古民家/古民家探訪

米国人宣教師が建てた明治の近代洋風住宅(2ページ目)

東京都豊島区に保存・公開されている旧マッケーレブ邸。この建物はアメリカ人宣教師マッケーレブが明治40年に建てた家です。今回は、19世紀のアメリカ郊外の住宅の特色を色濃く残しているこの洋風住宅を紹介しましょう。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド


日本人による施工だが暖炉を設置

設計者がはっきりとしない旧マッケーレブ邸ですが、施工は日本人の棟梁・藤崎氏と、職人・伊藤氏によることがわかっています。小屋組みは当時の日本の住宅と同じようなつくりで、基礎には大谷石が使われています。
事務室

応接間や食堂に隣接した位置にあるのは教会の事務室。ここは外から直接出入りできるドアが設けられていました

この家には暖炉があります。1階、2階ともに主要な部屋は暖炉でつながっており、それぞれの部屋に焚き口が設けられています。当時の日本の住宅では暖炉は珍しかったと思われますが、住み手や設計者が外国人ということで、暖炉が設けられたのでしょう。家の中心に暖炉を設け、1階、2階を通じて広い空間を暖房できるようにしてあります。暖炉の下も基礎部分と同様、大谷石の切り石です。
暖炉

1階に設置された暖炉。右側の居間兼応接室の暖炉の焚き口は左側の食堂に比べて、装飾的です。ふたつの部屋は引き戸でつながっています

洋風建築らしい上げ下げ窓を多用

この建物は基本的に同じサイズの上げ下げ窓を用いることで、統一感を生み出しています。上げ下げ窓をひとつだけ設置している場所もありますが、写真の寝室のように複数の窓を並べて配置し、通風・採光を確保しているところが多く見られました。
寝室

2階には2つの寝室があります。来日当初からマッケーレブが使っていたベッドが展示されていました

床はどの部屋も板敷きで、厚さ2cm程度の杉板が使われています。恐らくカーペットを敷くなど、必要に応じて敷物を利用していたのでしょう。

旧マッケーレブ邸を見学して感じたのは、空間を上手につなぐことによって開放的な住まいがつくれるということです。この住宅のそれぞれの部屋はけっして広くありませんが、部屋と部屋を引き戸でつないだり、広縁を設けることで、実際の面積以上の広がりを感じられる設計になっています。これらの手法は現代の住宅でも取り入れることができるアイデアですね。

雑司が谷旧宣教師館
住所:東京都豊島区雑司が谷1-25-5
交通案内:都電荒川線 雑司ケ谷駅より徒歩約7分、東京メトロ有楽町線・東池袋駅より徒歩約10分、副都心線 雑司が谷駅より徒歩約10分
電話:03-3985-4081
開館時間:9時~16時30分
休館日:月曜日、第三日曜、国民の祝日の翌日、年末年始、臨時休館日
(2011年3月末まで補修工事のため休館)
入館料:無料
駐車場:なし
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます