日本を狭く感じさせてしまう極上のクルーザーへ
エンジンは排気量1689ccというハイパワーを誇るツインカム103エンジン。リッターバイク(排気量1000ccのモデル)というだけでも十分大排気量モデルであることを思えば、この数値が意味するスケール感はさすがアメリカと言ったところでしょうか。これまで紹介したソフテイルやダイナ、スポーツスターのエンジンと比べても、このパワーは桁違い。ストップ&ゴーが多い都心を走るなんてまどろっこしいことができないビッグバイクであることがお分かりいただけたでしょうか。そのビッグエンジンを支えるのは、オートバイの骨格である専用設計のフレームです。大地を踏み締めるホイール&タイヤとフレームをつなぐのが前後サスペンションで、さらにオートバイの挙動を操作するのがハンドルという基本構造が成り立つことを考えれば、写真では見えにくいフレームが担っている役割の大きさたるや!
このフレームが、先のPROJECT RUSHMOREによって基本設計が見直され、以前のものよりも大幅に剛性アップをはたしたのです。フレーム剛性がアップするということは、オートバイを支える骨組みが頑強になるわけですから、これまでよりも少ない力でコントロールすることが可能になります。そう、このフレーム開発の基本には、どんな人でも操れるようにという今までのカンパニーにはなかった考えが含まれているのです。
2000年前半、日本のモーターサイクルシーンではハーレーダビッドソンがかつてないほど販売実績を伸ばしていました。輸入オートバイというカテゴリーでハーレーがシェア率50%を超えるなど当たり前だった時代で、現在のハーレーダビッドソンの普及率の軸はここでできあがったのです。PROJECT RUSHMOREに日本人オーナーの声がしっかりとフィードバックされたのは、アジア圏での販売展開を行なっていくうえで、こうした過去の実績を鑑みた結果と言えます。逆説的に言えば、“日本ほどハーレーダビッドソンが普及しているアジア圏の国は他にないから”ということです。
ロードグライドの乗り心地は及第点 後はデザインに対する好みか
ツーリングファミリーの本質を知ろうと思うなら、実際にロングツーリングへとかり出してみる他ありません。しかしながらクローズドコース内におけるメディア発表会で短い距離を試乗しただけですので、あくまでさわりのインプレッションとしてお読みいただければ幸いです。まずはそのシャークノーズフェアリング。カウルそのもののサイズが以前のものよりスリムになったとのことですが、初めて見る人からしたら十分ビッグサイズに思えることでしょう。そのフェアリング内にはカラータッチディスプレイが内蔵され、ここを操作してラジオや音楽を楽しむことができます。驚くべきは、グローブをしながらでもタッチパネル操作が可能なこと。また、グリップ横にあるスイッチボックスにもディスプレイ操作用のスティックがあるので、走行中でも操作可能というスグレもの。iPhoneなどスマートフォンとの連動もできます。ただ、残念なのはナビ機能が搭載されていないこと。せっかくこんなに素晴らしいディスプレイがあるのに……前年からの課題を残してしまっています。
そして新設計とされるハンドルバーは、直角に垂れ下がった鋭角なスタイルが特徴的です。実際に走り出してそのハンドリングを確かめてみると、もしかしたらここは体格差が出てしまうんじゃないか?と思うもの。というのも、ハンドルの構造上、しっかりとコントロールするには上から鷲づかみするような握り方をせねばなりません。しかし体型が小さな方だと、どうしても水平気味に握らざるを得ない。どうしたRUSHMORE?と思ってしまうポイントですね。
一方で、以前よりもグリップが細くなり握りやすくなったのは好印象。これは間違いなくPROJECT RUSHMOREの恩恵と言えるでしょう。
ライダーの体をおおらかに包み込んでくれるワイドなシート、ツーリング時の心強い味方となるサドルケース、そのケースを含んだスタイリングを意識したバガースタイルのリアエンドと、見どころ満載のストリートグライド!