4ドアクーぺの次は“古くて新しい”特別仕立てへ
日本では10月に発表され、3.5リッターのCLS350(970万円)、4.7リッターターボのCLS550 4マチック(1240万円)、ハイパフォーマンスモデルとなる5.5リッターターボのCLS63AMG(1680万円)をラインナップ
CLSステーションワゴンやCLSスポーツハッチバックって呼んでも、別に良かったんじゃないの? って聞かれれば、にわかに答に窮してしまう。とにかく、シューティングブレークと呼んでもらった方が生活臭もなく、名前の響きも格好いいことは確か。
もちろん、これで狩りにイケ! というわけじゃ、もうない。感覚的には(単なる荷物運搬用ではなく)狩りに向かうにふさわしいようなスポーティモデルをベースに(つまりはセダンベースではなくて)、積載性を確保したスペシャルなカタチ、というコンセプトである。
“狩り”といえば王侯貴族たちの趣味というイメージがある。その昔、彼らの我が儘な要望=狩り専用のスポーツカーが欲しい! 、に応えるスペシャルモデルがシューティングブレークだったわけだから、その高級かつ上流、特別仕立てといったイメージを、プレミアムブランドが今になって活用しはじめた、ということもできるだろう。
過去にはアストンマーティンやジャガー、ポルシェ、フェラーリといった高級クーペベースのカスタムメイドなシューティングブレークもあったし、最新モデルのなかでもフェラーリFFなどは、このカテゴリーのうちに数えてもいい。
08年と10年という、モーターショーにおける2回のコンセプトカー展示をもって、メルセデスはシューティングブレークという“古くて新しい”カタチに対するマーケットの反応を探ってきた。初代CLSクラスで“4ドアクーペ”というデザインアイデアを掘りおこしたメルセデスが、二匹目のドジョウを狙ったというわけだ。
そこへ、メルセデスのデザイナー陣から、第2世代CLSクーペサルーンをベースに、ショルダーラインから上のみを変更するだけで、つまりは必要最小限の投資で、こんなにデザインコンシャス&エモーショナルなスペシャルモデル(=シューティングブレーク)ができますよ、という提案があがってきた。投資面もふくめて、その魅力的なプランを見たボードメンバーたちは、すぐさまゴーサインを出したらしい。
中身は変わらず、スタイルは色っぽく変身
実際、フロントセクションは当然のこととして、それ以外の部分、前後ドアパネルやテールランプ、ハッチドアのガーニッシュまで、ショルダーラインから下は基本、CLSサルーンとまったく同じ。違うのはAピラー(角度)からエンドピラーまでのルーフラインのみ、というわけで、全高を別にしてサイズはまったく同一である。メカニズム的にみても、ほぼ同じだ。積載時のパフォーマンスを考慮して、リアサスペンションシステムをEクラスワゴンからもらったエアサスとしたことが目につく程度だ。
エンジンラインナップ的にも、ガソリンの350+7ATと、550+7AT、そして最強の63AMG+7MCT、という、すでにお馴染みのパワートレインが並んでいる。ただし、550の日本仕様は4マチックのみだ。CLSサルーンとは違って、5人乗りでリアシートは分割可倒式、ヘッドルームも積載量もスペシャリティカーとしては十二分、である。
太陽光のもとで実物をじっくりと眺めてみた印象はというと、サルーンよりもずっとエロチックな雰囲気だ。
初代CLSクラスも女性的で優しいラインが特徴だったけれども、2世代目になってからは一転、どちらかというと男性的な力強さを強調するワイルドなスタイリングとなった。初代のエレガントさが好きだという人ほど、2世代目を嫌う傾向にあった。
その点、シューティングブレークは、色っぽい。
伸びやかに、そして薄く延長されたルーフと丸いオシリによって、後ろ足まわりのあの筋骨豊かな逞しさがある程度和らげられている。男性味が薄れ、全体的にとても女性的なグラマラスさをみせるスタイリングに変貌した。関わったデザイナーたちのあいだでも“こちらがイチオシ”、という声が多数を占めるらしい。