乳がん検診は万能ではない?

検診を受ける女性

早期発見、早期治療が大切な乳がん。しかし検診も万能でないことは、理解しておかなくてはなりません。

乳がんは早期発見、早期治療が大事です。例えば、ごく早期に発見できれば、5年生存率(5年後も生きている割合)は95%。そう考えると検診は間違いなく重要です。ただ、検診も万能ではありません。今回は乳がん検診で知っておいたほうが良いことを取り上げます

マンモグラフィでも発見困難?
日本人女性に多いデンスブレストとは

マンモグラフィーの画像

マンモグラフィーの画像

公的な乳がん検診のうち、乳がんによって亡くなる方を減らせることが分かっている唯一の方法は「マンモグラフィ」です。

そこで日本では40歳以上の女性に対して2年に1回のマンモグラフィを用いた検診を行っていますが、日本人女性の乳房の特徴として「デンスブレスト(高濃度乳腺)」があり、特に乳腺の密度が濃い若い人ではがんを発見しにくいという欠点があります。デンスブレストの場合、乳腺の密度が濃いため、エックス線画像上で白く写ってしまうのです。

具体的には、右上の実際のマンモグラフィーの画像を見ていただくとわかりやすいと思います。乳首から枝のように広がる、白く見えるのが乳腺です。がんは白く見えますが、もし乳腺の密度が濃ければ乳房全体が白くなるのでがんを見つけにくくなりますし、乳腺が密集した正常な部分とがんとの見分けもしづらくなります。

つまり、若くて乳腺が密なほど、がんが発見できない確率も、がんでないものをがんの疑いありと診断してしまう確率も高くなってしまうのです。

マンモグラフィーを定期的に受けるのは何歳からがいいの?

マンモグラフィーは実際にこんな風に検査します

マンモグラフィーは実際にこんな風に検査します

マンモグラフィは何歳から定期的に受けるのが一番適切なのでしょうか?

若すぎればあまり検診として効果がないことや、年をとれば乳腺密度が薄くなって(乳腺は母乳を作るところですので)がんを発見しやすくなるので利益が高いことは想像していただけると思います。実際、多くの研究の結果では、50歳以上はマンモグラフィを用いた検診の利益の方が不利益よりも大きいと考えられています。

また、40歳代に対しても利益があることは明らかなのですが、不利益も結構あるので(例えばどうしてもがんを見逃さないようにしようとすると、がんでないものをがんの疑いありと診断して不必要な精密検査が増えることになるなど)、検診として行うべきかどうかについて各国でも意見が分かれています。

アメリカを例にとってみましょう。米国予防医学専門委員会(US Preventive Services Task Force, USPSTF)が2009年に「40歳代の女性に対しては、マンモグラフィを用いた定期的な乳がん検診を行うことを推奨しない」という声明を発表しました。しかし、米国対がん協会(American Cancer Society, ACS)は、40歳代に対しても(特に45歳以上)マンモグラフィによる乳がん検診を推奨、さらに米国立がん研究所(National Cancer Institute, NCI)は利益と害の双方がある、という観点から中立的立場という三者三様の立場をとっています。

40歳以上ではマンモグラフィ自体が検診として有用なのは間違いないですが、一度受けてみて乳腺が濃いなど自分の乳房がマンモグラフィ自体に向いていなければ、自費になりますが超音波検査などを組み合わせたり、もしくは切り替えたりするなど、医師と相談しながら自分に合った方法を探すのが一番理想的だと思います。

新しい検診方法の研究が進行中!
マンモグラフィと超音波検査

現在マンモグラフィと超音波検査を組み合わせることで、乳がんの診断の精度を上げられるのではないか、ということを調べる質の高い研究が日本で進行中です。現時点(2015年)では、少なくともがんを発見することに関してはマンモグラフィだけよりも超音波検査を組み合わせた方が発見しやすい、ということがわかってきています。

しかし、まだ超音波検査+マンモグラフィの検診がより乳がんで亡くなる方を減らすことに役立つ、という結論はでていないので、超音波検査は公的な検診には含まれていません。今後の日本発の研究で、より日本人に適した検診方法がわかってくるといいですね。

中間期乳がんって?
検診を受けているのに検診以外でがんが見つかる

いろいろあって難しい。。。

いろいろあって難しい……。

毎年検診を受けていても、そこでは指摘されないのに、次の検診までの間に見つかってしまう乳がんがあります。これを中間期乳がんと呼んでいます(おそらくプロレスラーの北斗晶さんの場合はこのタイプの乳がんと思われます)。検診を受けていながら乳がんが見つかる人の3割くらいがこのタイプといわれ、それほど珍しくないケースです。

「検診の見落とし?」と思われるかもしれませんが、実は見落としの方が少数派。また、見落としと言っても乳腺の密度が濃かったり、乳がんが小さいなど、診断が難しい場合に起きることが多いのです。

ということは、検診を受けているにも関わらず検診以外で見つかる「中間期乳がん」の大部分は進行が早く急激に大きくなる、ということを意味するので、一般的には検診で見つかる乳がんよりもあまりタチがよくない、と考えられています。

ただ、それでも、この中間期乳がんと全く検診を受けていない人の乳がんの予後(病気の経過や死亡など結果)を比べると、今のところあまり変わらないという報告がでてきています。中間期乳がんがあるからといって、検診に意味がないことはないと思います。

検診は大事ですがいくつかの落とし穴があることを知っておきましょう。でも、心配しすぎてもしょうがないので、できることからやっていくということが大事ですよね。


■参考文献
・Noriaki O, et al. Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial(J-START):a randomised controlled trial. The Lancet 2015 in press
・Loberg M, et al. Benefits and harms of mammography screening. Breast Cancer Res. 2015;15:63.

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。