アメリカ仕様のトルクが備われば……
このヘリテイジに乗るにあたり、格好の比較対象となるのが、同じソフテイルファミリーに属する FLSTN ソフテイルデラックス です。というのも、「油圧式フロントフォーク」「ソフテイルフレーム」「前後16インチホイール」「ツインカム96Bエンジン」と、ヘリテイジはデラックスの基本構造をそのままベースとしているから。ソフテイルモデルのなかでもニュートラルな乗り味が魅力のデラックスは絶好の教材で、違いは形状違いのハンドルバーと装備の多さでしょう。
やはりハンドルバーの違いは顕著で、ほぼ肩の高さぐらいまで腕が持ち上がるエイプバー(猿が木にぶら下がっているようなスタイルが名の由来)は、取り回し時の支点がデラックスより高いため、デラックス以上に重量感を感じてしまうところ。ただ、「だったらデラックス仕様のハンドルバーにカスタムしちゃえばいいじゃないか」と、あっさり解決できてしまうところがハーレーの良いところ。
どちらかと言うと、本来の力を発揮できていないエンジンの方が気になりました。実はこの試乗の少し前、アメリカで同じヘリテイジに乗る機会があったのですが、アメリカのそれは少しスロットルをひねるだけで「ドッドッドッドッドッ!」と沸き上がってくるような強烈なパワーを味わわせてくれ、路面をめくりあげるかのような力強い走りを楽しませてくれました。日本仕様と比べると、パワーやトルクがまるで別物。
理由は、アメリカと日本の排ガス規制値の違いから。アメリカよりもシビアな数値に設定されている日本に輸入されるハーレーは、現モデルの頭脳であるコンピューターのデータが書き換えられているのです。そう、極端な言い方をすると、アメリカで出ているようなパワフルな走りを生み出せないセーブされた状態であるということです。ハイウェイやロングストレートなど、気持ちのいいロードをズドンと走り抜けることこそハーレーに乗る醍醐味なのですが、ノーマルのままでは本来のトルクフルな走りを味わうことができません。
解決方法は、そのコンピューターの数値を書き換えるチューニングを行い、本国仕様に戻すこと。これだけで、ハーレー本来の走りを楽しむことができるのです。せっかくのビッグツインモデルです、“走って楽しい”が味わえないともったいないですからね。
ノスタルジックな旅を楽しみたい人向け
装備の分だけデラックスより重量がありますが、実際に走り出してしまえば重さそのものは気になりません。バーの形状によるハンドリングのクセだけが好みの分かれるところかと思いますが、前後16インチホイールの足まわりはその伝統に裏打ちされているだけあって安定感があり、見た目以上に軽やかに旋回してくれます。
デラックスとの違いとなる装備ですが、ご覧のとおり、旅……ツーリングを楽しみたい人には申し分ない充実の装備となっています。パッセンジャーシートには背もたれ用シッシーバーまで付いているなど、まさに至れり尽くせり。やはり北海道や九州、信州といった名所が似合うモデルだと言えます。
ハーレーの伝統とともに旅そのものを楽しめるモデル、FLSTC ヘリテイジソフテイルクラシック。このモデルに触れずして、ハーレーダビッドソンを知ることはできない、と言っても過言ではないでしょう。
>> 比較モデル FLSTN ソフテイルデラックスの試乗記事を読む
[HARLEY-DAVIDSON FLSTC SPECIFICATIONS]
HARLEY-DAVIDSON FLSTC Heritage Softail Classic
全幅/955mm
全高/1,408mm
ホイールベース/1,635mm
加重時シート高/690mm
車両重量/341kg
エンジン型式/Air-cooled, Twin Cam 96B(インジェクション)
排気量/1,584cc
フュエルタンク容量/18.9L
フロントタイヤ/MT90B16 M/C 72H
リアタイヤ/150/80B16 M/C 71H
【メーカー希望小売価格】(消費税込)
[ビビッドブラック]240万円
[モノトーン]243万5000円
[ツートーン]247万円
(2015年6月現在)