日本画/日本画関連情報

portrait(15)-及川聡子

箔と墨という古来からの画材を主に使っています。箔という光るものと墨という玄(くろ)によって、西洋的な陰影法ではなく、 光と影の世界観を描き出せないだろうかと苦心しています。

執筆者:松原 洋一

OIKAWA SATOKO

及川聡子
1970年 宮城県生まれ
1993年 東京造形大学卒業
1995年 東京学芸大学大学院卒業→その他の情報

好きなもの:犬、人形、裸足、ピアノ曲、カモミールティ、歌うこと、雪の日
嫌いなもの:換気扇の音、掃除機の音、手荷物、電話、抜けの悪い高音、中途半端な低音

All About で興味あるテーマ:シンプルライフ

◇制作の視点

モノを凝視するのが好きです。見つめることで、私は重い身体をするりと抜け出し、そのモノの中に入り込むことができる気がします。例えば、小石を凝視して、潜り込む。小さいはずの小石は、どこまでも広がって私を包んでしまう。小石と私の境界が曖昧になる、あの幸福な感覚。それを、そのまま画面に映したいと願っています。
◇作品について

冬の朝、畦に薄氷がはっていました。氷の溶けかけたところから、雑草がこちらを向いています。その様子を忠実に描きました。
この絵は2005年制作のものです。長く箔を多用していたのですが、この絵を境に、墨と胡粉、ほんの少しの岩絵具で描くという描き方に変わりました。現在はもっと墨の比重が大きくなり、色は淡くなってきています。この絵が岩絵具や箔の材質感から私を解き放すきっかけになったと思っています。

「現」 麻紙 墨 胡粉 岩絵具 181.8×227.3cm
◇いま思うこと

音は見えませんが、確かに震えとして空中にあることを、耳だけではなく身体が感じます。その震えのようなものが、絵から発せられる表現が出来たらいいのに、と思います。絵のある空間が、何か緊張したもので充満するような、そんな表現を叶えたいのです。

そのためにも、絵の中で答えを出してしまわないよう、絵が絵として完結してしまわないよう、最近心がけるようになりました。作品の完成度を深めることは重要ですが、それと同時に、絵それ自体ではなく、絵の周辺、絵と見る人との間、絵の展示された空間、それらの「場」を作りあげるのだ、という意識を持っていたいと思います。

どこまでも広がっていく可能性を秘めた微かな兆し。私は答えではなく、予兆のようなものを描きたいと思います。予感と緊張感と静かな興奮を見る人に感じてもらえる絵が理想です。「描かれた兆しが見る人の中で、自由にさまざまな可能性をもって広がっていくこと」それが私の願いです。



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