小規模宅地等の特例の改正はどのように
税制改正にて平成22年4月から「小規模宅地等の特例」の適用が厳しくなったことが、申告状況にどのくらい影響があるのかが注目されていました。小規模宅地等の特例の改正内容を振り返り、これにより相続税を納める人どれくらい増えたのか確認してみましょう。
「小規模宅地等の特例」の改正を事例で確認しよう
Aさんは、平成22年4月に母を亡くしました。法定相続人はAさんのみ。相続財産は、都内にある一戸建ての自宅と預金450万円でした。その他、葬式費用などの債務が150万円ありました。お母さんは1人暮らしで、Aさんは自分が所有するマンションに住んでしました。■Aさんの相続税はいくらになる?
土地は、路線価が1平米当たり30万円で敷地面積が250平米の相続税評価額7500万円。家屋の固定資産税評価額(=相続税評価)は200万円。
7500万円+200万円+450万円-150万円=8000万円(相続税の課税価格)
8000万円-6000万円(基礎控除額5000万円+1000万円×1人)=2000万円(課税遺産総額)
2000万円×15%(税率)-50万円(控除額)=250万円(相続税の金額)
⇒Aさんの相続税は250万円
■改正前のAさんの相続税額はいくら?
Aさんは税理士から、お母さんが3月までに亡くなっていた場合には、相続開始直前の利用状況が「お母さんの自宅だった」というだけで、下記のように小規模宅地等の特例(200平米まで50%減額)で3000万円(30万円×50%×200平米)の減額が受けられて、相続税の申告は必要だが納税額が発生しなかったことを聞きました。
8000万円-3000万円(小規模宅地等の減額)=5000万円 < 相続税の基礎控除6000万円
⇒(相続税申告必要だが)納税はなし
従って、Aさんは小規模宅地等の特例の改正により、相続税額が0円から250万円になりました。
小規模宅地等の特例の改正の趣旨
小規模宅地等の特例の改正前は、相続開始直前の利用状況が「亡くなった人の自宅だった」というだけで200平米まで50%減額が受けられていました。さらに、取得者が「同居していた」、又は「持ち家がない(亡くなった人が1人で暮らしていた場合)」などの「取得者」の要件を満たせば、減額が240平米まで80%減額にランクアップしていました。しかし改正により、これらの「相続開始直前の利用状況」と「取得者」の両方の要件を満たしていないと小規模宅地等の特例が全く受けられなくなってしまいました。
Aさんは、同居ではなく、持ち家でありますので取得者の要件を満たしていないため、全く適用を受けられなくなってしまったのです。
そもそも小規模宅地等の特例は、被相続人等の居住用又は事業用の土地について、他の財産と同じように課税されると居住や事業を継続できなくなってしまう恐れがあるため、高額な減額が認められているものです。従って、Aさんのように持家がある人は、居住を継続しないため適用する必要がないという趣旨です。
>>小規模宅地の特例の改正の影響で相続税を納める人はどのくらい増えた?