個性的なパーツが散りばめられたカスタムモデル
セブンティーツーがこれほどまでに個性的なのは、選ばれているパーツがあってこそ。前述のエイプハンガーに加え、フォーティーエイトにも採用されているコンパクトなピーナッツタンクにチョップドリアフェンダー&テールランプ一体型ウインカー、そして実は重要なカスタムポイントでもあるホワイトリボン入りタイヤなど、まとまりのあるスタイリングはもちろん、ディテールも見どころ満載というモデルでもあるのです。そして、とにかく全体的にきらびやかなところも注目ポイントです。特にフューエルタンク&前後フェンダーを彩るキャンディーフレークペイント『ハードキャンディーカスタム』を語らずして、このセブンティーツーを理解するのは不可能。特別仕様のグラフィックであるハードキャンディーカスタムは全部で3カラー存在し、限られたモデルに1~2色ほど配されているのですが、このセブンティーツーには3カラーすべて投入されているのです。
銀色のフレークをまぶしたキャンディーペイントが生まれたのは1970年代……そう、アメリカのカスタムシーンにおいて、なのです。一説には、宇宙開発が加速化した当時の“宇宙への憧れ”がこうした形でドロップしたとも言われていますが、なんにせよ、このキャンディーペイントも70'sを象徴するツールのひとつであり、ゆえにセブンティーツーとは一蓮托生とも言えるグラフィックとして存在するのです。
このモデルで乗り心地の是非を問うのはナンセンス
さて試乗した感想ですが……まー笑っちゃいますね、良い意味で。お世辞にも乗りやすいなんて言えません。腕を上に持ち上げられるエイプハンガー、足を前方に投げ出すフォワードコントロール、お尻を受け止めてくれないそら豆シートと、これだけ乗りづらい要素を集めているのだから、「乗りやすい」なんて言ったら他の良いモデルに失礼。実際、ストリートシーンでそこそこまで速度をあげてみると、シートが体をホールドしてくれないので、ステップに足を踏ん張らせ、ハンドルにしがみつきながら走る格好になります。スロットルやブレーキが備わるハンドルにしがみつくわけですから、ライディングという面から見れば不要なデメリットを抱えていると言えるでしょう。「そんなに乗りにくいバイクには乗りたくない」
この感想を読んでそう思われる人がいたら……その人はハーレーダビッドソンに向いていません。ぜひ他メーカーのバイクをご検討ください。これ、嫌味で言っているわけではありません。快適なモーターサイクルライフを求めるのであれば、この世には快適に乗れるオートバイがいっぱい存在します。
要は、ハーレーダビッドソンに乗りたいのか否か、です。
ハーレーダビッドソンには、“ハーレーダビッドソンに乗る”という他メーカーにはない特別なアイデンティティがあります。111年という歴史が育んできたアメリカンカルチャーの象徴には、かの国の伝統が息づいており、走る際に見える風景を特別なものに変えてくれる魔力すらある。それこそ、ロックを聴きながら走った日には、自分がキャプテンアメリカになったかのような気分さえ味わわせてくれるのです。スポーツスターがベースだから、なんて行儀のいい考えは捨てて、スタイルそのものを楽しむべき。セブンティーツーはそんなオートバイです。
ハーレーダビッドソンの伝統を語り継ぐチョッパーモデル XL1200V セブンティーツー。あえてこのモデルを選べる人には、言葉では言い表せない“ハーレーダビッドソンに乗る意味”が必ず存在していることでしょう。
[HARLEY-DAVIDSON XL1200V SPECIFICATIONS]
全長/2,225mm
全幅/930mm
全高/1,270mm
ホイールベース/1,530mm
加重時シート高/710mm
車両重量/254kg
エンジン型式/Air-cooled, Evolution
排気量/1,201cc
フュエルタンク容量/7.9L
フロントタイヤ/MH90-21 M/C 54H
リアタイヤ/150/80B16 M/C 71H
【メーカー希望小売価格】(消費税込/2014年11月現在)
[モノトーン] 142万円
[ハードキャンディーカスタム] 144万2000円