規格外のチョッパーモデル FXDWG ワイドグライド(2ページ目)

ダイナの基本概念にとらわれない
反逆児モデルと言えるだろう

私は4年ぶりの試乗だったのですが、相変わらずのじゃじゃ馬だなぁ、というのが感想です。まずポジションですが、日本人には優しくありません。かなりワイドなハンドルバーに座面の大きいシート、フォワードコントロールというステップ位置と、身長174cmの私だと、ハタから見ればちょっと無理して乗っているように思われることでしょう。
ハンドルバーがワイドなのは、前方に突き出したフロント部分のコントロールを高めるためでしょう。シートもワイドなので座りやすいのですが、やはりネックはステップ位置。正直なところ、平均的な日本人男性でもちょっと遠い位置にあります。180cmベースのアメリカ人ならヒザが曲がる余裕があると思いますが、私は足が伸びきった状態でした。
実際に走り出すと、当然走行風で体は後ろに流れていくので、ステップ位置はますます遠くなります。なんとかしようとハンドルにしがみついて体の位置を修正するのですが、そもそも“ハンドルにしがみつく”というのはバイクをコントロールするうえで好ましくありません。また、足のポジションという点で言えば、右のステップ位置に足を置こうとすると、エンジンから突き出したエアクリーナーがちょうどヒザに当たり、ステップを踏みにくくしています。バイクを運転するうえであまりこうしたことが気になるというのはちょっとよろしくありませんが、私たち日本人の考え方にはない発想から生み出されているバイクなんだと言う他ないのです。ワイドグライドは、ある程度体躯に恵まれたオーナーを求めるモデルと言えるでしょう。
180mmという太いリアタイヤ、長いホイールベース、低く構えたロー&ロングのフォルムという組み合わせが高い直進安定性を生み出しており、排気量1,584ccというパワフルなツインカム96エンジンと噛み合うことで、ハーレーダビッドソンらしい重量感のある走りを味わわせてくれます。一方で、決してコントローラブルとは言えない構造でもあることから、ストップ&ゴーやコーナーが多い日本の道路を走るうえでは、一般的なバイク以上に気を使いながら乗ることが求められるでしょう。
このインプレッションをトータルで見れば、「全然褒めていない」と思われる方もいるでしょう。「そこまで言われるワイドグライドは、乗るべきじゃないの？」とも。もちろん、決してそんなことはありません。ワイドグライドの魅力は、ワイドグライドを所有するという事実に他なりません。本モデルが日本人に不向きなのは前述したとおりですが、当然これを所有するとなると、体躯に恵まれていない人にはかなりの困難を強いてきます。それでも、ハーレーダビッドソンらしいファクトリーチョッパーカスタムの最高峰モデルであるワイドグライドに乗るということ自体が、“ハーレーダビッドソンとともに生きる”という覚悟の表れであるとも思うのです。
スタンダードな日本人の感覚で見れば、理解しがたいモデルと言えるかもしれません。それはアメリカの象徴とも言われるハーレーダビッドソン モーターカンパニー社の哲学が詰め込まれた一台であるからで、生まれた国が違うため、どこまでいっても本質を理解するのは難しいでしょう。それでも、ハーレーダビッドソンに魅せられたなら、ワイドグライドに魅せられたなら、相棒として迎え入れるバイクライフも一興ではないでしょうか。

なぜか分からないけど、惹きつけられる“何か”を秘めている。ワイドグライドは、そんなバイクです。

［HARLEY-DAVIDSON FXDWG SPECIFICATIONS］
全長／2,425mm
全幅／920mm
全高／1,160mm
ホイールベース／1,730mm
加重時シート高／680mm
車両重量／309kg
エンジン型式／Air-cooled, Twin Cam 96
排気量／1,584cc
フュエルタンク容量／17.8L
フロントタイヤ／80/90-21 M/C 54H
リアタイヤ／180/60B17 M/C 75V
メーカー希望小売価格（消費税込）／［モノトーン］ 200万円　［フレイムス］ 206万円
（2014年8月現在）