現代に蘇った70'sチョッパー セブンティーツー
さまざまなイメージを持つハーレーダビッドソン。そのなかでも特に象徴的なカスタムスタイルがチョッパーと呼ばれるものです。チョッパーとは文字どおりチョップする(削り落とす)が語源で、その昔、盗んだバイクがオーナーにバレないよう無駄を削ぎ落としていったことが由来という説も。このセブンティーツーは、そんなカスタムシーン最盛期と言われる1970年代のアメリカに見られたチョッパースタイルをそのまま投影したモデルなのです。このセブンティーツーの名の由来は、ハーレーダビッドソン曰く「イーストロサンゼルスの伝説的なクルージングルート“ルート72”への敬意から」とのこと。ルート66ならよく知っているんですが、こんな道があったとは初めて知りました。いずれにしても、やはり背景にあるのは1970年代のアメリカ。この時代、かの国はベトナム戦争の真っ最中で、1969年のアポロ11号の月面着陸を機に宇宙開発が加速化、そしてスティーブ・ジョブズも感化されたというヒッピー文化が若者のあいだに流行するなど、国そのものが混沌としていたのです。そしてこのときに生まれたのが、モーターサイクルムービーの金字塔『イージー・ライダー』でした。
実は低予算のB級ムービー的な扱いだった『イージー・ライダー』ですが、公開後、何ものにも縛られない自由に生きるキャプテンアメリカとビリーの姿に胸を打たれた当時の若者は、この作品を“自由の象徴”と崇め、憧れの対象として昇華していったのです。1970年代のカスタムシーンに大きな影響を与えたこのキャプテンアメリカ号は、極めてオーソドックスなチョッパースタイル。セブンティーツーにこのキャプテンアメリカ号の魂が宿っている……と言っても過言ではないでしょう。
いたるところに1970年代の薫りが……
パッとこのスタイルを見たとき、普段街中で見かけるオートバイとはかなり違う、異質なフォルムが印象に残るかと思います。ハーレーダビッドソンのなかでも軽快な走りを特徴とするスポーツスターをベースとしながら、スタイル重視に走ったとも言えるセブンティーツー。そのイメージを決定づけているのは、うずたかく持ち上げられたハンドルバーと長いフロントフォーク、そして大きなフロントホイールです。“細く、長く”のシルエットとされるセブンティーツー。ハンドル形状はそのモデルのライディングを左右する重要な部分なのですが、ハーレーカスタムの伝統とも言えるエイプハンガー(猿が木にぶら下がっているようなスタイルになることから)を取り入れ、キャプテンアメリカ号らしいフォルムにまとめています。
現在、屈指の人気を誇るXL1200X フォーティーエイトと同じファクトリーカスタムモデルに位置づけられるセブンティーツーは、「スポーツスターをこんな風にチョッパーライクにしたい」というユーザーのイメージどおりに仕上げた一台です。それでは次ページでは、セブンティーツーのディテールと試乗の感想をまとめていきます。