もし人工肛門が必要と言われたら
時々便に混じる血を、痔だろうと判断して様子をみていた会社員のAさん(54歳 男性)。何度も続くので気になって近くの診療所を受診したところ、精密検査の結果、大腸がんの疑いありと言われました。すぐに、地元の病院を紹介され色々と検査を受けたところ、結果はやはり、大腸がん。治療には内視鏡での摘出ではなく、手術が必要と言われました。
手術を前にして、奥様にも付き添ってもらって医師からの説明を受けることになりました。「大腸がんの手術って、心配だなぁ。」とおそるおそる説明に臨んだAさんを待っていたのは、医師の予期せぬ一言でした。
「幸いにして、大腸以外の臓器には転移は見つかっていませんが、場所的に肛門に近いために、手術では人工肛門を造ることになります。」
「おなかを切る手術」とは思っていたものの、まさか、人工肛門の話がでるとは思っていなかったAさんは、あわてて医師に尋ねます。
「人工肛門を造らない方法はないのでしょうか?」
セカンドオピニオンを受けられてはいかがですか?
医師からの思わぬ一言に驚愕!一生に一回あるかないかの手術を納得して受けることは非常に重要です
Aさんの質問は想定内だったのか、医師は、穏やかに答えます。
「もちろん、大腸がんの手術すべてで人工肛門が必要になるわけではありません。しかし、Aさんの場合、いろいろな検査の結果、当院の外科としての判断は、人工肛門を造る手術がベストだと考えます。」
「はぁ。」と答えるAさん。
「しかし、Aさんのお気持ちもよくわかります。これは、大切なことですので、ご納得いただいて手術を受けて頂かなくてはなりません。幸い、Aさんの病状は、1日を争う状態ではありません。もし、よろしければ、当院での検査の結果などもすべてお渡しし、お手紙もお書きしますので、一度、セカンドオピニオンをとってみられてはいかがでしょうか?」
まさか、医師の方からそういう話がでるとは思っていなかったAさんですが、家族や親類とも相談して、地元からは少し離れた大学病院に紹介状を書いてもらって、セカンドオピニオンを受けることになりました。
大学病院では外科のB教授の外来を受診。丁寧に紹介状を読み、貸し出されたレントゲンやCT、大腸内視鏡などの検査結果を見た上で、B教授が口を開きました。
「Aさん。頂いた資料を拝見しましたが、私たちの病院でも、おそらく人工肛門を造る手術をおすすめすると思います。」
この結果、Aさんは納得して手術を受けることができました。手術後、病棟では看護師さんに人工肛門のケアを少しずつ教えてもらうとともに、患者さんの会も紹介してもらいました。
手術から1年あまり。再発もなく、社会復帰したAさん。人工肛門とのつきあい方も少しずつ上手になって、今度は患者会で主催する温泉旅行に行ってみようと思っています。
手術術式に迷った時は、セカンドオピニオンを
他の病院の医師は、今のあなたの病状について、どのような治療法を考えるのか? それを訪ねるのがセカンドオピニオンです
大腸がんの場合には、がんの部位や状態によっては、根治性を高めたり、蓄便の機能が温存できなかったりする場合など、どうしても人工肛門が必要になることがあります。
といはいえ、人工肛門という選択は、誰でも下しにくいものです。人工肛門を拒むあまり、適切な術式が選択できず、再発や術後の排便コントロールに悩むケースは、残念ながら存在します。
Aさんの場合、セカンドオピニオンを得ることで納得して手術を受けることができました。また、最近では様々なサポート体制も充実しているので社会復帰もスムースになってきています。
人工肛門に限らず、医師から進められた手術術式に迷った時には、是非、セカンドオピニオンを得られることをおすすめします。最近では、医師の方から進められることも多くなっていると思います。
遠慮せずに、「セカンドオピニオン」を受けてみたいのですが……とお尋ねになってみてください。きっと、てきぱきと準備してくださると思いますよ。
【参考リンク】
社団法人日本オストミー協会
セカンドオピニオンネットワーク