メルセデス・ベンツGLSは「SUVのSクラス」
コンパクトサイズからフルサイズまで、大きさを問わず世界的なSUVブームが巻き起こっている。ここでは、メルセデス・ベンツGLSを中心に、日本では「超大型」と分類できるフルサイズSUVの魅力をお届けしたい。
メルセデス・ベンツGLSは、2016年4月末に車名をGLからGLSに変更。「GL」はメルセデス・ベンツのSUVを示す車名で、「S」は車格を表している。分かりやすくいえば「SUVのSクラス」ということになる。
GLSは3列シートの7人乗り。サイズとパッケージングから見ると、新しくなったアウディQ7やBMW X5、ボルボXC90、キャデラック・エスカレードなどフルサイズSUVがライバルとして考えられる。それらに加えて、トヨタのアルファード/ヴェルファイア、メルセデス・ベンツのVクラスなどの大型ミニバンにも匹敵する居住性、積載性を備えている。
巨体を感じさせない怒濤の加速が魅力
試乗したのは、5.5L V8直噴ツインターボエンジンを搭載する最上級グレードのメルセデスAMG GLS 63 4MATIC。455ps/700Nmという圧倒的なスペックはもちろん、1900万円という価格設定からもこちらの最高級グレードは、ライバル不在の孤高の存在といえる内容になっている。なお、3.0L V6直噴ディーゼルターボを積むGLS 350 d4 MATIC(受注生産)が1070万円~という価格なので、欧州勢のSUVと対抗できる設定といえそうだ。
GLSに車名を変えてもパッケージングは変わっていない。全長5160×全幅1980×全高1850mmという巨体を活かして、1列目と2列目はもちろん、サードシートも大人が2人無理なく座れる。
しかもシートは「おまけ」的に作られた小さなものではなく、適度なホールド性を備えていて長身、大柄な方でなければ長距離も苦にならなそう。ただし、フロアは高いのでとくに3列目の乗降は楽ではない。乗降性が常用とするには少し難点といえそうだ。
試乗車がGLS 63 4MATICというグレードだけに、暴力的といえるほどの強烈な加速フィールは、ほかのパワートレーン搭載車を検討する人には参考にもならないが、同グレードの購入を考えている人(ただし、GLS 550とGLS 63は左ハンドル)には、動力性能にはなんら不満はないはずとお伝えできる。
AMG GLS 63の称号に恥じない加速力
中低速域では700Nmの分厚いトルクが、高速域は455psのハイパワーはどこまでも伸びのある加速を引き出してくれる。しかもGLSから採用された9ATの「9G-TRONIC」は、非常にスムーズで滑らかな走りも容易。
さらに、AMG専用セッティングが施されたエアサスペンションの「AMG RIDE CONTROLスポーツサスペンション」は、スポーツの名こそ付いているものの、非常に滑らかでSUVのSクラスの称号にふさわしい極上の乗り心地を提供してくれる。
走行モードを「コンフォート」にすると、高速道路などではややボディがふらつくこともあるが、「スポーツ」にすれば直進安定性が高まり、コーナーでの挙動も巨体とは思えないほど収まってくる。
ライバルを考えてみよう。1000万円超となると、ブランド力やデザインなどの要素が占める割合が高くなりそうで、指名買いが多くなりそうだが、新型に移行したアウディQ7は大きさを感じさせないアウディらしい軽快な走りが魅力でスタイリッシュな内外装もポイントだ。
ボルボXC90も最新世代のボルボ車、フラッグシップにふさわしい作り込み、そして新しさを感じさせるクールな内・外装、プラグインハイブリッドも設定する環境性能の高さが魅力だろう。
BMW X5や次期型の噂も出始めているが、BMWらしい切れ味鋭いフットワークが美点で、ディーゼルに加えてプラグインハイブリッドも用意している。ディーゼルターボは力強い加速、プラグインハイブリッドは同クラストップレベルといえる乗り心地の良さが光る。
どのモデルを選んでも各ブランドの威信をかけた最上級SUVだけに、大きな隙は感じさせず、長く付き合うほどその良さを味わう事ができそうだ。