ハーレーが生んだ新しい伝統
カスタムモデルとして申し分ない一台
これまで「スポーツスター」「ソフテイル」「ツーリング」と、ハーレーダビッドソンのラインナップにおける各ファミリーの代表的モデルを紹介してきました。今回登場するFXDB ストリートボブは「ダイナ」と呼ばれるファミリーに属するモデルで、まずはこのダイナファミリーの特性からご紹介していきましょう。ハーレーダビッドソンの創業は今から111年前の1903年、最初に手がけたのは現代でいうところの電動機付き自転車で、“ファミリー”という区分はごく最近までありませんでした。それまで現在のソフテイルファミリーにあるFL系モデルを中心に販売を展開していましたが、1950年代に入ったところでスポーツスターの始祖であるKモデルが登場。以降、FL系大型バイクとXL系スポーツバイクの2本柱でハーレーダビッドソンのモデルラインナップは成立していきました。
1960年代に入り、時代が大きく動きます。特にアメリカにおいては、東西冷戦を背景とするベトナム戦争や宇宙開発事業、ヒッピー文化などが生まれたときでした。
モーターサイクルの世界においても、1969年に封切りされた映画『イージーライダー』の登場など、時代が生んだ大きなカルチャーのうねりに巻き込まれていった印象です。そうして飛び込んだ1970年代、『イージーライダー』やその他のカルチャーによって触発されたモーターサイクル カスタムシーンの活性化を受け、ハーレーダビッドソンは新しい提案を試みます。
「FL系のビッグツインに、XLのスポーツ性能を備えた新しいカテゴリーのバイクを」。発案者はH-D社の車両デザイン部門に所属していたウィリアム・G・ダビッドソン、通称“ウィリーG”。創業者であるダビッドソン一族の末裔にして、現在世界のモーターサイクルシーンにおける重鎮のひとりです。その彼が生み出したのが、FLモデルにXLスポーツスターの性能を組み合わせたFX スーパーグライド。これが、現在のダイナファミリーの祖先の誕生だったのです。
その特徴は、ビッグツインをベースとしながら前後サスペンションがスポーティなものになっていること。ソフテイルのソフテイルフレームと違い、後ろ側に2本のリアショックが備わっているのがポイントでしょう。デビュー当初はその斬新さから、あまり大衆には受け入れられなかったと聞きます。
しかし時代が進むにつれてそのスタイルは浸透していき、不滅の名車と呼ばれるFXS ローライダーの登場とともに人気に火がつき、現在ダイナファミリーとしてカテゴリーを有するまでになりました。すでに紹介しているXL1200X フォーティーエイトやFXS ブレイクアウトといった、メーカーによるカスタムモデル『ファクトリーカスタムモデル』が主流となっていますが、1970年代におけるダイナ系モデルはまさにこのファクトリーカスタムモデル。つまり、ウィリーGは時代を先取りしていたというわけです。
そんな斬新なアイディアから生まれたダイナファミリーの代表的モデルがこれ、FXDBストリートボブ。今回ここに出てきたのは、2014東京&大阪モーターサイクルショーのハーレーダビッドソンジャパン(以下HDJ)のブースに展示されていたHDJオリジナルのカスタムFXDB。ハードキャンディーカスタムと呼ばれる紫色のフレーク入りスペシャルペイントモデルをベースに、“よりチョッパーライクに”をコンセプトにH-D純正カスタムパーツでまとめた一台。ノーマルと見比べてもその差は歴然。このまま販売しても売れるんじゃないか?と思えるほどのまとまりの良さです。
ベースモデルであるストリートボブは、ダイナファミリーでもお求めやすい価格であるうえ、今流行りのダークカスタムに適したカラーリングとチョッパーライクなフォルムが大きな支持を得ています。実際に乗ってみても、走りそのものはビッグツインならではのパワフルさを発揮しつつ、コーナリングにおいても軽快な挙動でライダーをしっかりサポートしてくれるなど、スポーツバイクとしての側面も有しているスグレもの。
ハーレーにおけるカスタムとは、“オーナーのためだけの特別な一台を目指すこと”を意味しており、このストリートボブは素材としては申し分ない一台だと僕個人も推奨するモデルです。次の試乗インプレッションも含め、購入時の参考としていただければ幸いです。