いくつになっても乗り続けられる快適さ
ベストセラーモデルであるがゆえか、試乗する際は新型モデルを優先していたこともあり、今回ほどしっかりとデラックスに乗ったことがありませんでした。もっともスタンダードなソフテイルモデル、もう1台(FXSB ブレイクアウト)とともに東京~房総半島の突端まで走ってきたんですが……これが感動するほどに乗りやすい! シートポジション、ハンドル位置、ステップ位置と、身長174cmの僕にちょうど良いサイズ感。バイクのライディングポジションというと、前屈みに構えるイメージが強いかと思いますが、ソフテイルをはじめ代表的なハーレーダビッドソンのモデルはおしなべて背筋良く乗れるポジションとされています(Vロッドファミリーや一部モデルは除く)。これはオフロードバイクと構造が酷似するもので(実はハーレーは“ビッグオフローダー”とも呼ばれているのです)、ライダーの体を疲れさせないベストなポジションでもあります。そしてこのデラックスですが、全モデルラインナップ中でもっともスタンダードということもあり、ポジションが実に素直。この日、300キロ近く走ったにもかかわらず、デラックスに乗っていて「疲れた」と思うことは一度もありませんでした。
このモデル、ハーレーダビッドソン正規ディーラー店それぞれで聞くと、「女性オーナーに人気が高いモデル」とのこと。女性がもっとも気にする足着き(停車時の安定性)が良いのか……と思ってチェックするも、他のローダウン系モデルと比べて特に良いというわけではありませんでした。ただ、おそらくポジションが素直で、足がそのまま真下に降りてくれるからきちんと体重を支えてくれ、それが安心感につながっているのだと思います。大柄なアメリカ人向けに作られたバイクに小柄な女性が乗るというのは、カンタンなことではありません。しかしそんな女性層から支持されるデラックスの本質がここだとすれば、モーターサイクルとして優れたモデルであるという評価ともいえます。
個人的にも、今回のインプレッションは“目から鱗”でした。女性だと、もう少し足着きを良くするために細身のシートに換えるという選択肢があってもいいかな、と思いますが、僕にとっては“必要にして十分”。50歳、60歳と歳を重ねていっても、気持ち良く乗り続けられるバイクだと思いました。高速風が辛くなればウインドスクリーン(別売)を取り付けるという方法もありますし、積載力をアップさせるパーツやグッズは各メーカーからたくさん出ています。ウルトラといったフラッグシップモデルとはまた違った雰囲気が味わえるFLSTN ソフテイルデラックス。これからも末永く、ラインナップを代表するモデルとして残り続けていってほしいものです。