ハッと目を引く色使いと、心温まるデザインが融合された、北欧クラフト。
数年前のとある夏の日に、スウェーデンを訪れたことがあります。
首都・ストックホルムももちろん魅力的な街でしたが、私の心により強く残ったのは、
のんびりとしたなんでもない田舎町の風景。
森があって、池があって、牧場があって、その合間にぽつんぽつんと三角屋根の小さな家が建つ、
童話のような世界でした。
スウェーデンの中ではやや南、ストックホルムからは列車で3時間半の場所にあるダーラナ地方は、
シリアン湖という大きな湖を蒼い山々が囲み、自然に溢れた風光明媚な地域です。
小さな村が点在し、民族の伝統を守って穏やかに暮らす人々。
スウェーデン人にとって「心のふるさと」と呼ばれる美しい地域でもあるそうです。
スウェーデンでは、モダンな北欧デザインと共に、昔ながらの手工芸品にも高い評価があります。
今回は、伝統工芸も盛んなダーラナ地方のひとつの町である、レクサンド市を中心としたハンドクラフトを紹介する
イベントについてのレポートです。
清々しい空気の漂う、森のような会場
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会場はスウェーデン大使館。ゆったりと展示されています。
開催場所はスウェーデン大使館。「大使館」というと、ちょっと躊躇してしまいそうですが、
スウェーデン大使館はとてもオープンな場所で、年間を通して様々なイベントを開催しています。
一般の来場者ももちろんOK。
母国を懐かしがって訪れる、スウェーデン人に出会えることもあります。
お国柄を伺えるような、オープンマイドでほのぼのと温かい場所なのです。
ダーラナ地方の人々は、古くからの伝統や文化を大切に思っており、
昔のままの素朴な町並みが保存されています。また、今でも
お祭りやお祝いには、昔ながらの民族衣装を着て祝う姿を見ることができるそうです。
特に夏至祭は有名で、国内最大のマイストング(メイポールのこと。白樺などの木に様々な葉や花、リボン飾りなどを巻きつけた柱で、
ヨーロッパではメーデーなどのお祭りに使われる。)を見るために、たくさんの観光客が訪れるとか。
北海道当別町と姉妹都市20周年の記念イベント
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笑顔がステキなカーリンさん。
今回のイベントは、財団法人スウェーデン交流センターが主催。センターのある北海道・当別町と、スウェーデンのレクサンド市は姉妹都市交流をしており、
今年で20周年を迎えました。その記念として、レクサンド市周辺の
様々な手工芸品を一堂に集めて紹介する展示会を開催することになったのです。
「ダーラナ地方のハンドクラフトは、素朴で温かく、気取りのないデザインが魅力です。
昔のままのスタイルを守り、自分たちの伝統に誇りを持っているのです。
そして緑と湖に囲まれた美しい風景は、スウェーデンの人々に心から愛されています。
かつて私もこの地方を訪れましたが、何もせずにただのんびりと過すことが楽しかったんです。
本当の豊かさを知ったような気がしました。」
とスウェーデン交流センターの鎌田さん。
私が訪れたときには、「ダーラナ地方とレクサンド市の手工
芸と文化」というレクチャーが開催されていました。
講師はこの日のために来日したカーリン・カーンルンドさん。伝統的な民族衣装をまとっています。
細かな花柄模様の施されたスカーフがかわいい!
頭に被る頭巾は、既婚者は白と決まっているそうです。
カーリンさんは編み物をスペシャリティーにした企業、「Uppstickaren」を創設
し、スウェーデン各地の工芸学校で講師を務めています。
スウェーデンのシンボル・ダーラヘストや代表的な民芸品。
スウェーデンでもっとも有名なお土産といえば、このダーラヘスト。
木でできた馬の人形です。今でも手作業でひとつひとつ彫られ、彩色されています。
スウェーデンでは冬の間、部屋を温めるための薪を集めるのに馬が欠かせなかったことから、動物の中でも
とても大切にされていました。その馬たちは、夏の間は子ども達と一緒に遊んで過します。
生活の中に一番溶け込んでいる、身近な動物が馬でした。
冬の夜、お父さんが暖炉の前で掘った馬は、春になると子ども達へのおもちゃとして、
プレゼントされたのだそうです。馬に描かれた模様は、教会の壁画などが参考にされ、
各村によって少しずつデザインに違いがあります。
上左の写真は夏至祭に使われるマイストングと、
シリアン湖で毎年開催されるボートレースのミニチュアです。
このボートはヴァイキングの船型を受け継ぐ手作りのもの。
レクサンドに住む子ども達はみんな、学校の授業でもこの船を漕ぐ体験をするそうです。
次ページでは、各手工芸品をさらにクローズアップしてご紹介します。