これほどか!と思わされる直進番長
ブレイクアウトに乗ったときも「これは……」と唸らされるほどタイトなポジションが印象的でしたが、このリミテッドも負けず劣らずのポジションを強いてきます。はい、“強いてきます”という表現がかなり適切だと自負するほど、バイク歴の浅い人にはちょっとオススメしづらい乗り味のモデルです。走行カットをお見せできれば一目瞭然なのですが、足を前に突き出し、遠くにあるハンドルバーにしがみつくような格好から、真横から見たライディングスタイルは“くの字”を描いているかのよう。これぞまさしくドラッグレーサー! リミテッドが目指したストリートドラッガーそのものではあります。街中を走っている姿を通りすがりの人が見れば、「攻めてるねぇ」とつぶやいてしまうような攻撃的なフォームです。フルカウル系スーパースポーツのように体を丸めて乗るのとはまた違ったスタイルと言えるでしょう。
ただ、「リミテッドでロングツーリングをしてみないか」と言われれば、アラフォーの僕としてはお断りせざるを得ません。実際にそれだけの時間に乗ったわけではありませんが、一時間も同じスタイルで走り続ければ、ハンドルを掴む手は悲鳴をあげ、ステップに向けて投げ出した足も疲労を訴えることでしょう。
普段イスに座るとき、足は真下に降ろしますよね。足を投げ出すこともできますが、カカトを地面に着けず、土踏まずでその先の棒をずっと踏んでいるような状態だと、ものの数分でギブアップしてしまいます。しかも体を“くの字”に曲げ、パワフルなツインカム96エンジンが生み出す走行風を体に浴びながら、というプラス要素まで付いてくるのです。「これで長旅に出る」と言う人がいたら、アメリカ・ハーレーダビッドソンカンパニーは「……世界には物好きがいるんだな」と苦笑いするのではないでしょうか。
ストリートボブ リミテッドは付き合い方が求められる一台
乗り心地が相当にタイトなリミテッドですが、名前にあるとおり、そもそもはストリートシーンを想定したレーサー風モデルとして開発されたわけで、このモデルのオーナーとして名乗りを上げる方に求められるのは、付き合い方をはっきりさせることにほかなりません。ダイナファミリーというカテゴリーに対するアメリカと日本の捉え方は異なっています。その大柄なボディと大排気量が魅力のビッグツインモデルであることからツーリングバイクのひとつとして見られがちですが、アメリカではストリートやワインディングを駆け抜けるスポーツバイクとして受け止められています。なので、どちらかと言えばスポーツスターのような乗り方、楽しみ方をする人にちょうどいいモデルなのかもしれません。個人的には、「レーサースタイルを目指しているのであれば、フロントブレーキはダブルディスクにすべきだろう」と思うところですが、きっと大人の事情があるのでしょう(笑)。
ざっと読んでみると「全然褒めてない」と思われるでしょうが、付き合い方があやふやなままスタイルだけで選んでしまうと、手痛くやられてしまうモデルだと言いたいわけです。現代のハーレーダビッドソンに対してそれなりの見識があり、スポーツスターおよびツインカムモデルそれぞれのフィーリングが大体分かったうえで「あえてこれに乗るのもアリだな」という趣向の上級者向けモデルと言い切ってもいいでしょう。
劇的に乗りやすくなったローライダーとは対極に位置する同期モデル、リミテッド。ここまで書き連ねた記事を読んだうえで「それでもオーナーになる」という決意の持ち主が現れるのを待ち焦がれているのだと思います。
[HARLEY-DAVIDSON FXDBB SPECIFICATIONS]
全長/2,395mm
全幅/895mm
全高/1,130mm
ホイールベース/1,630mm
加重時シート高/670mm
車両重量/304kg
エンジン型式/Air-cooled, Twin Cam 96
排気量/1,584cc
フュエルタンク容量/17.8L
フロントタイヤ/100/90 B19 M/C 57H
リアタイヤ/160/70 B17 M/C 73V
【メーカー希望小売価格】(消費税込/2014年10月現在)
[ミステリアスレッドサングロ フレイムス / デラックス] 189万円