、襟の浮きも抑えられます。

(上の写真のような)ハッキリと見えるステッチはオプション(+2000円 ※2016年12月現在)も可能で、カジュアルな印象になります。顔周りがグッと明るくなる効果もあります」

いかがでしたか? 入社時に買ったスーツがそろそろ買い替え……というあなたは一歩先行くオーダースーツをぜひ取り入れてみて。そのデザイン性とフィット感、そして世界に一着しかないという希少さがあなたのモチベーションをぐっと上げてくれるはずです!

撮影/吉井 明

【取材協力】
HANABISHI 渋谷店
住所:東京都渋谷区渋谷3丁目7−1 ヒラゼンビル
営業時間:10:30~19:30 水曜定休
TEL:03-3486-8529

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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